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北米

2026.08.25 09:04

国境で始まるAI軍拡競争 米国税関、輸入コンテナを「尋問」する時代へ

Adobe Stock

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米国税関・国境警備局(CBP)の主な役割はかつて、国に出入りするモノの流れを滞らせないことだった。現政権に至るまで、米国の歴史の大半においてそうだった。つい6月にも、トランプ大統領は「税関執行の強化」と題する大統領令に署名した。これにより同局は、到着貨物を後押しする立場から、違法な輸入慣行を取り締まる立場へと軸足を移しつつある。

AIはこの大きな転換を支えている。とはいえ、人工知能が他の多くの分野と同じようにこの領域を揺るがす以前から、インターネットを含む現代のデジタル技術は、国際貨物の物理的な輸送に変化を迫っていた。

ロサンゼルスを拠点とする通商弁護士で、Roberts & Kehagiaras LLPのパートナーであるキャメロン・W・ロバーツは、この分野のベテランであり、過去数十年にわたってその仕組みを見つめてきた人物だ。私たちがどこへ向かうのかを理解するには、まずどこから来たのかを振り返る必要がある。ロバーツがよく覚えていることの1つが、かつて国際輸送に必要だった山のような書類である。

「かつて米国の港に到着するすべての輸送コンテナには、信じがたいほど分厚い書類の束が付いていた」と同氏は説明する。電子メールやコンピュータ処理装置が普及する前、人々はアナログのタイプライターで貨物の詳細を記録していた。港がそれを打ち直し、次に船会社が、さらにトラック運送会社が、そして通関業者が打ち直した。絶え間なく流入する貨物について、数字が正しく対応し、実際に整合していることを確認するために、このシステムは大量の紙を必要とした。

2026年の視点で見ると、いまでは時代遅れとなったこのプロセスは、どうにか機能していたとはいえ、途方もない作業に見える。しかもそれは何年も何年も続いた。絶えず行き交う船と揺れるクレーンの間で、商取引は繁栄した。一方で、はるかにうまくいかなかったのが、必要とされる膨大な文書処理だった。無数の出荷ごとに、何百万人もの人々が情報を入力し、また入力し直さなければならなかった。

「小売店が海外の工場からパティオ家具を注文したとき、かつて何が起きていたかを考えてみてほしい」とロバーツは言う。「外国の港から米国の荷受け場まで、それらの椅子をすべて運ぶには、6社の異なる企業が関わることもあった。各社が紙の請求書を送ってくる。つまり誰かが6通の封筒を開け、約束された内容と6枚の請求書を照合し、そのうえで6枚の小切手を切る必要があった」

AIのおかげで、もはやそれは必要ない。

紙の証跡から人工知能へ

今日では、どんな人間にも追いつけない速度で動くスマートな機械がすべての書類を確認し、各項目を想定コストと照合する。例えば、トラック輸送1回の料金として100ドル(約1万円)で合意しており、請求書にも同じ金額が記載されていれば、システムは自動的に資金を払い出し、商取引の流れを円滑にする。その結果、煩雑な人的介入を経ることなく、ベンダーはより早く支払いを受けられる。

Just Down The StreetのCEOであり、Verifiable.Trade Foundationのシニア専門家諮問グループのメンバーでもあるシモーナ・フィリップ・ラチェクは、そのスピードは全体像の一部にすぎないと見ている。「すでにシステムの内側にいる企業にとって、貿易はより速くなっている。真の問いは、ほかに誰がその中に入れるのかということだ。現在、貿易は関係者やデジタルプラットフォームの間で分断されたままである。信頼と相互運用性がなければ、AIはその分断を自動化してしまうリスクがある。今後の課題は、貿易のデジタル化によって、中小企業にとっても国際商取引をより安く、より速く、より簡単にすることだ。もしそれができなければ、私たちは最大の機会を逃したことになる」

