私が話をするほとんどの企業は、ソフトウェアの移行と同じ方法でAIの導入を進めている。ツールを調達し、アカウントを割り当て、研修セッションをスケジュールし、その後は利用状況のダッシュボードを監視して誰がログインしたかを確認する。6カ月後、ダッシュボードの数値は健全に見えるものの、ビジネスにおける意思決定の方法はほとんど何も変わっていない。
私はここ数年、AI製品の開発に携わってきたが、このやり方は完全に間違ったモデルであると確信するようになった。研修は、ツールに何ができるかを人々に教える。しかし、本当に重要なこと、すなわち「いつツールを信じるべきか」「いつツールに異議を唱えるべきか」「ツールの支援を得て下した意思決定をどうやって支持するか」を教えてくれることは滅多にない。研修でこれを身につけさせることはできない。それができるのは「リハーサル(実践練習)」だが、ほとんどの組織はそれを省いてしまっている。
「利用」と「判断」は異なる
数値データを見れば、このギャップを無視することは難しい。MITによる2025年の企業向けAIに関する調査では、企業における生成AIの試験導入の大部分が、最終的な業績に対して測定可能な影響をもたらしておらず、その障壁はモデルの品質ではなく、組織内部の学習ギャップであることが明らかになった。また、別の2026年の労働力に関する調査によると、現在大半のデジタルワーカーが日常的にAIを使用し、生産性の向上を実感しているものの、その結果として業績が大幅に向上したと報告している企業はごく一部にとどまる。高い導入率と、低いインパクト。
私自身、何年もの間、間違った指標を測定していたため、このギャップはよく理解できる。初期のころ、私は自社システムをどれだけの人が、どれだけの頻度で使用しているかを追跡していた。それは進歩のように感じられた。しかし、その数値は、ツールがない場合と比べて、より良い意思決定が行われているかどうかについては何も教えてくれなかった。ログイン回数を数えるのは簡単だ。しかし、判断力を測定することは容易ではない。そして、判断力こそが最も重要なのだ。
「リハーサル」が意味するもの
リハーサルとは、実際にリスクが生じる前に、現実的な条件下でフィードバックを受けながら行う練習のことだ。職場におけるAIの活用において、それは研修用の資料では決して学べないいくつかのスキルに集約される。
1. 調整された信頼:放置されると、人々は2つの極端な方向のいずれかに流れがちだ。一部の人は、モデルの回答が流暢で自信に満ちているように見えるため、その内容をそのまま受け入れてしまう。これは研究者が「オートメーション・バイアス(自動化偏向)」と呼ぶ、十分に立証されたパターンであり、誰も疑問を呈さなかったために、体裁の整った誤った回答がそのまま通ってしまう現象だ。もう一方は、ツールが最初に誤りを犯した時点で拒絶し、二度と使わなくなる。どの出力を検証し、どの出力を信頼すべきかを知るという、実用的な「中道」は、繰り返し練習を重ねることでしか身につかない。
2. より良い問いかけ:これらのシステムでは、得られるアウトプットの質は、入力するインプットの質に依存する。これは、プロンプトのガイドを一読するだけで身につくものではなく、試行錯誤し、失敗し、微調整を繰り返すことで体得できるスキルだ。
3. 説明可能性:AIを使って提案をまとめる場合、なぜその結果を信頼したのかを同僚や顧客に説明できなければならない。前述の労働力調査では、システムが優れたパフォーマンスを示すと検証を怠るようになるため、十分に説明できない成果物を提出する従業員が増えていることが明らかになった。しかし、説明できない意思決定は、真に自分自身のものとは言えない。
数年前、私は人間が手作業で行っていたプロセスをAIシステムに置き換えるチームを率いた。デモンストレーションの出来が良かったからといって、すぐに本番稼働させたわけではない。私たちは何カ月も、人間の判断と並行してシステムを走らせ、どこで意見が一致し、どこでズレが生じるかを観察した。そして、実際の基準に照らし合わせて信頼を獲得した段階で、初めて意思決定を委ねた。これがシステムレベルにおけるリハーサルの姿だ。個人にも、これと同様のプロセスが必要となる。
リーダーがリハーサルを省く理由と、省くべきではない理由
リハーサルは口にするのは簡単だが、予算を割くのは難しい。それは生産ではなく練習に時間を費やすという「摩擦」のように捉えられがちだ。また、失敗を見られることを恐れるような環境ではスキルを練習できないため、「心理的安全性」が求められる。さらに、利用状況のグラフには表れないため、経営陣が好むようなすっきりとした評価指標には馴染まない。前述のMITの研究でも、他社をリードしているのは、AIを実際のワークフローに組み込んで状況に応じて適応させている企業であり、単にチャットボットを導入してそれで終わりとしている企業ではないことが示されている。つまり、最も成功を収めている企業は、リハーサルを優先しているのだ。
この事実を踏まえ、アプローチを変える必要がある。私が実践して効果のあったいくつかの方法を紹介する。
1. アカウントの有効化ではなく、意思決定の質を測定する:2つか3つの実際のワークフローを選び、ログイン数が増えているかではなく、そこでの人々の選択が向上しているかを評価する。
2. 並行運用の練習環境を作る:すでに結果が判明している過去の事例に対してチームにAIを使わせ、AIの判断と自分たちの判断を比較し、そのギャップについて話し合わせる。リスクが低く、リアルなフィードバックが得られるこの方法は、私自身がシステムを信頼することを学んだプロセスそのものだ。
3. 「信頼した理由を説明する」ことを常識にする:もし、あるアウトプットを信じた理由を説明できないのであれば、その人はそれを頼りにできるほど十分にリハーサルを重ねていないということだ。
4. 広範な展開を急がない:10のワークフローに浅く導入するよりも、価値の高い1つのワークフローで深く使いこなす方が勝る。
このテクノロジーを活用して最も大きな成功を収める企業は、従業員が繰り返し練習を重ね、実践を通じて、いつ機械の意見に耳を傾けるべきか、いつそうすべきでないかを学んだ企業だろう。ツールは導入初日から使える状態にある。しかし、それを使いこなすための判断力は、リハーサルを通じて養われなければならない。その作業は、研修セッションよりも地道で、時間がかかるものだ。そしてこれこそが、こうした取り組みのすべてが報われるかどうかを決定づける要因なのである。



