リーダーシップ

2026.08.26 14:49

「真のマルチタスク」は科学的に可能か 多忙なエグゼクティブへの脳科学的アドバイス

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私がFBIの北カリフォルニア地区の広報担当者だったころ、1日が計画通りに進むことはめったになかった。ある瞬間にはメディアからの電話に対応し、次の瞬間には内部からの要求に応じながら、FBIを正確、誠実、かつ真摯に代表できるよう明確に思考を巡らせようとしていた。誰もが、迅速で、正確で、思慮深い回答を求めていた。しかも、それらすべてを同時に求めていたのだ。

傍から見ればマルチタスクを行っているように見えたかもしれない。しかし、当事者の私にとっては、かろうじてコントロールできているだけの混沌(カオス)のように感じられた。

プレッシャーにさらされている多くのプロフェッショナルと同様に、私は複数の優先事項をうまく処理していると自分に言い聞かせていた。しかし実際には、神経科学が何十年も前から警告してきたことを行っていたにすぎない。つまり、複数のタスクの間をすばやく切り替え、そのたびに認知的な代償を払っていたのである。切り替えるたびに集中力は削がれ、思考は鈍り、ミスの可能性が高まる。これは、責任の重い場面で最も避けるべき事態だ。

長年にわたり、科学的な見解は定まっているように見えた。意思決定や複雑な思考を司る司令塔である脳の前頭前野は、負荷の高いタスクを一度に1つしか処理できないというものだ。前頭前野はボトルネックとして働き、私たちに真のマルチタスクではなく、タスク間の切り替えを強いる。この知見だけでも、「雑務」に追われた1日がなぜこれほど非生産的に感じられるのかを説明できる。

しかし、新たな研究は、私たちが相反する優先事項に直面した際の新たな選択肢を提示している。適切な条件下において、脳は「マルチタスク」を学習できるというのだ。それは2つの新しいことを同時に行うのではなく、一方のタスクを自動化することによって実現される。十分な反復練習を行うことで、あるスキルを前頭前野から脳の他の領域へと移行させることができる。それが起きると、脳の実行機能に余力が生まれ、別の物事に集中できるようになる。

その仕組みとは

あるタスクを初めて学ぶとき、前頭前野が深く関与する。この段階では処理が遅く、労力を要し、多大な注意力を必要とする。しかし、反復によってパフォーマンスは向上し、やがて頭打ち(プラトー)に達する。その時点で重要な変化が起きる。そのタスクの処理が他の脳領域、特に側頭葉へと移行し始めるのだ。

実質的に、そのタスクは「第二の天性(無意識にできること)」となる。

その移行が起きると、前頭前野は以前ほど強く関与しなくなる。新しいことに集中する余地が生まれるのだ。これこそが「真の」マルチタスクが可能になる瞬間である。一方のタスクが自動化され、もう一方のタスクに能動的な思考を振り向けることができる状態だ。

研究では、自動化には持続的かつ意図的な訓練が必要であることが明らかになっている。管理された研究の参加者は、測定可能な神経変化が見られるまで数週間にわたる訓練を行った。ただし、すべての人が同じペースで移行するわけではないという点に注意が必要だ。

また、このことは、画面のスクロール、メールやテキストメッセージの送信、そして聞き取りを同時に行う、いわゆる「メディア・マルチタスク」が、一貫してパフォーマンスを低下させる理由も説明していると私は考える。これらのタスクはいずれも、完全に自動化されるほど十分に習熟していないため、脳はタスクの切り替えモードから抜け出せないままでいるのだ。

リーダーへの示唆は繊細だが強力だ

マルチタスクは生まれつきの才能ではない。構築可能な能力であり、この違いを理解することは、パフォーマンスの向上を目指すリーダーにとってすべてを変えるものとなる。

つまり、目指すべきは「一度に多くのことをこなすこと」ではない。忙しい1日の中で、何に全力の注意を向けるべきか、そして何を「注意を必要としないレベル」まで訓練できるかを見極めることだ。では、多忙なエグゼクティブはこの現象をどのように活用すればよいのだろうか。

1. コアとなるリーダーシップスキルを自動化する

この役割に就いた当初、私は1つの再現可能なリーダーシップ行動に集中した。それが「コミュニケーション」だ。主要なステークホルダーとの定期的な進捗確認を行う規律あるシステムを構築し、受動的ではなく能動的に関与できるようにした。当初は意識的な努力を要したが、時間が経つにつれて自動的に行えるようになった。

この移行は重要だった。これによって、より重要な意思決定(何を言うべきか、いつ言うべきか、リアルタイムでどのようにリスクを管理すべきか)のための認知スペースが解放された。これこそが、知的なマルチタスクを可能にするものだ。

構造化された思考、明確なメッセージ、一貫したフォローアップといったリーダーシップのコア行動を自動化するとき、あなたは効率を高めているだけでなく、脳の処理能力を再配分しているのである。

2. マルチタスクを戦略的に行う

私は、完全に自動化された日々の通勤時間を利用して、ブリーフィングを聞いたり、頭の中で重要なメッセージの予行演習を行ったりすることを学んだ。一方のタスクは認知的な労力をほとんど必要とせず、もう一方は集中した注意力を向けることで効果を発揮した。これらは異なる神経回路に依存していたため、認知リソースを奪い合うことがなかったのだ。

しかし、やはり境界線を引くことは重要だ。

失敗の許されない極めて重要な会話においては、全精力を傾けることに勝るものはない。そのような瞬間に注意を分散させると、パフォーマンスと判断力の双方が低下しかねない。複雑で新しい仕事についても同様であり、これらは前頭前野の遮るもののない関与を必要とする。

3. 同種のタスクをバッチ処理する

メール、電話、承認作業など、同種のタスクをまとめて処理(バッチ処理)することで、スイッチングに伴う目に見えないコストを削減できる。頻繁なタスクの切り替えは、生産性を最大40%低下させる可能性がある。仕事を集中ブロックにグループ化することで、脳を単一の認知モードに保ち、精神的エネルギーを節約できる。

同様に重要なのは、深く考えるための時間を確保することだ。テレビインタビューの準備や複雑な問題の整理など、深さを要する仕事に取り組むときは、そのための時間を確保する。時には、作業を始める前に、ドアを閉めたり、軽く散歩をしたりして頭をリセットするだけでも十分な効果がある。

複雑な思考には、今でも遮るもののない集中力が不可欠だ。新たな研究結果も、その事実を変えるものではない。

4. マインドを訓練する

短時間のマインドフルネスの実践であっても、気を散らすものに抵抗し、中断から素早く回復する脳の能力を強化できる。常に要求が絶えない環境において、メンタル面の回復力(レジリエンス)を高める能力は、競争優位性となる。本当に重要なことのために、脳のエネルギーを温存しよう。

ここでの教訓は、マルチタスクが突然安全になったり、容易になったりしたということではない。私たちが問いを間違えていたということだ。「一度に多くのことをこなすにはどうすればよいか」ではなく、「注意を向ける必要がないほど十分に訓練できることは何か」と問うべきなのだ。これこそが、真の転換である。

マルチタスクとは、自身の認知リソースを保護する能力を身につけることである。真のマルチタスクは、脳を再配線するような、深く意図的な訓練を通じてのみ得られる。戦略はこうだ。自動化できるものは自動化し、本当に新しいことのために注意力を温存し、ルーティンワークはまとめて処理し、そして最高の思考を必要とする瞬間には決して注意を分散させないことだ。

forbes.com 原文

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