経営・戦略

2026.08.25 08:22

準備不足の後継者指名がもたらす1兆ドル(約159兆円)の損失

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後継者計画(サクセッションプラン)は、次に誰が控えているかを教えてくれるかもしれない。しかし、その人物の準備が整っているかどうかまでは教えてくれない。あまりに多くのCEOが、高い潜在能力を持つリーダーを特定することと、実際に彼らを育成することを混同している。組織図の枠内に誰かの名前を書き込むことは、育成ではない。それは、見栄えを良くしただけの「願望」にすぎない。キーパーソンである役員が突然去り、後任となるはずだった人物の準備がまったくできていないことに直面した時になって初めて、その違いに気づくような事態は避けるべきだ。

準備不足の後継者を指名することによる「1兆ドル(約159兆円)」の損失

書面上は、後継者計画のない競合他社よりも自社の方が優れているように見えるかもしれない。しかし、その根拠のない安心感は、最終的に想像を絶する代償を伴うことになる。

『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に掲載された研究「不適切な後継者計画の高い代償(The High Cost of Poor Succession Planning)」によると、S&P 1500企業におけるCEOや経営幹部の不適切な交代劇により、毎年1兆ドル(約159兆円)近い市場価値が失われているという。この1兆ドル(約159兆円)もの損失は、組織図に名前が書かれていないからではなく、いざという時に企業レベルの複雑な課題に対処できるよう、その名前の主たちが育成されていなかったために発生している。

「ポテンシャル」対「即戦力」:リーダーが実際に任務を遂行できるかを見極める方法

静的な後継者リストは、見習いシェフに複雑なレシピ本を手渡し、それだけでロイヤルファミリーに料理を振る舞う準備ができたと思い込むようなものだ。シェフが実際にコンロに火をつけたり、戦場のような厨房のピークタイムを切り盛りしたりした経験がなければ、必要な材料を書面上で知っていることなど何の意味もない。

「即戦力としての準備(レディネス)」には、仮定ではなく証拠が必要だ。現在の役職で成果を上げていることは重要な指標ではあるが、その人物が次の役職に昇進する準備ができていることや、より高いレベルの役割に真に適していることを保証するものではない。

準備が整っているかどうかは、実務を通じて検証されなければならない。後継者候補が次のレベルでリーダーシップを発揮できるかを評価する最も確実な方法は、以下のような能力を求められる「ストレッチ・アサインメント(実力以上の困難な課題)」を与え、そのパフォーマンスを観察することだ。

  • 曖昧な状況を切り抜け、より重要度の高い意思決定を行うこと
  • 直接的な権限が及ばない人々に対して影響力を及ぼすこと
  • より広範で部門横断的な責任を管理すること
  • 経営陣に求められる視野と判断力を持って行動すること

これらの能力を実務で証明するまでは、後継者としての準備が整っているとは言えない。

「もし明日この人物が必要になったとして、この仕事を効果的にこなせるだろうか」と自問してみてほしい。一瞬でも考え込んでしまったなら、その人物は将来有望な候補者ではあるが、まだ育成が必要な段階にあるということだ。

ポストが空く前に後継者を育成する方法

ストレッチ・アサインメントに加え、以下の取り組みを検討するとよい。

後継者候補を企業レベルの課題に直面させ、組織全体とどのように関わるかを観察する。彼らはチームをまとめ上げて迅速に課題を解決しているだろうか。それとも、厨房でのゴードン・ラムゼイのように、命令を怒鳴り散らし、恐怖によって管理しているだろうか。

経営幹部と接する機会を増やし、後継者候補として指名された人々が重要な意思決定が行われる場に同席できるようにする。各候補者を、直接の評価ライン外のシニアリーダーとペアにすることで、組織を見る視野を広げさせる。

リスク軽減ツールとしてコーチングを活用する。リーダーがトップの座に就くよう打診された段階になって初めて、そのリーダーが協調性に欠けていたり、エグゼクティブとしての存在感(プレゼンス)が不足していたりすることに気づくようでは遅すぎる。今すぐエグゼクティブ・コーチングを導入し、多大なコストを伴う交代の失敗につながるような問題が生じる前に、盲点を解消しておくべきだ。

後継者準備テスト:すべての重要な役職における4つの質問

重要となるすべての役職において、次の質問を投げかけてみてほしい。

1. 誰を後継者として特定したか。
2. 新しい役職において、現在の業務では行っていないが、やってもらう必要があることは何か。
3. 具体的に何に対する準備がまだできていないか。
4. それに対して、私たちは「今」何をしているか。

その上で、後継者計画の組織図に名前が載っている一人ひとりに対して、カスタマイズされた育成計画を作成する。

後継者の準備ができていないと判明する最悪のタイミングは、まさにその人物に就任してもらう必要がある瞬間だ。

しかし、そのような事態を避けることは十分に可能だ。

規律ある計画策定と、ポストが空く「前」にリーダーを育成する育成計画があれば、キープレイヤーが去った後に生じる混乱、不確実性、そして動揺を回避できる。リーダーシップの危機管理に追われる代わりに、控えている人材に確信を持つことができ、夕食の時間までに帰宅することさえできるようになるだろう。

forbes.com 原文

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