エヌビディアは3年あまりで、時価総額1兆ドル(約159兆円)から5.2兆ドル(約826兆8000億円)まで駆け上がった。決算は現在も圧倒的だが、爆発的な上昇局面は熱を冷ましつつある。株価はこの先どこへ向かうのか。2030年を見据えたウォール街の目標株価は、300ドルから1000ドルまで幅がある。予測市場は800ドルを指し示す。これらの目標株価が実現した場合の時価総額は、7兆ドル(約1113兆円)から24兆ドル(約3816兆円)に達する。どこまで現実的な水準なのか。
CUDAという開発基盤、他社には開放していない独自のソフトウェア一式、高速ネットワーク。この3点が築いたエヌビディアの参入障壁に、異論はない。それでも株価は、カスタムチップ、大規模クラウド事業者(ハイパースケーラー)による設備投資、輸出規制、競合、AI投資の投資対効果をめぐる懸念といった報道から自由ではいられない。エヌビディア株はこうした不透明感に何度も打ち勝ってきた。だが、直近の四半期を短距離走のように追う作業と、2030年という4年先を見通す作業とは、まったく次元が異なる。
編注:本稿の米国版記事は、エヌビディアの第1四半期(2026年2〜4月期)決算までの情報を基に、米国時間2026年8月25日に掲載している。エヌビディアは翌8月26日に第2四半期(2026年5〜7月期)決算を発表しているため、本稿は最新情報とは齟齬がある箇所がある。その点に留意いただきたい。
GPUからロボットまで広がる領域、12四半期続く高成長
エヌビディアにとって2030年の商機は、GPUの枠にとどまらない。同社が目指すのはAI経済を支える基盤そのものである。成長領域はGPU、CPU、ネットワーク、ソフトウェア、ストレージ、AI処理に特化した施設であるAIファクトリー、ロボティクス、自律システムにまたがる。
勢いは並外れている。エヌビディアは55%を超える増収を12四半期連続で記録してきた。2026年4月26日に終えた第1四半期の売上高は816億ドル(約12兆9744億円)で、前年同期比85%増、前四半期比20%増となった。前年同期比の伸びが加速したのは3四半期連続、前四半期を上回ったのは14四半期連続である。増収が途切れずに積み上がる事実は、AI基盤への旺盛な需要と、エヌビディアが築いた強固な参入障壁を映し出している。
エヌビディアは、AI分野の首位を守るための手も打っている。
ウォール街6社と組み、79兆円の資金を動員
ブラックロック、ブラックストーン、アポロ・グローバル・マネジメント、KKR、ゴールドマン・サックス、ブルックフィールドという大手金融6社と組み、5000億ドル(約79兆5000億円)超の資金を動員する。顧客がデータセンターを建設し、エヌビディア製GPUを購入するための資金である。
資金はこう流れる。まず金融6社が、最先端のAI研究機関や新興クラウド企業に対し、市場を通さずに直接融資するプライベートクレジットを供給する。借り手はその資金で、BlackwellやRubinといったエヌビディアの最新アーキテクチャを購入し、データセンターを建てる。データセンターは計算能力を生み出し、顧客はその能力に対価を払う。借り手はGPU実機と計算能力を担保に差し入れ、ウォール街へ利息を支払う。
この仕組みは、GPUの見方そのものを変えうる。急速に価値が目減りするIT機器として扱うのではなく、長期にわたって収益を生む資産として計算基盤を位置づけ直す試みだからだ。
エヌビディアは各融資の25%を保証する。貸し倒れが起きても4分の1は取り戻せるため、金融6社にとって融資の魅力は大きく高まる。
借り手が返済不能に陥れば、エヌビディア製ハードウェアは回収されうる。CUDAという共通の開発基盤があるおかげでエヌビディア製GPUは他社へ転用しやすく、回収したチップは別の顧客へ再配備できる。ウォール街はGPUを軸に据えたこれらの資産を証券化し、AI基盤の建設に投資したい層へ売ることもできる。
この資金供給策は論争を呼んだ。支持派は、巧妙な囲い込みだと評価する。批判派は、自ら用意した資金で自社チップを買わせる循環的な資金調達によって需要を人為的に作り出し、エヌビディアが身の丈を超えているのではないかと問う。
オハイオ州で16兆6950億円を保証、20年間の独占稼働
循環への懸念がとりわけ強く当てはまる案件がある。ソフトバンクグループ傘下のSBエナジーが、OpenAI向けにオハイオ州で開発するデータセンターだ。エヌビディアはこの施設に1050億ドル(約16兆6950億円)の保証を付け、さらにSBエナジーへ15億ドル(約2385億円)を出資した。あわせて、今後20年間はエヌビディアの計算基盤だけが動く場所として押さえている。
オハイオ州の施設は、最大8ギガワットの電力容量を備える。規模を実感するための目安を挙げると、データセンターが計算に使う電力1ギガワットは、米国の平均的な世帯約75万戸をまかなえる量に相当する。最初の800メガワットは2028年の稼働開始が見込まれている。
保証の規模は目をみはる。ただし1050億ドル(約16兆6950億円)という約束が結びついている先は施設という資産の価値であって、OpenAIの営業上の債務ではない。OpenAIが返済不能となった場合でも、エヌビディアが負うのは差額に限られる。施設にあらかじめ保証した最低評価額と、所有者が転売や再賃貸で実際に回収できた金額との差である。さらに補償条項があり、保証にもとづく支払いがエヌビディアに生じれば、OpenAIは同額を弁済しなければならない。



