地球に似た大気を持つ、太陽系で唯一の衛星の表面を探査する、NASAの画期的なミッションが打ち上げに向けてまた一歩前進した。NASAの進める最も野心的な惑星探査ミッションの1つ、土星最大の衛星タイタンの探査を目的とするドローン型回転翼機「ドラゴンフライ(Dragonfly)」のミッションが、技術者チームによる重要な構造試験を完了し、本格的な機体の統合作業を開始したことにより、2028年7月に予定されている打ち上げにまた一歩近づいた。
重要な事実
土星最大の衛星タイタンは、天候と液体が表面に見られる、太陽系で地球を除いて唯一の天体だ。大気を持ち、雨が降り、湖や海や海岸線、渓谷、山や尾根、メサ(卓状台地)、砂丘などの地形が広がる。
ドラゴンフライは2028年7月5日~25日の打ち上げ可能期間内に、米フロリダ州のケネディ宇宙センターからスペースXの大型ロケット、ファルコンヘビーで打ち上げられる。タイタンへは2034年に到着する予定だ。
タイタンの窒素に富む大気の密度は地球の約4倍であるため、乗用車ほどの大きさがある無人探査機ドラゴンフライが8基の回転翼を使って有望な着陸地点の間を容易に飛行できる。タイタンの1日(約16地球日)ごとに移動し、サンプルの収集と分析を行う計画だ。火星ヘリコプターのインジェニュイティが技術実証機だったのに対し、動力飛行する完全制御の飛行体が地球以外の天体を飛行して探査活動を行うのは今回が史上初となる。
約3年4か月におよぶミッション期間中に、ドラゴンフライが探索するのは生命そのものの痕跡ではなく、タイタンと地球の両方で起きている前生物的な化学反応だ。前生物的とは時系列で、地球で生命が誕生する以前に起きていた化学反応のことだ。
前倒しで進むドラゴンフライの製造工程
米ジョンズ・ホプキンス応用物理学研究所(APL)の技術者チームは最近、1か月間の構造試験を完了し、ドラゴンフライの全長約4mの胴体を予定より早く次の工程に引き渡した。着陸用スキッド(ソリ型の脚部)、8基の回転翼を支えるアーム、原子力電源システムの格納容器などを備えた特徴的な機体構造は、ゆくゆくはタイタンの濃いオレンジ色の空を舞う飛行探査機の面影がすでにある。
APLでドラゴンフライの熱機械系の統合作業と試験を統括するハンター・リーリングは「着陸機が設計されたとおりに現実のものになっていくのを目の当たりにできて、本当に最高だった」と話す。
構造試験段階を完了した技術者チームは現在、電気配線や飛行用ハードウェア、各種搭載システムを機体に組み込む統合作業を開始している。今後数か月かけて航空電子機器や科学観測機器、断熱材などを取り付けていくことで、骨組みだけの機体が、外太陽系に向かう「空飛ぶ科学実験室」へと徐々に変貌していく。リーリングは「ここからは、電子装置、測定機器、配線、断熱材などの、ミッションを遂行できるようにするあらゆる要素を骨組みに装着していく作業になる」として「すべては、ドラゴンフライを打ち上げ準備万端にするためのことだ」と説明した。



