リーダーシップが試されるのは、物事が平穏なときではない。不快な局面、つまり緊張が高まり、コミュニケーションが崩れ始め、あるいは問題が明らかに起きつつあるにもかかわらず、人々がどう対処すべきか分からないときにこそ試される。
私は長年、そうした局面で1つのシンプルな原則を頼りにしてきた。「火中に飛び込め」である。何かがおかしいと察知したら、避けるのではなく関与することを選ぶ、という意味だ。問題はワインとは違う。時間がたてば良くなるものではない。放置すれば、たいてい悪化する。
その原則を実践に移すには、規律と、進むべき道が完全には見えていない段階で行動する意思が必要である。
課題はしばしば、機会の姿をしている
私が学んできた最も重要な教訓の1つは、困難の中にはたいてい機会が埋め込まれているということだ。
厳しい状況に直面している人は、居心地のよい役割にいる人よりも多くを学んでいることが多い。それこそが、火中に飛び込むことで得られる「成長」である。課題を避けるのではなく分解して考えれば、新たな能力、より強いプロセス、よりしなやかなチームが見えてくる。
数年前、当社のあるプロジェクトで、下請け業者が競争力のある入札を行った後、着工前に撤退した。当社が苦境に立たされていることを市場が察知すると、代替の入札額は大幅に高くなった。そのコストをそのまま受け入れる代わりに、当社のチームは作業範囲を精査し、社内に専門知識を蓄積して、自ら作業を実施した。当初は混乱だったものが、最終的には当社の対応能力を広げ、将来の顧客への納品に対する統制力を高めることになった。
事業成長の局面も同じである。規模拡大のリスクに目を向けるのは容易だが、成長は人々が新たな役割に挑戦し、より大きな業務範囲を担い、場合によっては新しいものを築くために移転する機会を生む。そうした瞬間に、キャリアは形づくられることが多い。
決断ではなく、問題に向かえ
リーダーの立場にいれば、チームメンバー同士、パートナー同士、あるいは顧客と社員の間の意見の相違について耳にすることは避けられない。感情が絡んでいるときは特に、成り行きを見守りたくなるかもしれない。しかし私の経験では、傍観していて解決につながることはほとんどない。むしろ多くの場合、不満を積み重ねるだけである。
火中に飛び込むとは、対立に早い段階で、思慮深く、正面から向き合うことを意味する。問題を理解するために素早く動く一方で、決断を急ぎたい衝動には抗う必要がある。
リーダーの中には、自分の役割はどんな犠牲を払ってもチームメンバーを守ることだと考える人もいる。だが実際には、効果的なリーダーシップには複数の視点を理解することが求められる。解決しようとしている論点には厳しく向き合いながらも、人に対して厳しく当たる必要はない。すぐにどちらかの側につくのではなく、中立的な立場を取ることで、冷静な判断が優先され、全員をより生産的な結果へ導きやすくなる。
生産性が落ち始めたり、コストが上がり始めたりしているのを目にしたとき、同じプロセスを続けていても、すべてが魔法のように解決するわけではない。リーダーとしての私たちの仕事は、チームが細部を掘り下げ、原因と結果を理解し、いま起きていることに向き合えるよう支援することだ。回避するのは簡単である。説明責任こそが、より強いチームとより良い結果を生む。
すべての声が重視される文化をつくる
火中に飛び込む姿勢は、それが文化のあらゆる階層に根づいたマインドセットであるときに効果を発揮する。建設現場における安全プロセスは、この原則が機能していることを示す力強い例である。
当社では、勤続年数や肩書にかかわらず、誰もが安全な現場づくりにおいて発言権を持つと考えている。新しい人が加わった際には、研修中に直接こう尋ねる。「安全でないものを見つけたら、声を上げられると思いますか」。当社の考え方はこうだ。誰かが問題を指摘し、それが正しければ、けがを防いだかもしれず、命を救った可能性さえある。もし指摘したことが最終的に問題ではなかったとしても、その人は次に生かせる貴重な学びを得ている。いずれにせよ、声を上げることは常にプラスである。
リーダーはその行動を積極的に強化しなければならない。私たちが現場を訪れるときは、視察に若手メンバーを同行させ、質問を投げかける。誰かが懸念を示したときには、それを公の場で認める。「この人が今日声を上げてくれたおかげで、私たちはより安全になった」といった形でその瞬間を取り上げることは、警戒心と勇気が評価されるというメッセージになる。
火の中にこそ、リーダーシップは現れる
リーダーも課題と無縁ではない。ときには自分自身がその真っただ中に身を置くこともある。状況に圧倒され、前に進む道が見えないと感じるとき、それは往々にして、自分が問題に近づきすぎているサインである。
ここで当てはまる古いことわざがある。「木を見て森を見ず」というものだ。そうした瞬間に助けを求めることは、弱さではない。仕事の一部である。リーダーシップには、一歩引き、別の視点を求め、新たな目を招き入れる責任が伴う。多くの場合、その距離があるからこそ、細部に埋もれているときにはどうしても見えない解決策が明らかになる。
私が知る最も有能なリーダーたちは、問題が自然に解決するのを待たない。緊張を避けたり、課題が自然に消えていくことを望んだりしない。好奇心と謙虚さ、そして目的意識を持って、不快なものへと向かっていく。なぜなら、そこにこそ明晰さが生まれ、リーダーシップが真に姿を現すからである。



