地域医療システムで看護部長を務めるアンディは、ユーモアと共感力にあふれる人物だ。彼女は筆者にこう語った。「私たちの役割はこの5年間で大きく変わりましたが、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)は変わっていません。今や私の仕事の5割は、セラピスト、心理カウンセラー、そして人間関係の相談員です。会議を終えてオフィスに戻ると、私と話をするために人々が列を作って待っているのです」
その場にいた全員が笑い始めた。自分の役割に新たな要求が加わっているのは、アンディだけではなかった。彼女は誇張していたわけではない。新たな現実、すなわち明文化されていない「2つ目の仕事」を描写していたのである。
この話は医療だけでなく、今あらゆる業界で起きている。
人に関する課題について根本原因分析を行うと、答えはたいていリーダーシップ上の慣行に行き着く。この事例では、集中治療室(ICU)における看護教育、採用、オンボーディング、研修、そして新人看護師の期待(と現実のギャップ)を静かに作り変えてきた、誤った人員配置方針に課題がたどり着いた。
アンディが語る「2つ目の仕事」は、定着率に大きな影響を与えている。私たちがコントロールを求めるのは、不確実性への恐れに由来する。恐れの対極にあるのは安定ではなく、強いコミュニティ意識である。従業員は、自分が見られ、声を聞かれ、認められていると感じると、組織にとどまり、変革を支えようとする意志を強める傾向がある。価値をもたらし、価値を認められたいというのは人間本来の欲求だが、デジタル過負荷と利益至上主義に支配された企業が、信頼をむしばんでいる。今日の労働者は自分が替えのきく存在であることを自覚しており、より多く稼ぎ、より少なく働きたいという動きは、その防衛反応の一部なのである。
計算が合わない現実
マネジャーは、チームをまとめ上げながら、より多くを生み出し、より速く自動化することを期待されている。AIは時間を取り戻すとうたわれているが、研究では、自動化はしばしば人々の仕事を減らすのではなく、むしろ広げることがわかっている。バークレー・ハースが8カ月にわたり実施した調査では、従業員200人規模のテック企業を追跡した。その結論は、従業員はより速く働き、より多くのタスクを抱え、直面する課題を解決するためにより長くつながり続けている、というものだった。実際、AIのヘビーユーザーは、非利用者よりも高いバーンアウト(燃え尽き症候群)を報告している。AIツールは進化しているが、「より少ないリソースでより多くをこなす」という状況は好転していない。
マネジャーが向き合う労働力は、それ以前の世代に比べて、変化や混乱を吸収する備えができていない。アフラックの最新の労働力調査によると、Z世代はミレニアル世代を抜き、最もバーンアウトしている世代となった。74%が中程度から重度のバーンアウトを訴えている。米国心理学会(APA)は、26歳から43歳の労働者の65%が、雇用不安を最大のストレス要因として挙げていると結論づけた。18歳から25歳では、その割合は75%に達する。最も若い世代の労働者は、好奇心と楽観的なマインドセットを持って社会人生活をスタートさせる代わりに、深刻な苦痛と不安を抱え込んでいるのだ。
これでは計算が合わない。APAの労働力レポートは、変化に対する経営幹部と現場の実行担当者の認識に、著しいギャップがあることを示している。多くのリーダーが変化に対して楽観的な見方を示す一方で、現場のチームは、疲弊し、絶え間ない手戻りに追われている実態を訴えている。マネジャーは、これら2つの現実の板挟みになっている。彼らは新たな変革を任されると熱意を示し、戦略を現場に落とし込みつつ、さらなる変化に直面した従業員の切迫した精神的苦痛を和らげなければならない。この「精神的な緩衝材」としての役割もまた、彼らの職務記述書には記載されていない。
最も若い労働層は、長年にわたる学校教育の分断や世界的な不確実性によって、社会的な受容力や回復力(レジリエンス)に著しい不備が生じている。労働市場は、仕事の歴史において最大の破壊的変化に直面している。マネジャーは、仕事の要求によって私生活が侵食されない生活の質(QOL)を期待する労働者を相手に、なんとか舵取りをする方法を学んでいる。「より少ないリソースでより多くをこなす」ことは、単にアウトプットの課題であるだけでなく、人材定着の阻害要因にもなる。マネジャーは、より多くの個人時間と明確な境界線を求める世代を前に、生産性のパラドックスに直面しているのだ。
マネジャー職の再設計が必要
システム変更が実施されると、そのしわ寄せはマネジャーに及ぶ。マネジャーは、範囲や影響に関する十分なコミュニケーションや情報更新がないまま、業務上および感情面の負担を引き受けることになる。アンディは部署のセラピストになることを求められているわけではないが、彼女のモチベーションは、業務を回し続けなければ組織が崩壊するという危機感にある。人員が不足したとき、その苦痛を肩代わりできるポジションはほかに存在しない。
切り詰めた体制で運営するあらゆる業界で、1つの肩書の下で複数の仕事をこなしているマネジャー層が存在する。あなたが無能さと見なしているものは、実際には、マネジャーがチームに責任を持って行動させようと格闘している本物の苦闘なのかもしれない。
レジリエンスはスローガンではない
多くの企業が、従業員にレジリエンスを教えるためのワークショップに多額の投資をしてきただろう。しかし、問い直すべきは、リーダーたちがレジリエンスを生み出す環境を本気で整えようとしているかという点だ。信頼関係、予測可能な意思決定、および心理的安全性を育む自信はどれほどあるだろうか。マネジャーが「自分の意見を聞いてもらい、支えられ、認められている」と感じられていると自信を持って言えるだろうか。
あなたのチームは、黙り込み、ストレスを抱え、疲れ切った状態で出勤するのではなく、どれほど頻繁に安定感を経験しているだろうか。
ウェルネス・ワークショップは、今日という日を乗り切るための一息つく時間を与えてくれるかもしれない。しかし、真のレジリエンスには、日々呼吸を整え、立ち止まり、内省し、共に問題を解決するという継続的なコミットメントが必要だ。それは、私たちが信頼関係を育むのと同じ方法、すなわち、脳が自己防衛のために予期せぬ課題を探し出そうとする本能を抑えるような、一貫して繰り返される行動を通じて構築されるのである。
本当に必要とされること
このジレンマは、新たなスマートツールをもう1つ導入したところで解決しない。解決の第一歩は、問題の根本原因を究明することだ。現状を明確に把握することで、明確な意思決定を促す信頼性の高いサポート体制を構築し、異なる部門間での真摯な協力を生み出すことができる。感情労働とタスク労働の双方を反映した業務量の監査(ワークロード・オーディット)を支援すれば、マネジャーは従業員が退職を決意する前に、本音で話し合う訓練を積むことができる。混乱の無限ループを学習によって断ち切る空間を創り出す必要がある。
発見と根本原因の分析に対してより意図的に取り組むことで、目に見える場所に潜んでいるものを明らかにし、そこから取り戻すための適切な戦略を始動させることができる。マネジャーの役割は変わった。生産性のパラドックスへのアプローチ方法次第で、変革をより迅速に進め、優れた成果を上げることが可能になる。問題解決や意思決定のプロセスにマネジャーを関与させれば、彼らは導入時だけでなく、その先も変革を支えるために、自他共に責任を全うしようという強い意欲を持つようになるだろう。



