副首相は「ヤマルLNGについて、基本的な疑問のすべてが対応済みだ。すべての基本条件について合意されており、調印は12月に行われる見通しだ」と述べた。また同プロジェクトの資金調達と建設日時についての協議が現在進められているとした。16日の発表は、プーチン大統領の盟友でNovatekの主要オーナーの1人である大富豪ゲンナジー・ティムチェンコ氏の11月7日付の声明に続いた。同氏は、NovatekがヤマルLNGプロジェクトについて100億ドル超を確保するため複数の中国銀行と協議を行っていると表明していた。
ティムチェンコ氏は「制裁を受けている状況を考慮し、われわれは中国銀行と緊密に協力する。交渉は本格化しており、あと必要なのは条件への合意だ」と説明した。
同プロジェクトの資金調達の問題は、ロシアによる2014年初めのウクライナ侵攻をめぐりロシアの石油・天然ガスセクターに対して行った米国主導の制裁が原因だ。また6月に欧州連合(EU)がロシアに対する制裁を来年1月3日まで延長した。当時メディアは「ウクライナ問題解決に向けロシア政府に圧力をかけ続ける」と報じた。
制裁でNovatekは、資本市場からドルやその他の西側通貨で長期的な融資を調達できなくなり、同社とフランス石油大手Total や中国国有エネルギー企業、中国石油天然ガス集団(CNPC)など提携外国企業は、想定よりも多額の資金を中国銀行に求めなくてはならない状況だ。ティムチェンコ氏が述べたように、100億ドル近くの調達を余儀なくされているだけでなく、これまでプロジェクトは必要とされている残りの150億ドル強の確保もできていない。
プロジェクトは以前にも中国からの資金調達を検討したが、この努力は問題に満ちていた。先月、ロイターは銀行関係者2人の話として、オーナーらはコスト高の中国ローンを拒絶したことを受け、ロシアのヤマルLNGプラント向けの資金調達努力が行き詰まったと報じた。
同プロジェクトを進めるための必要資金が得られたとしても、同プロジェクトが最初に提案された時とは全く異なった状況のLNG市場に参入することになる。LNGの供給過剰は2020年まで続くと予想されており、既にだぶついている供給量が、2010年代末までにオーストラリア、米国、モザンビークなどでの新規プロジェクトが操業を始めるのに伴い、供給過剰に拍車が掛かることになる。
ただロシアはこのプロジェクトを推し進めるしかほかに選択肢がほとんどない。世界の原油価格が14年6月半ばから約60%下落し、天然ガス価格も急落している状況で、ロシア政府はどうしても資金が必要だ。もう1つの疑問は、市場はさらにガスが必要かどうかだ。人生の大半の問題と同様、その答えは質問する相手によるだろう。ヤマルLNGプロジェクトは年間165万トンの生産能力を持つ。第1段階の開始は17年の予定。