強気論は囲い込みが続くと読み、弱気論はAI需要の減速を見る
強気論が拠って立つのは、エヌビディアが金融面と設計面での囲い込みを保ち、自社を中心とするエコシステム、つまり開発者や関連企業が集まる生態系を欠かせない存在にし続けられるかどうかである。
強気の筋書きを補強するのが、上場ハイパースケーラー以外への多角化、底堅いGPU貸出料金、計算資源の希少性、確かなフリーキャッシュフローの創出、そしてハードウェア寿命を延ばすCUDAソフトウェアだ。
中国はリスクではなく、上振れ要因に変わった
興味深いことに、中国は現在、リスクというより上振れ余地として位置づけられる。エヌビディアが業績見通しに中国を織り込まなくなったためだ。エヌビディアは中国の顧客に対し、Veraチップの販売について協議していると伝えられている。意味のある規模で販売が再開すれば、業績見通しの土台がそのまま押し上がる。
弱気論の中心にあるのは、AIの実需が減速する可能性と、CUDAによる囲い込みが構造的に崩れる可能性である。どちらもエヌビディアの成長率と財務体質を直撃する。
2030年の目標株価は、300ドルから1000ドル
BofAはエヌビディアの資金供給戦略を前向きに評価する。最先端のAI研究機関や、AI向けに特化した新興クラウド企業であるネオクラウド向けに、電力、用地、データセンター容量といった希少な物理的資源を押さえつつ、下振れ時の損失を限定できるからだ。
BofAはオハイオ保証の採算を評価し、株価は割安と判断
BofAは1050億ドル(約16兆6950億円)のOpenAI向け保証について、採算を次のように示す。エヌビディアが支える初期の4.25ギガワットは約150万個のGPUに相当し、ハードウェア1世代あたり1500億〜2000億ドル(約23兆8500億〜31兆8000億円)の売上を生む。売上に対するフリーキャッシュフローの比率を50%とすれば、手元に残るのは750億〜1000億ドル(約11兆9250億〜15兆9000億円)となり、1050億ドル(約16兆6950億円)の保証額にほぼ見合う。
BofAが事業ごとに価値を積み上げて合算する手法で評価したところ、エヌビディア株は暦で数えた2027年と2028年のEV/FCF(企業価値をフリーキャッシュフローで割った指標)で15〜18倍の水準にあった。顧客の資金調達リスクを織り込んだ上でも、BofAが妥当とみる22.5倍および36倍に対し、33〜50%の割安ということになる。
BofAが示す350ドルという目標株価は1年先を見た数字だが、より長期の予測もある。OpenAIとの関係が2030年までに6000億ドル(約95兆4000億円)の売上と3000億ドル(約47兆7000億円)のフリーキャッシュフローを生むという見通しで、12〜16ギガワットの計算容量を前提としている。
この長期予測に、現在の予想PSR(株価売上高倍率)13倍を当てはめると、2030年の時価総額は約8兆ドル(約1272兆円)、株価は330ドルとなる。過去12カ月の実績にもとづくPSR20倍なら、時価総額12兆ドル(約1908兆円)、株価500ドルだ。
強気派は2030年に、3180兆円の時価総額を想定
CoinCodexによるアルゴリズム分析にもとづく予測は、過去の値動き、変動サイクル、長期トレンドを評価した上で、2030年の目標株価を800ドルとしている。
I/Oファンド創業者でテクノロジーアナリストのベス・キンディグは、2030年までにエヌビディアの時価総額が20兆ドル(約3180兆円)という驚くべき水準に達すると見る。1株あたり約830ドルにあたる。20兆ドル(約3180兆円)が米国のGDPの約半分に相当する点は、押さえておかねばならない。キンディグの前提は、エヌビディアが単年でデータセンター売上高9300億ドル(約147兆8700億円)に到達し、PSR22倍で評価されることだ。
BCGプラチニオンでCEOを務めたフィル・パナロは、さらに強気だ。2030年までに株価1000ドル、年間売上高1兆ドル(約159兆円)を予測する。パナロは、AIが電気や水道のような公共インフラに近づきながら段階的に普及していき、データセンター、ロボティクス、自動運転にわたってエヌビディアに恩恵をもたらすとみている。
現実的な基本シナリオでは、株価は400ドルまで
現在の技術サイクルを数年先まで引き伸ばして考える行為には、計り知れないほど大きな変動リスクが伴う。
20兆ドル(約3180兆円)の時価総額を実現するには、エヌビディアが年間約1兆ドル(約159兆円)の売上を生みながら、PSR20倍を保ち続ける必要がある。超大型株は成熟するにつれて株価倍率が切り下がってきた。その歴史を無視した前提である。したがって800〜1000ドルという予測は、最良のシナリオとして受け止めるべきだ。
より現実的な基本シナリオが拠り所とするのは、0.54という魅力的な予想PEGレシオである。PEGレシオは株価収益率を利益成長率で割った指標で、1倍が適正水準の目安とされる。0.54という数値は、成長力に対して株価が安すぎることを意味する。エヌビディアが底堅い需要の上に成長要因を収益化していき、予想PEGレシオが適正水準の1倍まで戻ると仮定するなら、2030年の株価は最大400ドルとみる。
注:筆者は登録投資顧問ではない。読者はこの銘柄でも他の銘柄でも、投資する前に自ら十分な調査を行うべきである。本稿に基づいて下された投資判断について、筆者は責任を負わない。ここで述べた意見と分析だけに頼らず、投資判断を下す前に自ら調べることを勧める。


