小売業界がAI革命に向けた体制刷新に慌ただしく動きつつ、こうした巨額投資が本当に回収できるのか疑念を抱いていたのは、わずか1年前のことだ。確かに、コストや物流の面ではAIは非常に効率的だった。だが、その大胆な投資を正当化できるほど小売の売上成長を押し上げるのか。
現在、AI主導の「対話型コマース」を受け入れる買い物客は急速に増えている。ただし、これまでのところ、その多くは従来型の検索(SEO)を迂回する動きにとどまっている。Salesforce.comの最近のレポートによると、過去1年でSEOを通じて商品を見つけた消費者の割合は15%減少した一方、AIツールやアプリを使って商品を見つけた消費者は38%増加した。
いまや、小売企業の幹部であれば、消費者と向き合う企業にとってAIが、マーケティングにおいても、顧客対応を管理する社内ツールとしても、「成否を分ける」必須課題であることを疑うべきではない。McKinsey & Co.が昨年発表したレポートは、2028年までにAI搭載型検索が年間約7500億ドル(約119兆円)の売上創出に重要な役割を果たすと予測した。
現時点では、買い物客の確固たる過半数が「対話型コマース」を有用な新ツールと評価している。だが、消費者にとって何より重要なのは、大まかに言えば「人間味(ヒューマンタッチ)」である。それは、忠実な支持者を獲得し、強力な小売ブランドを構築するために、常に不可欠であり続けてきた不変の要素だ。
これは、Eコマースコンサルティング会社のFive9(ファイブナイン)が、Hanover Researchと共同で、米国、英国、ドイツの消費者3000人とカスタマーエクスペリエンス(CX)担当のシニア役員600人を対象に実施した最近の調査で得られた結論の一つだ。消費者の10人中8人はAI搭載型カスタマーサービスの利用に前向きだったが、3分の2はなお、人間と話すことを好むと回答した。
Five9は「消費者は、人間による支援が必要な場合に、透明性、選択肢、そして円滑な引き継ぎを期待している」と報告した。「電話は依然として、最も好まれるカスタマーサービスのチャネルである」
研究者らはまた、消費者が自ら好むテクノロジーに対して大きな信頼上の懸念を抱いていることも明らかにしている。買い物客は、現実のものも、懸念に基づくものも含め、あらゆる種類のデジタル操作に極めて敏感になっている。
例えば、新規顧客を獲得し収益成長を実現するためには、小売業者はより率直である必要がある。Five9とHanoverの調査では、消費者の70%が、AIエージェントとやり取りしていることを知ることが「非常に、または極めて重要」と答えている。
テクノロジーによって世界がますますフリクションレス(摩擦のない状態)になるにつれ、不適切なカスタマーサービスはより目立ち、許されにくくなり、どうやらその頻度も増しているようだ。カリフォルニア州を拠点とするAIプラットフォームのGenesys(ジェネシス)向けに実施された最近の調査では、消費者の半数超が「カスタマーサービスに連絡するくらいなら、ほかのことを何でもしたい」と回答した。
Five9の調査によると、消費者の過半数は「生身の担当者につながる明確な経路が提示されている場合」にAIを信頼しやすいと答えた。一方、人間につながる選択肢がない場合にそう答えたのは、わずか4分の1だった。
小売企業がこうした複雑に交錯する流れをうまく乗り切るには、顧客の購買体験の最後にはなお、質問に答え、問題を解決できる同じ人間がいるのだと示さなければならない。勝利をもたらすのは、まさに人間とテクノロジーの組み合わせなのである。
では、AIは売上成長をもたらすのかという問いへの答えは何か。
それは、個々の小売企業やブランドが、人間味を失うことなくAIの力をどれだけうまく活用しているかにかかっている。



