2026年4〜6月期はショートドラマ新作25%増、視聴時間は4%減
AIを使って作品を量産すれば事業は伸びるという見方がある。だが報告書には、その見方に都合の悪い数字も並んでいる。主要な課金型アプリを合わせると、2026年4〜6月期に新作投入は25%増えたが、視聴時間の合計は4%減った。四半期あたりの投入本数は、2025年1〜3月期の1659本から5145本へ増えている。
ReelShortの実写新作は平均417万回再生、AI作品は274万回
オウル&コーは、新作がここまで急増した要因の多くを、AIで生成した作品に求めている。ただしReelShortでは、2026年6月と7月に投入した実写新作が平均417万回再生されたのに対し、AI作品は274万回にとどまった。制作費を下げれば、供給は増やせる。作り出せないのは、需要のほうだ。
視聴者をすでに抱える企業が、縦型動画で優位に立つ
動画配信サービス各社は、課金型アプリとは異なる条件で縦型動画に踏み込んでいる。NBCユニバーサルが運営するピーコック(Peacock)は、系列チャンネルであるブラボー(Bravo)発のオリジナルショートドラマを、スマートフォンアプリ向けに制作した。テレビサ・ウニビシオン(TelevisaUnivision)が運営するスペイン語圏向け配信サービスViXは、開始から1年で縦型オリジナル作品145本を制作した。報告書は、配信各社が狙うのは1話ごとに課金させることではなく、視聴者にアプリを使い続けてもらい解約を減らすことだとみる。参入の速さでは、インドで動画配信を手がけるジオホットスター(JioHotstar)が上位に挙がる。
Character.aiは会話で引き止め、Life360は出資で視聴者を買う
利用者がAIキャラクターと会話するサービスを運営するCharacter.aiは、また別の道を試している。1話が終わった後も利用者が会話を続けられるキャラクターを軸に据え、縦型シリーズを組み立てる方法だ。
英国出身の料理人ジェイミー・オリバーは、家族間で位置情報を共有するアプリ、Life360から資金を得てコメディーを制作した。番組は、オリバーの事業がもともと運営するSNSアカウントなどで公開される。Life360が金を払って買っているのは、この番組があろうとなかろうとオリバーが抱えている視聴者に届くことだ。
ピーコックやViXのような配信サービス、Character.ai、Life360が出資する番組は、稼ぎ方が互いに違う。共通するのは、課金型アプリに欠けている強みを1つ持っていることだ。次の作品を売り込む前から、視聴者との関係がすでに出来上がっている。
メタは縦型動画で約10兆8800億円、ネットフリックスの総売上を超える
市場の最上位でも同じ強みが働いていることは、オウル&コーが示した数字から読み取れる。報告書はメタの2026年売上高を2530億ドル(約40兆4800億円)と見積もり、うち27%が縦型動画から生じるとする。筆者の計算では、縦型動画だけで約680億ドル(約10兆8800億円)になる。この680億ドルは、報告書が動画配信大手ネットフリックス(Netflix)の売上高全体と見積もる520億ドル(約8兆3200億円)を上回る。
縦型動画で成長を縛ってきたのは、制作費ではない。視聴者をどう獲得するかだった。
生成AIは供給を増やせるが、視聴する理由までは作れない
生成AIがあれば、もう1話を安く作れるし、タイトルをさらに1000本増やすこともできる。だが、供給がそれほど速く膨らむと、視聴者の注目を買い取ることはかえって難しくなる。
希少な資産は、以前と変わらない。作品を見たいと思わせる理由と、同じ視聴者に二度は金を払わずに済む配信先である。


