

学生と企業が変わる新卒採用の新たな潮流



成功者の「キャリアの選び方」から着想先進企業が実践する新卒採用の“新潮流”
2026年7月28日、東京會舘にて、OB/OG訪問ネットワークサービス「ビズリーチ・キャンパス」が主催する「OB/OG AWARD 2026」が開催された。学生・企業ともに満足度の高い新卒採用を実現する「相互理解型採用」の推進を目指す同アワードは、今回で6回目。社員を巻き込んだ先進的な取り組みを戦略的に進める企業が壇上で紹介され、新卒採用の新たな潮流を感じさせる場となった。これからのスタンダードとなりつつある「相互理解型採用」とは、一体どのようなものなのか。同社サービスの立ち上げに携わり、現在は執行役員として事業を率いる藤田氏に、その本質を訊いた。
10年前、新たな新卒採用のプロダクトを構想していた藤田拓秀(以下、藤田)は、ハイクラス転職サイト「ビズリーチ」に登録しているビジネスパーソンたちに「キャリア選択のための情報源」を尋ねた。返ってきた答えの多くは、「実際に働いている人に話を聞いた」というものだった。
「学生が期待感だけでなく、覚悟や納得感をもって会社を選べるようになる社会を実現したい。そのためには、学生は表面的な情報だけでなくリアリティのある情報を知る必要があります。その情報は、現場社員と対話することでしか得られません」
そうした思いから藤田が立ち上げたのが「ビズリーチ・キャンパス」だ。学生はオンラインで大学、業界、職種などの軸から現場社員を探し、直接話を聞くことができる。

出発点にあった「リアリティのある情報を届ける」という考え方は、現在の新卒採用においてさらに重要性を増している。藤田は「新卒採用のあり方は『相互理解型採用』にシフトしている」と語る。「相互理解型採用」とは、企業からの一方的な情報発信ではなく、企業と学生が対話を通じて互いの理解を深める採用のあり方だ。背景には労働市場の流動化がある。
「転職が一般的になり、今の学生は、『キャリアは自分自身でつくる』という意識をもっています。そのため、実際に働いている社員がどんな仕事をしていて、どんな力を身につけているのか、その企業の社員はどんな人たちか、というリアリティのある情報を求めています」
この変化は、企業側にも採用のあり方の見直しを迫っている。
「かつて、新卒はジョブローテーションを通じた長期育成が前提でしたが、現在は早期戦力化が求められています。そのためには初期配属のマッチング精度を高める必要があり、企業側も学生の希望を把握したいと考えています」
現場社員の参画が採用と組織を強くする

「相互理解型採用」に欠かせないのが、現場社員の参画だ。人事部門だけでは届けきれない仕事の実態や組織の空気を、現場社員が自ら学生に伝える。
三菱HCキャピタルでは学生へのフォローを強化するため、2026年卒採用から200人以上の社員がOB/OGとして採用に参画する大規模な取り組みを実施。学生の選考通過率や内定承諾率にも改善が見られた。また、学生がOB/OGとの対話を通じて「実際の仕事の現場」「企業文化・風土」を事前に理解することで、入社後のミスマッチの防止にもつながっているという。
さらにこうした活動は採用面だけでなく、社内にも好影響をもたらしている。同社人事部によると、OB/OGとして採用活動に協力した社員の97%が「参加してよかった」と回答。「自社の魅力をあらためて認識できた」「仕事やキャリアを客観的に振り返る機会になった」という声が多く寄せられた。社員自身の自己理解や仕事の価値を再認識する機会となり、組織面での好循環が生まれているという。
一方で、現場社員を巻き込む採用活動には、社内の協力を得て、その体制を継続的に定着させる難しさもある。こうした体制づくりで参考になるのが、竹中工務店だ。はじめに九州支店に絞って採用協力体制を構築し、その後数年かけて全国支社に展開するという手法で、全国1,000人規模のOB/OG体制をつくり上げた。
九州支店では、採用効果を数値で示す方法や、OB/OG施策の導入意図、各社員に期待する役割を事前に伝える運営ノウハウを蓄積。それが、その後のスムーズな全国展開につながっている。



