贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。
THE GIFT #39
高田智之
Trip.com International Travel Japan 代表取締役社長
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加持祈祷により、神仏の加護が込められた加持米。
一部にゲルク派のシンボルカラーである黄色に染められている。
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私は旅が好きだ。旅のアイコンとして憧れたのは『チベット旅行記』を記した河口慧海。僧侶であり近代日本最初期の探検家で、日本人で初めてチベットの都・ラサに到達した人物だ。
昨年の夏、中国の成都に行く機会を得た際、彼の軌跡を追うべくチベットまで足を運ぶことにした。ラサのセラ寺を訪れ、そこに飾られた河口慧海の写真と像を目にしたとたん、思わず震えた。電話もインターネットもない100年以上も前に、ヒマラヤを越え、この秘境で学んだ先人。その軌跡に触れられたことに、ただただ感謝した。袈裟を着たチベット僧にそのことを伝えると、「今後の順調な旅を祈ります。そしてまたいつか来てください」と、黄色い加持米を丁重に渡してくれた。
旅とは、未知への好奇心である。観光業界に20年身を置き、新しい世界とかかわる人々に貢献することを生業としてきたが、この加持米は、未知の世界に挑み見聞を広げてきた先人の思いを、世代や国境を超えて託されたかのような尊い贈り物に感じられた。
僧侶との約束を果たすべく、またチベットへ行く理由ができてしまった。次はエベレストのベースキャンプまで、足を延ばそう。
たかた・ともゆき◎1984年、徳島県生まれ。2007年よりホテル・旅行業界に従事し、国内外で営業や事業開発など幅広い業務を経験。22年、Trip.com International Travel Japanに入社し、マーケットディレクターを経て、23年より現職。Trip.com Air Ticketing Japan社長兼任。



