チリ以外の銅産出国
チリの銅生産量の大幅な引き上げは難しいと見られる中、他の産出国がその穴を埋めるために乗り出す可能性もある。アフリカのコンゴ民主共和国とザンビアは有力な代替候補だ。世界全体の銅埋蔵量の約10%をコンゴが、約6%をザンビアが保有している。
コンゴは既に増産能力を実証している。同国の銅生産量は過去1年で10%増加し、中国やペルーなどを抜き、チリに次ぐ世界2位の生産国となった。コンゴの台頭は、地政学的な競争を引き起こしている。
同国は設備の制約や統治上の問題のほか、供給の遅延を招きかねない地政学的危機にさらされている。国内の道路のうち、年間を通じて通行可能なのは1割にも満たず、頻繁に発生する電力不足により、鉱山会社はディーゼル発電機に頼らざるを得ず、生産費用の増加につながっている。また、政治的課題も山積している。コンゴ東部では武装民兵による反乱が多発している。最近では中国政府が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」から距離を置き、隣国ルワンダとの和平交渉の一環として米国と戦略鉱物協定を締結するなど、西側諸国への接近を見せているものの、コンゴの政治情勢は安定しているとは言い難い。
一方、ザンビアは国家の統治能力、社会基盤、政治的安定性の面でコンゴを大きく上回っている。ザンビアは銅の年間生産量を現在の3倍の300万トンに増やすことを目指している。だが、この目標を達成するには、特に国内の電力不足を解消するための多額の投資が必要となる。人件費の上昇も、事業拡大の費用を押し上げる可能性がある。
コンゴとザンビアで銅の生産量を急速に拡大するための唯一の現実的な方法は、ロビト回廊だ。同回廊は、アンゴラのロビト港と、鉱物資源が豊富なコンゴのカタンガ州とザンビア北部を結ぶ、港湾、鉄道、処理施設、物流拠点から成る経済の大動脈だ。この計画は当初、米国のジョー・バイデン前政権の主導で開始されたが、現在も超党派の支持を得ており、米政府は昨年、開発の継続に必要な5億5000万ドル(約880億円)の融資を表明した。
地政学的資産になりつつある銅
銅の供給確保が困難になるにつれ、生産者とのつながりを確保することが不可欠になっている。中国は既に、コンゴのキサンフ鉱山の拡張に向けた10億8000万ドル(約1700億円)規模の投資をはじめとする複数のプロジェクトへの参画を通じて、同国の銅産業に確固たる足場を築いている。一方、米国は、供給網の支配権を巡って中国と競い合う中、重要鉱物資源の確保に努めている。コンゴは米国との戦略的協力協定に基づき、同国への銅輸出を年間50万トンまで増やす計画だ。
現在の課題は、十分な量の銅を生産することだけでなく、生産した銅をどこでどのように販売するかを決定することにある。中国はチリにとって最大の銅市場であり、世界最大の銅生産国である同国は、中国の需要に大きく依存してきた。チリは市場の多角化を図り始めると同時に、銅精鉱の輸出から精製銅への転換も目指している。英ロイター通信は10日、チリのコデルコとインド国営銅生産企業ヒンドゥスタン・コッパーが合弁事業に向けて協議を進めていると報じた。
チリ、ザンビア、コンゴの事例が示すように、世界の銅を巡る危機は単なる不足ではなく、入手可能性の問題でもある。銅は存在していても、採掘費用が上昇し、技術的にも困難になっているのだ。需要が拡大し続ける中、生産量を増やすことができる国の重要性は今後さらに高まるだろう。生産者にとって、銅は単なる商品ではなく、戦略的資源となっている。投資家にとって重要なのは、各国の銅の埋蔵量ではなく、どの国が自国の埋蔵資源を需要を満たすことのできる規模と速度で安定的に供給できるのかということだ。


