1905年にいると想像してほしい。工場で電気モーターが使われ始めたばかりの時代だ。最高経営責任者(CEO)に「あなたの企業では電気を使っていますか?」と尋ねることは、完全に理にかなっていた。では、今日同じ質問をすることを想像してみてほしい。そのCEOは、私が正気を失ったと思うだろう。なぜなら現代のビジネスにおいて、電気は業務が行われるあらゆる局面に深く関わっているからだ。今日のAI(人工知能)の導入と変革は、1905年における電気の状況と似ている。しかし、1つだけ大きな違いがある。それは、ビジネスのあらゆる側面にAIが関与するようになるまでに何十年もかかるのではなく、わずか数年でその領域に達する可能性が高いという点だ。
AIとビジネス・オペレーティング・システムの進化
ここで登場するのが、「ビジネス・オペレーティング・システム(BOS)」だ。BOSとは「組織内で仕事がどのように進められるかを規定する、概念、ツール、規律の一貫した集合体」である。よく設計され、ブランド化されたBOSの例としては、EOS、Scaling Up、4DX、Pinnacle、90osなどが挙げられる。
過去1年間、私はAIを体系的かつ深く導入し、マーケティング人工知能研究所(Marketing Artificial Intelligence Institute)のポール・ロエツァー氏が言う「AIエマージェント(AI主導型)」企業へと変革を遂げつつある企業に、ある共通のパターンが見られることに気づき始めた。私が話をした多くのCEOのなかに、EOSを導入して7年になるプロフェッショナルサービス企業の経営者がいる。彼女は、AIによって自社の業務プロセスが激変したため、現在ではEOSのいくつかの側面が不十分だと感じるようになったと語った。具体例を求めると、彼女は「Rocks(ロック)」を挙げた。これはEOSの用語で、チームが今後90日間に最優先で取り組むべき最重要課題を指す。AIによって業務の実行スピードが劇的に向上し、市場環境も急速に変化しているため、90日スパンの「ロック」はもはや、この目まぐるしい動きに対応できなくなっているという。そればかりか、現在の「ロック」の定義方法では、AIエージェントがその実行に介入するには不十分だ。AIが機能するためには、ロックに対してより構造化された定義、具体的にはより多くのコンテキスト(背景情報)が必要となる。
かつては90日かかっていた目標が、現在では30日で達成されることも珍しくない。また、以前なら1四半期は安定していると考えられていた市場環境が、わずか1カ月の間に激変することもある。その結果、優先事項は四半期ごとではなく、毎月見直す必要が生じている。そのCEOのケースにおける解決策は、「ロック」という概念そのものを捨てることではない。それを「90日間」という固定された枠組みから切り離すことだ。また、これに関連して、計画会議を四半期に1回よりも高い頻度で開催できるようにすることも重要だ。
同様の状況にある他の企業にとって、この変化は概念にとどまらず、ツールとしての「ロック」の仕様、より具体的にはツールがロックの定義を求める方法にまで及ぶ。このツールを進化させる方法はいくつか存在する。
質問ベースのフレームワークを適用する
私が活用し、クライアントにも指導しているのは、トラスト・インサイツ(Trust Insights)のCEOであるケイティ・ロバート氏から学んだ「5Pフレームワーク」の拡張版だ。それぞれの「P」について、1つか2つの質問に答える必要がある。以下は、ソートリーダーシップを高めるためにこのツールを使用する場合の具体例だ。
Purpose(目的)
このロックの成果は何か?
LinkedInに週3回投稿する。
People(人)
その実行には誰が関わるのか?
自分と、アイデアのブレインストーミング用のClaude Sonnet 5。
Process(プロセス)
どのように実行するのか?
ステップ1:最近のインタビューを文字起こしする。
ステップ2:独自のClaudeエージェントを使って投稿テーマを提案させる。
ステップ3:エージェントが生成した提案をもとに、実際の投稿のアウトライン(構成案)を作成する。
ステップ4:投稿文を執筆する。
ステップ4:投稿スケジュールを設定する。
ステップ5:これを繰り返す。
Platform(プラットフォーム)
必要なツールとデータは何か?
Claude、LinkedIn、および生産性向上アプリのAlfred。
Performance(成果)
成功とはどのような状態か?
四半期を通じて、週3回の投稿が行われていること。
ロバート氏のオリジナルの5Pをベースに、私はさらに2つのカテゴリーを追加した。
Peril(リスク)
これを達成できなかった場合、どのような結果を招くか?
自社ブランドに関連するソートリーダーシップの低下。
Period(期限)
いつまでに完了させる必要があるか?
2026年8月31日
AIに向けたBOSの監査
最後に、ロックの作成と実行における「規律」も変える必要がある。例えば、ロックが十分に明確であるか、そして特定の誰かの「お気に入りのプロジェクト」にすぎないものではなく、実際に年間目標に直結しているかどうかを検証(プレッシャーテスト)するために、AI自体を活用することを勧める。これは概念やツールとは異なる、行動レベルの変革である。
では、私たちはここから何をすべきだろうか。リーダーがまず着手すべきは、BOSの監査だ。自社のAI変革の現状と照らし合わせて、BOSの概念、ツール、規律を評価し、それに応じて調整を行う。外部のBOSコーチは、システムの整合性を維持する上で役立つだろう。同様に、自社のBOSおよびSaaSプラットフォームも評価する必要がある。多くのプラットフォームやBOSの設計者自身も、AIエマージェント企業の世界を反映させるために、自らの概念、ツール、規律を調整しなければならない。彼らがAIにどのように適応しているかを問いかけてみよう。究極の問いはこうだ。組織の全業務にAIが組み込まれている現状において、現在のBOSは十分に機能しているだろうか?