AIが国境検査官になるとき

表面的には、これはロボットが人々の仕事から雑然とした作業を取り除き、プラスサムの形で生産性を高めている話に聞こえる。しかし、それがすべてではない。その理由を理解するには、国際輸送に対する米国の姿勢が変化していることを振り返る必要がある。連邦政府もAIの活用に前向きだが、その目的は別にある。不正輸入の取り締まりである。

つい先月、CBPは輸入業者に注意を促した。Fresh Produce Association of the Americasによると、CBPは「『税関執行の強化』大統領令を受けて、自動商業環境(Automated Commercial Environment:ACE)において、1年以上エントリー申告に使用されておらず、かつ通関後の未処理取引がない輸入者記録(IOR)番号は無効化される可能性があることを、貿易関係者に改めて周知している」という。

強制労働への新たな取り締まり

現在、強制労働はCBPの主要な懸念事項の1つであり、AIの照準のど真ん中に置かれている。綿花生産を考えてみよう。綿を摘むところから、糸に紡ぎ、布に織り、ズボンや靴下に縫製するまで、多くの工程が関わる。その間、さまざまな国の入り組んだベンダー網を通過する。ウイグル族による強制労働が関与していたかどうかを、いったい誰が知り得るのか。

人間には、そのすべてのパズルのピースを組み合わせることはできないかもしれない。だが、AIにはますますそれが可能になっている。最近、CBPはサプライチェーンAI企業のExigerに対し、違法な積み替えを大規模に検知するための数百万ドル規模の契約を授与した。同社のサイトによれば、「数十億ドル相当の国際貿易が、米国の制限を回避しようとする違法な積み替え経路を通じて移動している……Exigerはこの任務を支援できることを誇りに思う。世界最大の独自サプライチェーンデータベースと、市場で最も高度なAIを投入する」という。

ロバーツは、Exigerが導入しているような人工知能アルゴリズムは絶対確実ではないと慎重に指摘する。むしろそれらは多くの場合、ある貨物が「汚染されている可能性が高いか、そうでない可能性が高いか」を示すスコアを出す。それだけで、米国税関が強硬措置に踏み切るには十分だ。不審なスコアは、照会、貨物の留め置き、罰金、あるいはさらに懲罰的な措置につながり得る。

視野を広げると、強制労働が通商政策上の懸念事項であることは意外に見えるかもしれない。だが、詳しく見れば合理的な説明が浮かび上がる。「これはワシントンの誰もが同意する唯一の通商問題だ」とロバーツは言う。「労働組合は、無給の労働者と競争することを嫌う。米国の製造業者も同じだし、人権擁護団体に説明は不要だ」

これらの利害関係者が、それぞれ固有の理由からこの慣行に反対して足並みをそろえている以上、連邦政府がそれを阻止する対抗手段としてAIを振るうのは理にかなっている。

国境で始まるAI軍拡競争

しかし、この話にはもう1つの要素があり、それにもAIが関わっている。そうした不正な輸入業者たちもまた、AIを自分たちに役立つ道具と見なしているのだ。AIが貨物処理を高速化し、不正行為を阻む一方で、犯罪者がシステムを出し抜く手助けもしている。犯罪者がこうした技術を活用する方法の1つが経路変更である。同様に、詐欺師はAIを使って船荷証券を偽造し、輸送パターンをシミュレートすることで、製品の真の原産地を曖昧にしている。

AIの能力が高まるにつれ、現在のいたちごっこはますます複雑になると予想される。「AIは近いうちに、証拠そのものを捏造できるようになるかもしれない」とロバーツは示唆する。「もっともらしい紙の証跡まで備えた偽のサプライヤーネットワークを想像してほしい。政府の追跡ソフトウェアを欺き、商品が実際には一度も触れていない場所から来たと信じ込ませるために設計されたものだ」

今後、人工知能は国際商取引の迅速化を続けるだけでなく、防御的な役割も果たすと考えるのが妥当だ。かつて人間が作成、確認、あるいは防御するのに膨大な時間を要していたことが、数秒で行われるようになる。AIによって処理される貨物1つひとつが、経済を、そして実のところ私たちの知る生活そのものを変えていくのである。

forbes.com 原文

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