北米

2026.08.29 12:00

米国とカナダの貿易交渉が決裂、石油を武器にすれば双方が深く傷つく

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トランプが唱えるパイプライン復活、実際に進むのは別計画

ここで問題になるのが、カナダ産原油をさらに多く米国へ南下させるために現在動いている、数十億ドル(数千億円)規模のパイプライン計画である。ドナルド・トランプ大統領は、キーストーンXLを復活させたいと繰り返し示唆してきた。アルバータ州から米国へカナダ産原油を運ぶ計画として進められ、2021年に事業者が中止を決めたパイプラインである。交渉決裂に至る数日前にも、自身が使うSNSトゥルース・ソーシャルへ8月18日に投稿し、キーストーンXLは「墓場から呼び覚まされるかもしれない」と書いた。

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ただし、キーストーンXLそのものを復活させる構想は、数多くの理由から実現しない夢だ。実際に前へ進んでいるのは、プレーリー・コネクターと呼ばれる練り直し版である。この計画は、キーストーンXL用としてカナダ側にすでに敷設され保存されてきたパイプを一部活用し、米国側のパートナー企業と組む形を取る。

プレーリー・コネクターは、日量46万5000バレルの輸送契約を確保

プレーリー・コネクターは、石油会社などの荷主から相当量の輸送契約をすでに取り付けている。アルバータ州ハーディスティから米国との国境までを結ぶ計画で、想定する輸送能力は日量55万バレルである。運営主体であるサウス・バウは9社と20年間の確定輸送契約を結び、合計は日量46万5000バレルに達した。建設に着手するかどうかを決める最終投資判断は2027年半ばを目標としており、サウス・バウはそれに向けて許認可の確保を進めている。既存パイプラインを拡張する案や新たな輸送回廊も、米国市場へ向けた輸送能力を日量で数十万バレル押し上げる手立てとして議論されてきた。

関税と報復が続けば、越境インフラの前提は崩れる

米国とカナダによる貿易交渉が決裂したことで、プレーリー・コネクターをはじめとする計画は葬られるのか。危険は現実にあり、しかも広がりつつある。国境をまたぐエネルギーインフラに必要なものは、規制当局による許認可だけではない。相手国を信頼できるという政治面の土台と、事業として成り立つという商業面の確信も要る。関税、報復措置、そして8月21日夜にカナダ代表団が交渉の席を立った後に続いた公然の非難合戦は、政治面の信頼と商業面の確信をどちらも削り取っていく。

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