人工知能(AI)による人員代替の圧力を最も強く感じているのは若手や新人労働者だが、経験豊富な労働者はまったく問題なくやっている。実務における現場経験こそが、AIには再現できない資質なのかもしれない。新たな研究がそう示唆している。
スタンフォード大学による最新の研究では、AIによる広範な雇用代替は依然として確認されていないものの、新人労働者への悪影響は続いていることが示された。研究者らによると、若手労働者と(経験豊富な労働者との)雇用格差は、この1年で15%から19%へと拡大したという。
この結論は、エリック・ブリニョルフソン、バラット・チャンダー、ルユ・チェンの3氏が共同執筆し、1年前に発表された「炭鉱のカナリア?(Canaries in the Coal Mine?)」と題する研究の更新版だ。研究はADPの給与データと米労働統計局の雇用データに基づいている。格差の拡大は「離職の増加ではなく、若手労働者の採用抑制を通じて主に生じているようだ」と研究者らは付け加えている(論文全文はこちら)。
全体としては、すべての職種・年齢層を通じて「AIに関連する経済全体規模の広範な雇用代替は確認されていない」とブリニョルフソン氏らは指摘する。「ただし、AIの影響を受けやすい職業に就く若手労働者は、影響を受けにくい同世代に比べて次第に後れを取っている」。一方で、経験豊富な労働者に雇用喪失の兆しは見られなかったという。
研究者らは、労働者が持つ「形式知(明文化された知識)」と「暗黙知」の間に顕著な差異があることを発見した。「教育や教科書、書面化された手順を通じて教えることができる、公式で標準化され、文書化された知識である形式知に大きく依存する職種において、若手労働者の雇用が減少している」と指摘する。
「対照的に、実践やメンターシップ、実際の現場に繰り返し身を置くことで得られる暗黙知に大きく依存する職種では、経験豊富な労働者の雇用が増加している」
研究者らは、生成AIが「テキストなどのデジタル情報としてすでにコード化された知識を再現し、応用することに特に長けている一方で、経験に基づく知識は依然として再現が困難である」と結論づけている。
ただし、職種による格差の拡大がすべてAIのせいであるかは定かではない、と研究者らは注意を促している。「データだけでは、この格差が労働市場に影響を与える他の要因ではなく、生成AIによってどれほど引き起こされたかを確定することはできない」。研究者らは金利の変動、教育水準、リモートワークの傾向などの要因を調整した結果、今回の研究で観察された職種シフトにAIが寄与している可能性が高いと結論づけた。
それでも、この1年間で広く予測されていたような、AIによる雇用の「大崩壊(アポカリプス)」を示す証拠はまだない。「データは、AIの影響を最も強く受ける職種において、雇用成長が緩やかに減速している可能性を示唆している」とスタンフォード大学の研究者らは述べている。「ADPのサンプルにおける平均雇用者数は2022年11月から2026年6月の間に約6%増加したのに対し、影響を最も強く受ける上位5分の1の職種における雇用は約4%の増加にとどまった。これらの結果は、AIの影響を受ける職種において広範な雇用減少は見られないという最近の証拠と一致している。この全体的な安定性自体が有益な情報であり、経済全体でAIによる失業が発生しているという主張は、2026年6月までの給与データには現れていない」



