YOASOBIのikuraと、シンガーソングライター・幾田りらというふたつのアイデンティティは、どのようにバランスをとっているのだろうか。
「分ける必要がないかもしれないと思うようになったというのが、実感としては強い気がします。最初は自分ひとりの力でちゃんと結果を出さなきゃいけないという気持ちがあったんです。でも、このふたつの側面をもって日々を生きるということが、自分ならではだし、ありがたいことだととらえられるようになって。
経験するすべてのことを自分のクリエイティブに注いでもいいと思えたんです。ふたつの自分が入れ替わるというよりは、幾田りらという本名の自分がいて、YOASOBIのikuraとシンガーソングライターの幾田りらという、それもまた別の2つの存在がいて。この三角形の関係のなかで、すべての経験を共有していいんだと思えるようになりました。
YOASOBIのikuraとしてMCで何かを話すときも自分自身の生活のことを話したっていいし、そこで味わった幸せや葛藤を幾田りらの音楽にアウトプットしてもいい。そこの風通しがすごく良くなったというのはありますね」
ソロ初の海外ワンマンが即完
26年5月には、韓国・ソウルで自身初の海外ワンマン公演を開催。チケット即完を受けて追加公演も決定し、韓国のアーティストであるZICOとアイドルグループIZ*ONE出身のYENAをそれぞれゲストに迎えて盛況のうちに幕を閉じた。こうしたステージは、言葉や国境を越えて音楽が届くことを実感する場だという。
「大袈裟ではなく、毎回ステージに立った瞬間にびっくりします。日本語で、自分の過ごす日常を歌っているので、そこと別の国にいる人の日常がつながるわけじゃないですか。だからすごく不思議な気持ちになるというか。来てくれるお客さんたちも、言葉は関係ないんだよ、私たち音楽でつながっているんだし、私たちはあなたのことが大好きなんだよって伝えようとしてくれている。
音楽のもとに、国境や海を越えて、好きなものを通して出会うことができて、ひとつの空間のなかでみんなで一緒に歌うことができるんだなっていう。そこに毎回感動します」
活躍の場はさらにグローバルに広がっている。25年にはスペインの国民的シンガーソングライター、パブロ・アルボランの楽曲「Perfectos Imperfectos」に客演。エモーショナルなメロディをスペイン語と日本語で歌った。ほかにも、YOASOBIのファンを公言するフランスのラッパー、オレールサンからの熱烈なオファーで楽曲「Plus rien」にもフィーチャリングで参加している。
「本当に貴重で、新鮮な体験でした。まったく違う音楽的なルーツをもつアーティストの方と、ひとつの楽曲のなかで混ざり合うというか、それぞれのかたちを残したままきれいに溶け合う音楽体験ってなかなかできることではないので、すごく面白かったです。
いろんなコラボレーションを通して、自分でも知らなかった歌声や武器になるような表現に出合えたり、想像もしなかった広がり方を経験できたりしたので。これからも、それぞれの音楽的なルーツを大事にしながら、そこに幾田りらならではのエッセンスをどれだけ加えられるか、挑戦していきたいという思いはあります」


