業績低迷に悩むヤフーは、同社が保有するアリババ株のスピンオフ(分離・独立)による売却を検討していた。ヤフーはアリババの15%の株を保有し、時価は320億ドル(約3.9兆円)におよぶ。この売却が首尾よく進めば同社は巨大な利益を得られるはずだった。
しかし、このスピンオフの難題となったのが、売却益に対する巨額な法人税の支払いだ。同社はアリババ株を無税で別会社に移管する計画だったが、米内国歳入庁(IRS)はヤフーの承認要請を拒否し、この取引が課税対象になるかの判断を示していない。
同社のコアビジネスの売却は、そんな状況下で浮上した。圧倒的認知度を誇るヤフーニュースやヤフーメール、さらにはソーシャルネットワークのTumblr等のサービスを売り渡すことは窮余の一策と言える。
シティのアナリスト、マーク・メイはこの動きについて「実行可能性があり、魅力的なオプションと言える」と述べた。
「売却が実行されれば、ヤフーの市場価値はEBITDA(金利・税・減価償却費計上前利益)の5~6倍に達すると推測され、評価額は34億ドルから41億ドル(約4200億円から5000億円)になる。これは現状の企業価値17億ドル(EBITDAの2.5倍で推測)を大きく上回り、興味を示す買い手は複数にのぼると見られる」
具体的にはどのような企業が買い手となるのか。サントラストのアナリスト、ボブ・ペックは「テクノロジー業界、コンテンツ業界の双方から戦略的な提案が上がるだろう」と述べ、次のような企業名を挙げた。
「コムキャスト、AT&T、ディレクTV、ベライゾン、ディズニー、CBS。これらの企業全てが関心を示しても不思議ではない」
プライベート・エクイティ・ファンドが交渉のテーブルにつくことも予想される。シルバーレイク・パートナーズは2009年、スカイプをeBayから19億ドルで買収し、その18ヶ月後に85億ドルで同社をマイクロソフトに売り渡した。ヤフーに関しても同様なスキームがとられることも予測される。
もう一つの有力候補としてWSJは、近年旺盛な買収意欲を見せるソフトバンクの名前を上げた。もしくはアリババが、ヤフーが保有する同社株の買い戻しを提案するといった動きも起こり得そうだ。
たとえ買収が実現されなかったとしても、ヤフーの株主らはここ数日の同社株の値上がりを歓迎している。ヤフー株は年初来で33%以上も下落している。