これまでのキャリアを通じて、私は「競争力のある」雇用主の定義が進化していく様子を見てきた。
かつて、優秀な人材を引きつける要素は、主に給与と標準的な福利厚生制度だった。しかし今日、従業員は雇用主をはるかに総合的な視点で評価している。彼らが求めているのは、柔軟性、パーソナライズされたサポート、そして私生活と仕事の両立を雇用主が理解してくれているという安心感だ。さらに、自らの価値観に合致するミッションを掲げる企業で働く機会を望んでいる。
長年にわたり、大企業には明確な優位性があった。大企業には、中小企業では真似できないような、より包括的な福利厚生や職場環境プログラム、従業員体験を提供する規模とリソースがあったからだ。それ以外の多くの企業は、競争力を維持することとコストを管理することの間で、困難な妥協を強いられてきた。
しかし、その差は縮まり始めている。
人材戦略と福利厚生設計に対する新しいアプローチにより、雇用主が人材獲得競争で活用できる選択肢はかつてないほど広がっている。人材確保が依然として課題となっており、5月には経営者の29%が「埋められない求人がある」と回答している今、組織にとっては「選ばれる雇用主」であるための条件を見直す好機である。
あらゆる規模の企業と関わってきた経験から、今後ますます重要になると確信する3つの人材戦略を紹介したい。
1. 人々の実際の生活に合わせて働き方を設計する
今日の働き手は、仕事が人生のほんの一部にすぎないことを雇用主が認識することを期待している。
柔軟性の定義は、企業ごとに異なっていて構わない。ある雇用主にとってはハイブリッドワークを意味するかもしれない。別の雇用主にとっては、予測可能なシフト調整や、より大きな裁量、あるいは重要な医療機関の受診に対応したり、予期せぬ家族の責任に対処できる余地を意味するかもしれない。
共通項は共感である。
6000万人以上が子どもや高齢の親、あるいは他の愛する人の介護や育児を行っており、その多くは仕事を続けながらそれをこなしている。そうした現実を認め、マネージャーが従業員をサポートできるように体制を整えている企業は、信頼関係を築き、定着率を向上させ、優秀な人材を引きつける上で、より有利な立場に立つことができる。
リーダーは、柔軟な働き方が可能かどうかを問うのではなく、自社の制度が従業員の実際の生活を反映しているかどうかを自問すべきだ。不利益を被ることなく通院できるか。予期せぬ事態が発生したときに、介護や育児の責任を果たすことができるか。マネージャーは、従業員を一貫してサポートするためのスキルを備えているか。
柔軟性は、もはや単なる職場の「特典」ではない。それは、雇用主が従業員を理解し、大切に思っていることを示す手段であり、それによって信頼が築かれる。そして信頼は、ますます重要な競争優位性になりつつある。
2. 個別化されたケアを支える福利厚生を提供する
従業員は、必ずしも最も多くの福利厚生メニューを求めているわけではない。彼らが求めているのは、言葉だけでなく、行動で従業員へのコミットメントを示す雇用主だ。パーソナライズされた福利厚生は、企業がその姿勢を示す最も明確な方法の一つだ。
すべての組織は、人生やキャリアの異なるステージにあり、それぞれ異なるニーズを持つ人々で構成されている。奨学金の返済や家族づくりに取り組んでいる従業員もいれば、加齢に伴う課題に直面していたり、慢性疾患を抱えながら仕事を両立させようとしている従業員もいる。彼らが共通して求めているのは、雇用主がすべての課題を解決してくれることではなく、必要なときに有意義なサポートを提供してくれることだ。
年齢、家族構成、介護や育児の負担、健康上のニーズなど、働く人々の多様化が進むなか、福利厚生もそれぞれの状況に合わせて進化させることができる。個別化されたサポートに投資する企業は、変化する期待に応えるだけでなく、従業員のウェルビーイングが単なる福利厚生戦略ではなく、自社の組織ミッションの一部であることを示している。
ビジネス上のメリットも同様に大きい。例えば、多くの企業主導型医療保険において、最も大きな医療費増加の要因の一つとなっている、周産期・新生児ケアを考えてみよう。家族づくり、妊娠、産後、そして乳幼児期の育児を通じて従業員を支援することは、本人たちにとって有意義であると同時に、企業にとっては主要な医療費支出を抑制しつつ、健康上の成果を向上させる機会にもなる。より広い視点で見れば、画一的な福利厚生のアプローチが、今日の多様な従業員のニーズにもはや合致していないことを示している。
3. 「競争力のある福利厚生」に対する古い思い込みを捨てる
私が目にしてきた最も大きな変化の一つは、あらゆる規模の企業において「今や何が可能になったか」ということだ。長年、多くの企業は、包括的な福利厚生を提供することと、医療費を予測可能な水準に維持することのどちらかを選択しなければならないと思い込んできた。その結果、専門的な福利厚生制度はコストがかかりすぎるか、導入が複雑すぎるとみなされることが多かった。
現在、その前提は見直されるべきだ。
福利厚生の設計や資金調達におけるイノベーションにより、専門的なヘルスケアサービスへのアクセスが容易になると同時に、コストの予測可能性が高まり、管理も簡素化されている。これにより、企業は制度の導入が可能かどうかに悩むのではなく、その制度が自社の人材戦略を支えるものかどうかに注力できるようになっている。
同様に重要なのは、こうした新しいアプローチによって、企業が考える「価値」の定義が変わりつつあることだ。先進的な企業は、福利厚生にかけるコストをどれだけ抑えられるかを問うのではなく、質の高いケアへのアクセスをいかに向上させ、より優れた従業員体験を提供し、長期的な健康維持をサポートできるかを考えている。現在、これらの目標は対立するものではなく、むしろ互いを補完し合う関係になりつつある。
競争力のある企業とは、必ずしも最も多くの福利厚生を提供している企業ではない。従業員の多様化するニーズに応えつつ、長期的なビジネス目標を支えるソリューションに賢明な投資を行っている企業だ。
人材獲得競争は、今後も容易にはならない
しかし、企業が他社との差別化を図る機会は、かつてないほど増えている。
魅力的な従業員体験を構築するために、もはや企業の規模や予算だけに頼る必要はない。実際の生活に合わせた働き方を設計し、多様なニーズに合わせて福利厚生をパーソナライズし、従来の「競争力のある福利厚生」に対する思い込みを捨てることで、企業は優秀な人材を採用し、引き留めるための優位なポジションを確立できる。



