外交専門家は異例の訪問に驚き、警告や停戦協議が狙いと推測
事前に公表されなかったことに加え、CIA長官が直接モスクワへ乗り込む例自体がまれであるため、外交政策を専門とする識者たちの間で驚きが広がった。
英国の駐ロシア国防武官を務めたジョン・フォアマンはBBCに対し、「米国は通常、よほどのことがない限り、これほど高位の当局者を予告なしに急きょモスクワへ送り込んだりしない」と語った。
米国の情報機関を束ねる国家情報長官室で、分析の取りまとめを担う副長官を務めたベス・サナーも、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に見方を示した。ラトクリフはロシア当局者へ「あなたたちが何をしようと考えているか我々は知っている。やめておいたほうがいい」と警告するためモスクワにいた可能性があるという。イランでの停戦をめぐる協議にロシアを引き込む狙いだった可能性にも言及している。
ラトクリフの前にロシアを訪れたCIA長官はウィリアム・バーンズで、2021年にプーチンへウクライナ侵攻を思いとどまるよう警告するため現地入りした。だがロシアは警告から数カ月後にウクライナへ侵攻しており、バーンズの警告は歯止めにならなかった。
米国はウクライナへ長距離攻撃の停止を要請、FTが最初に報じる
今回の訪問は、ロシアがウクライナへ仕掛けた戦争が4年を超えて続く時期に重なった。ウクライナは長距離ミサイルをロシア領内へ撃ち込む動きを強めている。英紙フィナンシャル・タイムズが最初に報じたところでは、米国はラトクリフ訪問中に限って長距離ミサイル攻撃を止めるようウクライナへ求めた。
プーチンがNATOの決意を試す可能性、米情報機関が指摘
WSJは8月6日、米情報機関による分析を報じた。プーチンが近く隣国へ何らかの侵入を仕掛け、「NATOの決意を試す」ことを狙う恐れがあるという。侵入の形態としては、サイバー攻撃から武装部隊の派遣まで幅広い可能性が想定されている。
NATOは、加盟国のいずれかが攻撃を受けた場合、他の全加盟国が防衛に加わることを義務づけている。ワシントンに拠点を置くシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)でシニアフェローを務めるヘザー・コンリーはWSJに見解を語った。ロシアが「常に」抱いてきた「目標」は「NATOの信頼性に挑戦し、米国を同盟国から引き離すこと」だという。
ロシアはイランにとって重要な同盟国でもあり、紛争が続く間もイランへ軍事装備を供給してきた。


