経営・戦略

2026.08.28 14:15

日本企業が早急に取り組むべき「後継者不在」という経営リスク

Moor Studios / Getty Images

トヨタ自動車は 、2025年に発表したコーポレート・ガバナンスに関する開示資料の中で、経営幹部の任命に関する体系的なアプローチを示している。上級経営陣の人事は、社内の指名・報酬に関する機関で審議され、その結果が取締役会での決議に向けて提言される仕組みとなっている。このような体制は、任命プロセスの透明性と客観性を確保しつつ、全社的な経営ニーズを反映することを目的としている。

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ガバナンスの観点から見ると、こうした仕組みは日本の大手企業に共通して見られるものである。すなわち、社内の指名委員会や人事委員会が取締役会に先立って経営人事の方向性を整理し、実質的に重要な役割を担うという構造である。このモデルでは、後継者に関する議論は単なる人事異動としてではなく、経営陣の構成や能力バランス、さらには組織運営の継続性といった、より広い文脈の中で扱われるのが一般的である。

一方、ANAホールディングスでは、経営体制の見直しが事業年度の開始にあわせて実施された。その背景には、コロナ禍後の回復が続く事業環境に加え、Peach Aviation(ピーチアビエーション)へのLCC事業の集約、デジタルトランスフォーメーション(DX) の推進、貨物事業の拡大といった重点施策がある。経営体制の変化は、こうした全社的な戦略課題の進展と歩調を合わせて実行されていることがうかがえる。

両社の事例からは、経営者の交代が、より広範な戦略実行のフェーズと整合的に進められていることが読み取れる。いずれも、取締役会の承認プロセスと、経験豊富な社内人材の登用による継続性が重視されている点が共通している。後継者人事が個別の戦略施策との関係で明示的に語られているわけではないものの、そのタイミングからは、経営体制の移行が企業全体の事業運営のリズムの中に組み込まれている様子がうかがえる。

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近年、企業を取り巻く経営環境はかつてなく複雑化しており、リーダーに求められる役割も一段と高度化している。その結果、企業が外部に求める支援は、従来の採用支援の枠を超え、「リーダーシップ・アドバイザリー」へと大きく広がりつつある。これは、単に次の経営トップを見つけるための取り組みにとどまらない。リーダーの能力や将来性の評価、社内人材の市場水準との比較、後継者パイプラインの設計、経営幹部の育成やコーチング、経営戦略と整合したリーダーシップチームの構築、さらには企業文化や組織力の強化までを含む、包括的な支援である。取締役会にとって真に重要なのは、後任となる一人のリーダーを選ぶことではない。中長期的な企業価値の向上に向けて、組織全体として最適なリーダーシップのアーキテクチャーを構想し、備えていくことである。

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文 = トム・モナハン

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