経営・戦略

2026.08.31 14:45

AI時代に差がつくのは「技術」ではなく「組織文化」だ

Moor Studios / Getty Images

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AI(人工知能)が経営と組織に与える影響力の大きさについては論を俟たない。だが、AIは万能の解決策ではない。高度なツールであり、利用者次第である。だからこそ、経営陣の「戦略」と「思想」が厳しく問われている。

トム・モナハン氏は、エグゼクティブサーチ・リーダーシップアドバイザリー企業「Heidrick & Struggles(ハイドリック&ストラグルズ)」のCEOとして数多くのグローバル企業の経営者たちを見てきた。彼が考える、AI時代における日本企業の課題と勝ち筋とは。


生成AI(人工知能)は、日本企業のオペレーティングモデルに急速に組み込まれつつある。これまでAIをめぐる議論は、技術的な能力や機能に重きが置かれてきた。しかし、中長期的な差別化の決め手となるのは、技術そのものではなく、リーダーシップのあり方と組織文化である。

テクノロジーは、生産性の向上や人手不足の緩和だけでなく、業務プロセスの自動化、分析の迅速化、業務効率の改善も可能にする。しかし、AIから持続的な価値を実現する組織は、必ずしも多くのツールを導入している企業とは限らない。重要なのは、リーダーシップの行動、人材マネジメントの仕組み、そして企業文化を、継続的な変化に対応できるスピードで適応できるかどうかである。

この視点は、日本において特に重要である。人口動態の変化はすでに日本の労働市場を大きく揺さぶっており、OECD(経済協力開発機構)の予測によれば、日本の生産年齢人口は今後数十年にわたって大幅な減少が続く見通しだ。人手不足が幅広い産業で一段と深刻化するなか、多くの企業はAIを単なるテクノロジー導入の取り組みとしてではなく、仕事の再設計、組織の知見や能力の維持、限られた人員で生産性を持続させるための経営課題として捉えている。

日本の政策も、こうした認識に沿って展開されている。Society 5.0(内閣府が提唱する、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会)やGENIAC(経済産業省とNEDOが主導する、国内における生成AIの開発力強化と社会実装の加速を目指すプロジェクト)に代表される取り組みにおいて、AIは単独の技術トレンドとしてではなく、産業競争力の強化、社会課題の解決、安全性や信頼性の確保といった、より広い政策的文脈のなかに位置づけられている。AIは、単なる一過性のブームとしてではなく、組織や社会のあり方を中長期的に変えていく基盤として捉えられているのだ。

その結果、現在企業が直面している問題は、当初多くの人が想定していたものとは異なるリーダーシップの課題である。AI導入の制約は、技術そのものにあるとは限らない。多くの企業がすでに必要な技術にアクセスできている今、真に問われるのは、AI活用を個別の実証実験にとどめず、日々の業務へと定着させる組織環境を構築できるかどうかだ。

実際、成否を分けるのは、そうした組織の行動である場合が少なくない。

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文 = トム・モナハン

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