2026年、フランス各地は度重なる熱波に見舞われ、ワイン用ブドウの成熟が進み、記録的に早い収穫期を迎えている。ボルドーも例外ではない。高温に加えて降雨の少ない乾燥した状態が続き、大規模な火災が発生するなど非常事態も発生した。
こうした深刻な気候変動の影響は年々顕著になり、変化のスピードも増している。ブドウ栽培においても、これまでとは異なる環境に適応するために新たな対策が求められているなか、具体的な行動に移している生産者の一つが、「ソシエテ・シヴィル・デュ・シャトー・ラフルール」(Société Civile du Château Lafleur、以下ラフルール)だ。
ラフルールの拠点は、ボルドー右岸のポムロール村。小さなアペラシオンながら、ペトリュスをはじめとする少数精鋭の生産者たちが、世界最高峰と称されるワインを生み出す銘醸地だ。ここ右岸では、カベルネ・ソーヴィニヨンを主体とするワインが多い左岸に対し、メルロとカベルネ・フランを主要品種としてワインが造られる。
その名称は、畑の名から来ている。15世紀から17世紀にかけてラフルール家が耕作していた4.5ヘクタールの小さな畑。1872年にアンリ・グルルーが取得し、1985年にはジャックとシルヴィ・ギノドー夫妻が受け継いだ。現在は、ギノドー家が管理する他の場所も含めて約24ヘクタールの畑から6つのワインを造っている。
ラフルールの特徴は、まず家族が代々引き継いできた「ブシェ(Bouchet)」と呼ばれるカベルネ・フランの存在だ。カベルネ・フランはフローラルで清涼感のあるアロマを持ち、ワインに過度な重さを与えないことから、軽やかなワインが求められる昨今、あらためて注目される可能性のある品種でもある。ポムロールで伝統的に「ブシェ」と呼ばれてきたが、今では、このブシェを受け継ぐブドウ樹を持つ生産者は少なくなっている。
メルロが多く植わっているポムロールにおいて、ラフルールではメルロとカベルネ・フランをほぼ半分ずつ用いる。醸造責任者のオムリ・ラム氏は、代々受け継いできたブシェについて、「私たちのブシェには、(カベルネ・フランに時として表れる)ピーマンのようなニュアンスはなく、ライラックのような、よりフローラルな芳香さがあります。口当たりも非常に緻密です」と説明する。
そして、ボルドーではシャトー(生産者)という名のもとに複数の区画のワインをブレンドして造る生産者が多いなか、ラフルールでは、それぞれ異なる畑や場所の個性を一つひとつ探究し、そのテロワールと、そこに植えられたブドウ品種の個性を各ワインに表現している。



