私がこれまでに受けた最高の褒め言葉は、ある友人が私を「常に好奇心旺盛だ」と評してくれたことだ。
エレノア・ルーズベルトは、興味と驚きの念を持って世界にアプローチすることの価値をよく理解していた。彼女はかつて、こう語っている。「子供が生まれたとき、母親が妖精の代母(フェアリー・ゴッドマザー)に最も役立つ贈り物を授けてくれるよう頼めるとしたら、その贈り物は好奇心であるべきだ」
好奇心とは、世界をあるがままに受動的に受け入れることを拒むことだ。むしろ、世界と能動的に関わること、つまり、もっと知りたい、もっと見たい、もっと理解したいという欲求を必要とする。幼い子供と時間を過ごしたことがある人なら、「なぜ……」で始まる、終わりのないように思える質問攻めに立ち向かうのにどれほどの忍耐力が必要かを知っているだろう。研究によると、乳幼児期や児童期の好奇心は、知識獲得の動機付け、パフォーマンスの向上、脳の学習システムの活性化など、いくつかの重要な機能を果たしている。
より深く掘り下げ、無数の謎を解き明かしたいという熱意は、私が共に仕事をする機会に恵まれた多くの成功した起業家たちにも共通する重要な特徴であることに私は気づいた。彼らは、受け入れるのではなく問いを立てることで、また受容ではなく好奇心の姿勢を抱くことで、世界に対する革新的なアプローチを常に生み出してきたリーダーや創業者たちだ。好奇心は、新しいビジネスや製品を立ち上げようとする彼らの原動力の出発点である。好奇心はまた、適応力、実験精神、革新的思考、粘り強さなど、起業家に求められる他の多くの必要な資質の核心でもある。
起業家は、未知の領域に踏み込み、新しい何かを始める能力を備えている。私はこれまでのキャリアでいくつかのヘルスケア・ベンチャーの立ち上げを支援してきたが、その都度、これまでの「実績を上げた者(アチーバー)」から「初心者(ビギナー)」へと移行しなければならなかった。
初心(ビギナーズマインド)
禅においては、私たちが育もうとする重要なマインドセットの一つに「初心(しょしん)」というものがある。これは「初(はじめて)」と「心(こころ)」を組み合わせた言葉だ。「初心」は英語で「beginner's mind」と訳され、初心を実践することは、そのマインドセットを育み、子供の頃にはごく自然に持っていた好奇心を呼び起こし、私たちの取り組みに熱意とオープンさをもたらすための誘いとなる。これは、先入観や、あるテーマに関する「専門家」としての既成の知識から自ら進んで距離を置き、初心者の新鮮な目でそれを見ることを意図的に選択することを意味する。
ビジネスの世界において、これは独自の課題を生み出す。私たちは過去の成功や進歩を土台にして、不必要なステップの繰り返しを避けたいと考える。何カ月も、あるいは何年もかけて集めた情報を使って意思決定をし、問題を解決しようとする傾向が自然と働くのだ。
『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣』(原題:Atomic Habits)の著者であるジェームズ・クリアーは、これを「専門知識に伴う危険」と表現している。クリアーの考えでは、私たちはすでに知っていることを裏付ける情報をますます求めるようになる。つまり、新しい情報ではなく、自分の考えを裏付けてくれる情報を探し求めてしまうのだ。
もちろん、起業家にはある程度の裏付け情報が必要だ。市場規模や顧客の意図、需要を示すためにそれらは欠かせない。彼らはバリュープロポジションを洗練させ、リソースの活用を最適化するためにこうしたデータを必要とする。では、この真に役立つ基礎的な枠組みを活用しながら、同時に初心(ビギナーズマインド)を築くにはどうすればよいのだろうか。
初心を育むということは、裏付けとなる情報を無視したり見落としたりすることではない。そうではなく、その知識の範囲を認識しつつ、まだ分かっていないことのためのスペースを確保しておくことを意味する。言い換えれば、収集できたデータによって、製品やビジネスの市場について90%の確実性が得られている場合、まだ分かっていない10%に焦点を当てることが不可欠なのだ。
起業における初心(ビギナーズマインド)は、耳を傾けることと観察することから始まる。周囲の議論が白熱したとき、私が最も大きな影響力を発揮できたのは、事実や数値を示して自説を主張したときではなく、静かに耳を傾け、相手とのやり取りを「それは間違っている」ではなく、単に「それは興味深い」と捉えることで学ぼうとしたときだった。これは非常に興味深いパラドックスだ。知れば知るほど、自分の専門知識のギャップを特定し、型破りな解決策を見つけるために、細心の注意を払う必要が生じるのである。
「初心」の素晴らしさは、先入観から自分を解き放ち、物事を違った視点で見たいという深い意欲を呼び起こす点にある。どれほど経験豊富な起業家であっても、適切なマインドセットは「初心」から始まるのである。



