ロシアはウクライナに対して、従来の弾道ミサイルと巡航ミサイルに多数の小型・低コストの攻撃ドローン(無人機)を組み合わせた戦略航空作戦を続けてきた。次第に投入数も増やしてきたそのドローンに、ここへきて変化がみられる。これまで主流だったプロペラ推進型が減り、より高速のジェット推進型が増えてきているのだ。
ウクライナの防空部隊はなぜこの動向を懸念しているのか。ジェット推進ドローンによって、戦略バランスはどう変化する可能性があるのだろうか。
ほぼ封殺されるようになっていた従来型機
ロシアは2022年、イランの「シャヘド131」と「シャヘド136」両ドローンを輸入し始めた。これらはロシアでは名前が付け替えられ、それぞれ「ゲラニ-1」、「ゲラニ-2」とされた。ひと回り小さいゲラニ-1のほうは存在感が薄いが、ゲラニ-2については、2023年にロシア西部アラブガ(エラブガ)に建設された巨大な新工場で、大量にライセンス生産されるようになった。
エンジン音から「モペッド」とも呼ばれるゲラニ-2は、翼幅2m強の三角形状のドローンで、時速190km前後で巡航し、航続距離はおよそ2000kmに達する。通常は約50kgの炸薬・破片・焼夷弾頭を搭載し、ジャミング(電波妨害)に強い衛星航法で誘導される。
個々のゲラニ-2を撃墜するのは難しくないものの、このドローンの最大の強みは低コストで生産も容易な点にある。実際、ロシアは月産数を十機単位から百機単位、千機単位へと増やしてきた。アナリストのShahed Trackerのまとめによると、今年5月の飛来数は8000機超にのぼっている。
ウクライナも対策を強化してきた。小型の地対空ミサイルによる迎撃に加え、機関銃や機関砲を装備した機動射撃班もだんだんと高い効果を発揮するようになった。さらに1機数千ドルのFPV(一人称視点)迎撃ドローンも投入され、数km離れた地点から発射してシャヘドを撃墜できるようになった。このほか、ヘリコプターや農業用の航空機なども空中から機銃で低速のゲラニ-2を撃ち落としている。
2026年6月までに、飛来するゲラニの90%前後は目標到達前に撃墜・阻止されるようになっていた。そのため、ロシアは攻撃方法の変更に動いた。



