リーダーシップ

2026.08.25 07:32

共感力の高いチームを育てる4つの戦略

stock.adobe.com

stock.adobe.com

共感(エンパシー)とは、他者の視点を想像し、理解し、それに寄り添う力である。リーダーがチームとつながり、動機づけを行うために欠かせないスキルだ。しかし、共感する力は誰にとっても自然に身につくものではない。ではリーダーや組織はどうすれば、より共感力の高いチームを育てられるのだろうか。

1. 傾聴し、相手の立場に立ち、弱さを見せる

リーダーは組織全体の空気をつくる存在であるため、自らの共感力を磨くことに投資することが不可欠だ。「共感型リーダーシップはしばしば『優しさ』や『情緒的な弱さ』と誤解されます」と語るのは、英レスター大学のStoneygate Centre for Empathic Healthcareのディレクターを務めるジェレミー・ハウィック教授だ。「実際には、組織が育成できる中で最も実用的なリーダーシップスキルの一つかもしれません」

ハウィック氏は医療分野を例に挙げ、リーダーが耳を傾けないことは、患者の健康や福祉にとって致命的な結果をもたらしかねないと指摘する。「医療分野に限らず、共感力のある組織は、そうでない組織よりも一貫して高い成果をあげています」と同氏は付け加える。「サティア・ナデラがマイクロソフトで共感を明確に重視した時期は、同社の劇的な文化的転換と驚異的な成長と重なっています」

レスター大学が世界各地の医療リーダー21人を対象に行った研究は、共感力を育てるためのシンプルな原則をいくつか示している。

  • まず聴き、最後に話す。 リーダーはつい答えを急いで示そうとするが、人はまず自分の声を聞いてもらえたと感じたときに、よりよい成果を発揮する。
  • 現場を歩く。 定期的に現場を歩くリーダーは信頼を築き、問題を早期に察知し、スタッフのウェルビーイングを高める。
  • 弱さを見せる。 弱さを見せることは権威を損なうどころか、集団としての問題解決力を強化する。

「共感型リーダーシップとは、すべての答えを持っていることではありません」とハウィック氏は語る。「人々が安心して自分の答えを出せる環境をつくることなのです」

2. 個人に焦点を当てる

「共感とは、業績や目標、結果ばかりではなく、人そのものに目を向けようとするリーダーが育んでいくものです」と語るのは、スイスのCésar Ritz Collegesの准教授、ソフィア・ロドリゲス氏だ。

ロドリゲス氏は、共感が顧客のニーズに応える上で不可欠なホスピタリティ業界を例に挙げる。「優れたホスピタリティ・プロフェッショナルは、人は言葉そのものよりも、行動、口調、ためらい、沈黙を通じて多くを伝えているということを学びます」と同氏は語る。「他業界のリーダーもここから学べることがあると思います。共感は単に親切であることや相手に同調することではありません。個々の状況を理解する感受性を磨くことなのです」

ラグジュアリー・ホスピタリティは、現代のリーダーシップにとってますます重要となる別のことも教えてくれるとロドリゲス氏は付け加える。それは「パーソナライゼーションが重要である」ということだ。「同じ手法が、顧客にせよスタッフにせよ、すべての人にうまく機能するわけではありません」とロドリゲス氏は語る。「優れたリーダーは、相手が導きを必要としているとき、自律を必要としているとき、承認を必要としているとき、そして単に自分の声を聞いてほしいと感じているときを、それぞれ見分けることができるのです」

3. 世代を超えたチームを育てる

研究によれば、人は年齢を重ねるにつれて共感力が高まる。年長者の共感力を活かす方法のひとつは、意図的に年齢構成が多様な、世代混合型のチームを編成することだと、英グラスゴー大学アダム・スミス・ビジネススクールの学部長、ウェンディ・ロレット教授は提案する。「これは、人生における多くの困難を経験してきたことに伴う共感力を活かせるだけでなく、より若い世代の同僚が、自分自身の人生やリーダーシップに対して、より共感的な姿勢を身につけるきっかけにもなります」とロレット氏は語る。

ロレット氏はまた、より共感的なリーダーシップと文化を育むために、対面での勤務も推奨する。「共感は間違いなく、インフォーマルな場で相手を知ることによって強化されます」と同氏は語る。「その人の全体像や、より広い人生観、そして志向がどのように仕事への態度や行動に影響しているかを聞くことが大切です。そうした親しみは、同僚同士が主に画面越しにやり取りしているだけでは築きにくいものです。信頼と心理的安全性の風土を醸成することは、共感型リーダーシップと密接に絡み合っており、より良い健康とウェルビーイングの成果を支える力となります」

人工知能(AI)の台頭を踏まえ、ロレット氏はAIツールが用いる言葉遣いを模倣することについてリーダーに警鐘を鳴らす。「多くのプラットフォームの一見共感的な口調に騙されてはいけません」と同氏は語る。「AIは真の共感を提供することはできません。お世辞を共感と取り違えることは、SNSで見られるエコーチェンバー現象を助長するリスクがあるだけです。真に共感的なリーダーは、常に同意するわけではありません。むしろ、相手に問いかけ、優しく揺さぶり、導くのです」

4. 共感的な行動に報いる

「従業員がマネジャーを公平で自分たちのニーズに配慮していると感じるとき、努力と生産性は高まります」と語るのは、イタリアのボッコーニ大学でダイバーシティ、インクルージョン、サステナビリティ担当学部長を務め、経済学の教授でもあるパオラ・プロフェタ氏だ。「同様に、効果的なコミュニケーションやピープル・マネジメントなど、従業員の視点を理解するマネジメント手法は、企業の生産性の高さと強く関連しています。こうした行動は、一般に共感と呼ばれるものと非常に近いのです」

プロフェタ氏は、共感がしばしば「女性的な特性」とみなされていることを指摘し、その裏付けとなる研究もあると語る。「その研究では、女性は平均してより向社会的な志向と利他性を示すことが示されています」。これは、協力や従業員のウェルビーイングを重視するリーダーシップ行動につながり、それが従業員エンゲージメントの向上や離職率の低下を通じて組織にも恩恵をもたらすと同氏は説明する。

とはいえ、これらの特性は固定的なものではない。「選好や行動は、インセンティブ、規範、制度によって形作られます」とプロフェタ氏は主張する。「組織が純粋に競争的あるいは階層的な行動に報いるならば、共感は特に男性リーダーによって十分に発揮されないかもしれません。しかし、企業が協力、フィードバック、従業員エンゲージメントを重視するインセンティブを設計すれば、共感的な行動はより広く学ばれ、採用されていくのです」

シニア・リーダーシップにおける女性の比率を高めることは、共感的で人間中心のマネジメントを一般化するのに役立つとプロフェタ氏は示唆する。だが、より広範な影響が生まれるかどうかは、企業がこれらの行動をインセンティブ構造に組み込むかどうかにかかっていると同氏は付け加える。「究極的には、共感がジェンダーとは独立して体系的に奨励されたときに、組織の資産となるのです」と同氏は語る。

チームの共感力を育てる

共感スキルの構築は、個人レベルでも組織レベルでも、短期間で達成できるものではない。しかし、これらのスキルへの投資は、時間をかけて確実にリターンをもたらす。ロドリゲス氏は、組織がよりデジタル化・自動化されるにつれ、共感はテクノロジーに代替されえない数少ないリーダーシップスキルの一つになるかもしれないと強調する。同氏はこう語る。「人は、リーダーをその戦略だけで記憶することはめったにありません。人々が覚えているのは、そのリーダーが自分にどう感じさせたか、なのです」

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事