採用活動は骨が折れる。プロセスは長期に及び、候補者が期待通りに活躍してくれないかもしれないという不安が常に頭をよぎる。一部の経営者が、採用を何としても避けようとするのも無理はない。しかし、そうした「回避」の姿勢は、採用を躊躇することだけに現れるのではない。反対の局面、つまり「解雇することを恐れている従業員」への対応にも現れるのだ。
もしチームから1年以上も退職者が出ていなければ、幸運だと思うだろう。ほとんどの経営者は、疑問の余地なくそれを「成功」と呼ぶはずだ。
だが、私はその見方に異を唱えたい。離職率の低さは、強固で生産性の高いチームが存在することの証明にはならない。それは単なる「偽陽性」、つまり管理画面上は素晴らしい数値に見えるものの、実際にとどまっている従業員の中に、引き留めるべきではない人材が含まれている状態にすぎない可能性があるからだ。
従業員定着率に関するデータは、意外に感じられるかもしれない。米国の自発的離職率はおよそ2%で落ち着いている(これは過去10年近くで最低水準に近い)。Employ Inc.の調査によると、初年度離職率は2025年にほぼ半減し、12.1%まで低下した。「大退職時代」は終わった。今は「グレート・ホールド」の時代だ。本来なら辞めていたはずの仕事に、人々は市場のリスクを恐れてとどまっている。
30年以上にわたり中堅・中小企業を立ち上げ、成長させてきた経験から学んだことがある。明確な意図を持って育まれた優れた企業文化を持つ組織において、高い定着率は健全だ。しかし、凡庸な文化しか持たない組織において、高い定着率は単に「凡庸さに対する寛容度が高いこと」を反映しているにすぎない。
目の前の業務に追われている経営者にとって、採用プロセスに頭を悩ませることは最も避けたい事態だ。そのため、すべての従業員を引き留め続けることが勝利のように思えるかもしれないが、放置された凡庸さは、組織をむしばむ「静かなる殺人者」となる。
従業員が留まる理由
この新たな「グレート・ホールド」の時代において、従業員が職場に留まるのは、不安を抱えているからだ。毎週のように人員削減のニュースを目にし、AIが仕事のあり方をリアルタイムで再形成していく様子を見て、自らも取って代わられるのではないかと恐れている。CFO Diveによると、2026年の最初の4カ月間における企業の人員削減のうち、約22%がAIをその要因に挙げている。また、米国心理学会(APA)の調査では、26歳から43歳の労働者の65%にとって、雇用の不安定さが現在、最大のストレス要因になっていることが分かった。
だからこそ、彼らはしがみつく。モチベーションを失っても会社に留まり続ける「ジョブ・ハガー(仕事にしがみつく人)」となるのだ。
このような市場では、低パフォーマーは辞めない。しかも、必ずしも目に見えて悪化するわけでもない。仕事を失わない程度にだけ努力を上げる。時間通りに出社し、最低限をこなし、それ以上は何も貢献しない。
しかし、離職率のレポートは、その「最低限」が収益に及ぼす複利的な損害を決して示してはくれない。
組織が支払う代償
優秀な「Aクラス」の従業員はすべてを見ている。惰性で仕事をする「コースター(惰性労働者)」や「ジョブ・ハガー」の存在を、そして経営者がそれを容認している事実を察知している。彼らの反応は通常、次の2つのいずれかだ。組織を去るか、あるいは留まりつつも密かに努力のレベルを下げるかだ。何のペナルティも受けない同僚のために、なぜ自分がカバーし続けなければならないのか、と考えるからだ。
どちらにせよ、あなたは失う。最も生産性の低い人を抱え続け、最も生産性の高い人を手放すことになる。
私自身、これを身をもって体験した。以前経営していた会社で、トップ営業担当者が辞めてしまったのだ。その理由を率直に分析したところ、2つの原因に行き着いた。彼は私が周囲の凡庸さを容認しているのを見ていたこと、そして私が彼のためにキャリアアップの道筋を意図的に構築していなかったことだ。
経営者が引き留めすぎる理由
なぜこれが起きるのか、私にはわかる。同じ立場にいたことのある事業主なら誰でもわかるはずだ。
従業員を解雇するのは容易ではない。従業員への忠誠心もあるだろう。また、人材を入れ替えることは、現状維持と同じくらいリスクがあるように思える。NFIB(全米独立事業者連盟)のデータによると、小規模企業の経営者の29%が埋められない空きポジションを抱えており、採用を試みている経営者の46%が、適格な応募者がほとんど、あるいは全くいないと回答している。さらにSHRM(社会的人材マネジメント協会)は、従業員の代替コストを年収の50%から200%と見積もっている。これらの数字を前にすると、未知の欠員を抱えるよりも、すでに実力の分かっているパフォーマンスの低い従業員を置いておく方が安全に思えてしまうのだ。
セールス専門家であるジャック・デイリーの言葉とされる、私が決して忘れることのできない名言がある。「マネージャーの人生において最も長い時間は、ある人物を去らせるべきだと分かった瞬間から、実際にそれを実行に移すまでの期間である」というものだ。
解雇がチームの士気を低下させるという懸念はもっともだが、私の経験では、全く逆のことが起こる。慢性的にパフォーマンスの低い従業員にようやく引導を渡したとき、優秀なメンバーたちは安堵の息を漏らす。最もよくある反応は、「なぜもっと早くそうしてくれなかったのですか?」というものだ。
従業員が単に「隠れている」だけか見極める方法
その従業員が成果を上げるために会社に留まっているのか、それとも単に辞めるのが怖くて留まっているのかをどうすれば見極められるだろうか。そのためには、説明責任(アカウンタビリティ)を果たす組織文化をシステム化することだ。その具体的な方法は以下の通りである。
1. すべての役割にスコアカードを設ける。 EOSやScaling Upのようなフレームワークを使い、社内の全員に明確なKPIを持たせる。これが試金石になる。エンゲージメントの高い人はスコアカードを歓迎し、隠れている人はそれを嫌う。成果が可視化されれば、誰が忠実に貢献していて、誰がただ居座っているだけなのかが明らかになる。
2. フィードバックはリアルタイムで行う。 パフォーマンスに関するフィードバックが、いまだに年1回の評価に頼っているなら、バックミラーを見ながらマネジメントしているようなものだ。低パフォーマンスは目にした瞬間に対処する。改善のための短い期間を設定し、進捗を毎週確認する。改善すれば投資を続ける。改善しなければ行動する。
3. 優秀な従業員を評価し、その道を切り拓く。 社内異動や昇進を計画的なプロセスにする。昇進に必要な要件を公表し、昇進を企業のバリュー(価値観)と成果に結びつけ、誰かが昇進した際にはその理由を説明する。優秀な「Aクラス」の従業員が「自分にキャリアアップの道はあるのだろうか」と悩むようなことがあってはならない。また、その道が、ただ在籍期間が長いだけの低パフォーマンスな従業員によって阻まれることがあってはならないのだ。
結論
高い定着率は健全なカルチャーのシグナルになり得る。だが同じくらい容易に、凡庸さが根を下ろしていることを意味する場合もある。優れた事業主は、隠れている人と真にエンゲージメントの高い人を見分けるために必要な構造とシステムを構築する。
そこで今週の宿題だ。組織図をたどり、すべての役割について1つの問いを立ててほしい。「この人にはスコアカードがあり、それを歓迎するだろうか」。答えがノーなら、あなたの定着率こそが最大の盲点かもしれない。



