キャリア

2026.08.24 15:15

投資先の破綻に社長の横領 27歳でVCに挑んだGCP仮屋薗聡一が失敗から学んだこと

グロービス・キャピタル・パートナーズ共同創業者の仮屋薗聡一(撮影=曽川拓哉)

特に忘れられないのは、投資先企業の社長が逃げた案件です。経営戦略も事業計画も納得のいくもので、市場の将来性もあり、経営者の経験も申し分なく見えた。ところが、経営者のキャッシュフロー管理が甘く、サービスが始まる直前にお金が尽きてしまったんです。1997年はアジア通貨危機の年で、追加の資金調達もできません。経営者とは連絡が取れなくなりました。LPの方々からは、「日本でハンズオンVCが成功するんだと証明して欲しい」と期待をこめて出資をしていただいていたので、夜討ち朝駆けで経営者を追いかけ、最終的には元本だけ返してもらいました。他にも、経営者の横領などさまざまな事件を経験しました。
 
失敗から学んだのは、「人」を見ることの重要性です。コンサル出身の私は、最初は戦略と財務計画をきっちり見ることに重点を置いていました。でも、どれだけ美しい計画があっても、それを実行するのは人です。どういうときに人は誰かを裏切ったり悪事を働こうとするのか。虚栄心や承認欲求が強すぎるケースやお金に目が眩んでしまうケースなど、いくつかのパターンを見てきました。頭のなかで考えているだけではダメで、現場に行き、経営者の「人物像」を見ることの重要性を思い知らされました。

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守破離の「守」に忠実に

30歳までにさまざまな経験をしましたが、あの頃の自分に一つアドバイスするとしたら、もっと師匠クラスの人たちのそばで学んでおけ、ということです。
 
コンサル時代もVC時代も、素晴らしい人たちに恵まれました。先ほど話したように、コンサル産業をつくってきた方々や、GCP創業者の堀さん、共同でJV(ジョイントベンチャー)を立ち上げた米エーパックス・パートナーズ創業者でアメリカのVC産業をつくった一人と言われるアラン・パトリコフさん、1号ファンドで出会った経営者たち。そういう人たちと一緒に仕事をさせてもらっていたのに、彼らから学んだことをすぐ自分流に変えて仕事をしていました。守破離で言えば、守より破をやっていたんです。だからこそ失敗し、学べた部分もありますが、もっと先達の懐に深く入って教えてもらい、それを忠実に実践していれば、VCとして出せた結果はもっと良いものになっていたかもしれません。
 
だから今、GCPに入ってくる新人キャピタリストたちにはこう伝えています。早く新規の投資案件を発掘して自分の実績を作りたいだろうし、その気持ちもわかる。でも、意識の半分は先輩たちの観察に使いなさいと。経営者とどんな対話をしているか、横にいるCxOがどんな表情でそれを聞いているか。そういうものを全部肌で感じることで、チームの本当の姿や、それぞれの人の本質が見えてくるからです。
 
若い時は、早く結果を出したいから、ショートカットしてすぐ答えに辿り着こうとしてしまう。でも、師たる人を見つけたら、飛び込んでいって教えを請う。礼を尽くすことと師事することに躊躇しないように。U30の人に伝えたいのは、「一期一会」です。

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文=露原直人 撮影=曽川拓哉

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