日本では国内物流の約4割を海運が担っている。ところが、船や港で働くいわゆる「海事人材」の確保には長年苦労してきた。昭和の時代まで船舶や港湾での現場仕事は肉体労働が多い職場だとされてきたからだ。
だが、長年にわたって課題であった船上での労働環境は、技術進歩や働き方改革の法改正によってホワイト化しつつある。しかも、船員は給料など処遇の面でも恵まれてきている。
そんななか、神戸では船や港に関わる仕事の魅力を「小中学生」に伝える取組みに力を入れている。
例えば、神戸市の市立小学校は162校(分校1を含む)あるが、そのほとんどの154校で、神戸港を遊覧船に乗って、港や船の役割を学ぶ校外学習が組まれていた(2025年度実績)。
他にも、小学校の社会の授業では神戸市独自の副教材を使って船や港での仕事を学ぶ機会もある。港湾を持たない地域では見られない取組みだ。
ただ、ここで大きな疑問がある。なぜ、対象が小学生で、就職を間近に控えた大学生や高校生ではないのだろうか。しかし、冷静に考えるとその理由は明らかなのだ。
船員組織の中核は「航海士」と「機関士」と呼ばれる専門職が占めている。航海士は船長をトップに船の運航計画をつくって安全に操縦する。機関士は船のエンジンの管理や整備が仕事だ。
ところが、海外まで行く外航船や国内でもフェリーのような大型船で仕事をするには、国家資格である「海技士」の3級以上の免許が必須で、これを取得するのはかなりハードルが高い。
大型船や外航船を動かす海技士(3級)を得る王道ルートは2つしかない。
1つは、中学を卒業する15歳のときに船乗りになる決断をして、全国に5校(富山、鳥羽、広島、大島、弓削)しかない商船高等専門学校(商船高専)に進む方法だ。これには中学卒業と同時に親元を離れた寮生活に入る覚悟が伴う。
もう1つは、普通高校などに進学し理系を選んで、かつての「東京商船大学」と「神戸商船大学」であった東京海洋大学海洋工学部や神戸大学海洋政策科学部といった国指定の船員育成系の大学で学ぶ方法しかない。