さらに全国の社員の協力を得ることによって、学生が関心をもつキャリアを歩んできた社員と面談する機会の創出にもつながっている。「海外赴任を経験した社員」など、該当する社員が少ない場合でも、エリアを限定せず面談の機会を設けられる。学生の満足度も向上し、内々定承諾に至るケースも増えている。
このような現場社員を巻き込む採用体制を構築するには、企業の社風や組織に合わせて、各社が独自の施策を進める必要がある。そこでビズリーチ・キャンパスでは、企業の「相互理解型採用」におけるさまざまな事例を広く紹介するイベント「OB/OG AWARD」を毎年開催し、これから取り組みを進める企業へ向けて、推進のヒントを提供している。
採用を経営課題として問い直す
「採用は人事部門だけの活動ではなく、経営、人事、現場が一体となって取り組むものです。特に経営層の理解と強いメッセージが欠かせません」と藤田が語るように、「相互理解型採用」は、採用への投資のあり方を問い直す。
従来のように広告費やエージェント費を投じるだけでなく、現場社員の時間や知見という人的リソースをどう生かすか。現場社員を巻き込む難しさを乗り越え、入社後の定着と活躍につなげる採用へ転換できるかが、経営に問われている。
こうした体制は、一朝一夕にはつくれるものではない。だからこそ、早くから社員が自分の仕事を語り、学生と向き合う文化を育てている企業ほど、今後の採用市場で強くなっていく。現場社員の参画は、単なる採用協力ではなく、企業が学生から選ばれる理由そのものになるだろう。
ビズリーチ・キャンパス
OB/OG AWARD 2026

2026年7月28日、東京會舘にて「OB/OG AWARD 2026」が開催された。主催のビズリーチ・キャンパスでは学生の早期からのキャリア観醸成を支援するために、さまざまな業界で活躍する社会人の先輩から話を聞ける機会を提供できるよう、企業のOB/OG訪問活用を推進。第6回となる本アワードでは、新卒採用活動において先進的かつ戦略的な社員巻き込み型採用を推進した企業6社が表彰された。壇上では各社が新卒採用の成果に結び付いた施策を紹介。社員が採用に参画する文化を築いた企業に「カルチャー賞」、社員の協力体制を仕組み化した企業に「ストラクチャー賞」、学生のキャリア選択に新たな提供価値を創出した企業に「バリュー賞」が贈られた。 採用競争力強化の一環として、優秀な学生と現場社員との接点拡充を目指した取り組みを強化。人事部主導のみでは十分な接点を提供できないという課題認識から、全社から約200人にOB/OGとして学生面談の協力を得る体制を確立した。全社的な体制づくりとして「全社採用参画文化」を掲げ、社内関係者との丁寧な合意形成や、業務負荷・運用面への配慮、現場社員の理解醸成を重ねながら導入を進めた。学生との面談承諾率は実施開始から2年連続で97%と高く、社員自身のエンゲージメントの向上や自己理解の深化といった組織面での好循環も生まれている。 OB/OG訪問の学生ニーズに応えるために、全国規模での全社採用体制を構築することを意思決定。九州の1支店に限定した小規模からスタートし、OB/OG訪問の制度設計を確立。ここで各社員の現在の仕事内容や、キャリアの変遷を見たうえでの面談依頼が続出し、学生の多様なニーズの把握にもつながった。その後全国1,000人規模の現場社員へと協力の輪を広げ、全社一体の採用体制を実現した。学生は自身の希望に応じて、全国各地で多様なキャリアを歩む社員と出会えるようになり、自らのキャリアビジョンを考えるきっかけが提供されている。 経年で内定承諾率が低下するなか、学生ニーズに応じて、情報提供機会の拡充・時期の前倒しなど機会設計を刷新。さらに、学生の将来像を一緒に考えながら伴走する社員体制を新たに構築した。その結果、学生と社員の接点数は前年比444%となり、入社意向の醸成による早期選考の立ち上がりに貢献。今後は、現場協力型採用をさらに強化し、学生と社員の接点拡大と情報提供の質向上を目指す。カルチャー賞 グランプリ三菱HCキャピタル
ストラクチャー賞 グランプリ竹中工務店
バリュー賞 グランプリSCSK


