騒動が起きたタイミングも見逃せない
一連の騒動は、韓国社会に思わぬ現象を引き起こした。自分の姓と本貫(氏族のルーツ)を入力し、一族に独立運動家や親日反民族行為者がいないかを調べる、いわば「親日派スキャナー」がネット上で流行しているのだ。
京郷新聞などの報道によれば、多くの利用者が「うちの家系にも独立運動家と親日派の両方がいた」といった投稿を相次いで行っており、単なる芸能ゴシップを超え、一般市民が自らのルーツと歴史を見つめ直すきっかけになっている。
こうした動きの背景には、韓国において「親日人名辞典」という民間団体(民族問題研究所)が編纂した資料が広く社会に浸透していることがある。
同辞典は韓国併合期に日本統治へ積極的に協力した人物の氏名を収録したもので、政府の公式資料ではないものの、今回のような芸能人の家族史をめぐる論争において、事実関係を検証するための重要な参照先として繰り返し引用されている。
芸能人という「公人」の家族史が明らかになるたびに、一般市民が自らの家系にも目を向けるという循環が生まれている点は、単なる一過性の炎上とは異なる社会現象としても注目される。
また、この騒動が起きたタイミングが、8月15日の光復節(解放記念日)81周年と重なった点も見逃せない。
イ・ジェミョン(李在明)大統領は光復節の記念式典で、「親日反民族行為者が不当に蓄積した財産を徹底的に調査・還収し、歴史に対する確実な責任を問う」と演説し、独立有功者とその遺族への支援拡充も約束した。
背景には、今年6月に公布された「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」がある。2006年から2010年まで活動した第一次の親日財産調査委員会は、親日派168人が保有していた2359筆の土地を国家に帰属させ、すでに財産を売却していた子孫24人についても別途「親日財産」であることの確認決定を行った。
しかし、2010年の活動終了後は、新たに発覚する親日財産を体系的に調査・還収するための専門機関が存在しない「制度的空白」が16年間続いていた。
新たな特別法の最大の特徴は、財産そのものだけでなく、すでに売却・処分された財産についても、その対価まで追跡・還収できるようにした点にある。親日財産を巧妙に現金化・隠匿しようとする動きを防ぐための措置だ。
韓国政府の法務部のチョン・ソンホ(鄭成湖)長官は、光復節の前日、自身のSNSで「第2期親日財産調査委員会が発足すれば、少なくとも325億ウォン(約33億円)以上の親日財産を還収できる見込みだ」とし、「還収された財産は独立有功者とその子孫の福祉のために使う。国のためにすべてを差し出した人が尊重され、国を売って富と名誉を築いた者の不当な取り分が本来の持ち主に戻る、正義にかなった国をつくらなければならない」と述べた。
法務部は6月22日に調査委員会設立準備団を発足させており、12月3日には第2期調査委員会が16年ぶりに本格的に再稼働する予定だ。


