2026.08.24 17:19

観光税はもう古い? 欧州で広がるサステナブルな旅行者への「特典」

stock.adobe.com

stock.adobe.com

オーバーツーリズム対策として、観光税は古くから導入されてきた。今年、ベネチアは議論を呼びながらも、日帰り観光客に対する手数料の徴収を導入した。この制度は2026年7月に終了したが、再導入される可能性もある。しかし、他の観光地では異なるアプローチが試みられている。それは、よりサステナブルな選択をした旅行者に特典(リワード)を与えるというものだ。自転車の利用や公共交通機関の利用、ゴミ拾いなどに対して特典を付与するコペンハーゲンから、ノルマンディー、エクスムーアにいたるまで、観光客により責任ある旅行を促すインセンティブの導入実験が始まっている。そのアイデアはシンプルだ。観光客から訪れる権利としての追加料金を徴収する代わりに、環境負荷(フットプリント)を減らす行動をとる動機を与えるのだ。

デンマーク・コペンハーゲン

コペンハーゲンの「CopenPay(コペンペイ)」は、同市の公式観光組織であるワンダフル・コペンハーゲンが、観光客にサステナブルな選択を促すために2024年夏に試験的に開始したプロジェクトだ。短期的な実験として始まったこの取り組みは、現在では通年でのプロジェクトへと発展し、90以上の観光施設や事業者が参加している。旅行者は、自転車や公共交通機関の利用、ゴミ拾い、外来種の駆除、その他の環境活動への参加を通じて特典を獲得できる。コペンハーゲンでは、ゴミ拾いや公共交通機関の利用、共同庭園での作業などの手伝いをした観光客に対し、無料のボートツアーや自転車レンタル、さらには無料のランチなどを提供している。この制度は長期滞在を促す特典にも拡大されており、4泊以上滞在する観光客も特定の特典を受け取ることができる。サステナビリティを「制限」として提示するのではなく、コペンハーゲンはそれを旅の体験の一部へと昇華させ、より環境に優しい選択をしたことに対する見返りとして、文化活動や食事、その他の特典を提供している。

ドイツ・ベルリン

ベルリンも2026年、インセンティブ主導のサステナブルな観光を促進する動きに加わり、都市散策中の旅行者に環境に優しい選択を促す試験的制度「BerlinPay(ベルリンペイ)」を開始した。参加者は、自転車や公共交通機関での移動、ゴミ拾い、環境活動やコミュニティ活動への参加によって特典を獲得できる。見返りとして、割引や文化体験などの特典が提供され、観光税だけに頼らずに責任ある観光を促す新しいアプローチを提示している。

英国・エクスムーア

エクスムーア国立公園は、責任ある観光を促進するために異なるアプローチを採用し、2026年夏に「Pay with Exmoor Care(エクスムーア・ケアによる支払い)」制度を導入した。この取り組みでは、観光客から追加料金を徴収する代わりに、滞在中にポジティブな貢献をしたことへの報酬として割引を提供する。旅行者は、自転車や公共交通機関での移動、ゴミ拾い、野生生物の目撃情報の記録、あるいは責任ある観光の推進への協力といった行動をとることで、提携する国立公園のビジターセンターで20%の割引を受けることができる。この試験的プログラムは2026年9月30日まで実施され、エクスムーアは、従来の観光税に代わるインセンティブの活用実験を行う最新の観光地のひとつとなっている。

フランス・ノルマンディー

ノルマンディー地方は、サステナブルな旅と文化施設の割引を紐づけることで、観光客に自家用車の利用を控えるよう促している。鉄道、バス、または自転車で訪れた旅行者は、同地域の約90の美術館や博物館、史跡、その他の観光施設で入場料の割引を受けることができる。この制度は、低炭素の旅の魅力を高めると同時に、旅行者にノルマンディーの文化遺産の探索を促すように設計されている。これはシンプルながらも効果的なアプローチだ。自動車の運転に対して観光客に罰則を科すのではなく、よりサステナブルな移動手段で訪れることに対して経済的なインセンティブを与えているのだ。

広がるCopenPayモデル

「CopenPayを開始して以来、ヨーロッパ、アジア、北米の都市や観光局から、CopenPayや私たちが得た学びについてもっと知りたいという、非常に大きな関心が寄せられています。これまでに100を超える関心ある関係者と知見を共有してきましたが、私たちは世界的にポジティブな変化に貢献することを目指しているため、喜んで共有しています」と、ワンダフル・コペンハーゲンの最高経営責任者(CEO)であるセーレン・テーゲン・ペテルセンは語る。

このアイデアは、すでに制度を導入している観光地以外にも広がり始めている。100以上の都市や観光組織が、CopenPayモデルの応用についてワンダフル・コペンハーゲンに問い合わせており、ヘルシンキなどの観光地も独自のバージョンの導入を模索している。その魅力は明らかだ。観光管理において、観光税や規制、罰金だけに頼るのではなく、サステナブルな移動、環境プロジェクト、コミュニティ活動を通じて、旅行者にポジティブな貢献をするよう促すことができるのだ。これらのインセンティブが行動の有意義な変化をもたらすかどうかはまだ未知数だが、関心の高まりは、責任ある旅行に特典を与える仕組みが世界的に普及する可能性を示唆している。

forbes.com 原文

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事