大規模言語モデル(LLM。大量の文章を学習させて人間の言葉を扱えるようにしたAI)やAIモデルの利用をめぐる議論では、繰り返し持ち出される論点がある。こうした要求を一手に処理しているデータセンターのサーバーが、天然資源をどれだけ使っているのか、という指摘である。
この種の評価には、2つのアプローチがある。ミクロに見るか、マクロに見るかだ。問い合わせ1回あたりの水とエネルギーの使用量はどれくらいかと問うこともできるし、モデルを動かしているシステム全体がどれだけの量を飲み込んでいるのかと問うこともできる。
AIに1回質問して使う水の量は、推計ごとに異なる
前者のやり方をざっと眺めるだけで、その数字がいかに主観的で曖昧かがわかる。
1回のGPTへの問い合わせで500ミリリットル超という数字もあれば、ぐっと下がって0.3ミリリットル(最初の数字の1666.67分の1ということになるのだろうか)という、サム・アルトマンの発言とされる数字もある。どこまで幅が出るかは、上流の冷却まで計算に入れるかどうかで変わるし、そもそもどんな作業をさせているのか、需要がどこから来ているのかによっても変わる。実際、変数があまりに多く、厳密に計算しようとしてもある程度から先は徒労に近い。そう指摘する専門家は少なくなく、彼らは、それよりも効率を高めることに力を注ぐべきだと言う。
データセンター全体で使う電力は、ニューヨーク市7つ分と試算
総量に目を向けると、もう少し輪郭のはっきりした絵が見えてくる。とはいえ、公平を期して言えば、こちらも込み入った話ではある。
今年のPlanet Action(プラネット・アクション。筆者も運営に携わっているイベント)で、持続可能なデータセンター設計を研究するヤンカイ・ジャンの講演を聞いた。ジャンは、データセンター全体の消費電力を、本人の言葉を借りれば「ニューヨーク市7つ分」の電力だと見積もっていた。
「今や私たちはデータセンターに囲まれています」とジャンは言う。「送ったメール1通、アップロードした写真1枚、動画を一気見した夜の1晩ごとに、どこかでデータセンターがあなたのために夜更かしをしているのです」。
データセンターを人間に例えると、眠らない仕事中毒
ジャンはこうしたシステムをかなり擬人化して語っていた。読者の参考になると思うので、ここに引いておきたい。今の時代ならではの思考実験のようなものである。
「データセンターが人間だったら」とジャンは切り出した。「彼らは仕事中毒でしょう。いつも起きていて、いつもオンラインで、いつも熱を持ちすぎている。休暇も取らないし、眠りもしません。そして私たちが頼れば頼るほど、疲れきっていきます。考えてみてください。彼らは電気を食べ、水を飲みます。ストレスがたまれば、大量の汗をかきます。ただ1つ違うのは、人間が燃え尽きればカウンセリングに行くのに対し、データセンターが燃え尽きたときには、私たちは古いものを引退させて新しいものを建てるだけだということです」。
示唆に富む見立てだ。とりわけ今は、システムがどこまで「人間的」なのかを私たちが急に見極めようとしている時代である。ここで言うシステムとは、データセンターそのものではなく、それが支えている非決定的なモデル(non-deterministic model。同じ問いかけに対して毎回まったく同じ答えを返すとは限らないモデル)のほうだ。
それはさておき。
ジャンは、データセンターの設計で持続可能性を高めるための、いくつかの有効な方策を示した。当たり前の工夫こそが効いてくる、というのがその主張である。



