タイタンの特徴
タイタンの奇妙な特徴は、窒素を豊富に含む濃密な大気だけではない。地球が受ける太陽光の量のわずか1%しか届かないため、太陽光発電は利用できない。ドラゴンフライが原子力電源を採用しているのは、そのためだ。重力は地球のわずか14%にすぎず、飛行は比較的容易である一方、それ以外の条件は過酷だ。ドラゴンフライは、マイナス179度に迫る低温やメタンの降雨、渦を巻く炭化水素の固体微粒子などに耐えられるように設計されている。
ドラゴンフライは惑星科学を書き換えるか?
タイタン到着は2034年になる予定のドラゴンフライは、地球以外の惑星の衛星を探索する史上初の回転翼機となる。タイタンの濃密な大気と弱い重力のおかげで、ドラゴンフライは科学的調査の対象地点から別の対象地点へと何kmにもわたって飛行移動できる。古代の衝突クレーターや凍結した砂丘、液体メタンの川や湖が作り出した地形などを詳しく調査する予定だ。
この調査により、生命が誕生する以前の初期の地球に存在した状態と類似するような、複雑な有機化学反応が見つかることを、科学者は期待している。調査の過程では、タイタンのメタンによる気象循環を詳しく調べるとともに、宇宙でどのようにして生命が生まれるかに関する手がかりをタイタンが提供する可能性があるかどうかを評価する。
ホイヘンスが見たタイタン
人類の探査機がタイタンを訪れるのは、ドラゴンフライが初めてではない。2005年1月、NASAの無人探査機カッシーニに搭載されて土星に到達した欧州宇宙機関(ESA)の着陸機ホイヘンスが、謎めいた衛星タイタンに着陸した史上初で唯一の探査機となった。
ホイヘンスはタイタンを覆うオレンジ色の濃密な大気の中を2時間半かけて降下した。その間、表面の画像の撮影に初めて成功し、河川の跡や古代の海岸線など、水ではなく液体メタンによって形成された地形が存在していることを明らかにした。ホイヘンスは最終的に、丸みを帯びた水氷の塊が転がる表面に着陸した。こうして、太陽系で最も地球に似ているが、それでも異質の天体の1つを垣間見る類まれな機会を人類にもたらした。


