かつて長崎の出島が、鎖国下の日本で唯一世界に開かれた窓だったように。本体組織から少し離れた場所で、新しい価値を生み出す組織を「出島組織」と呼ぶ。そうした出島組織の知恵や経験を交換する場として、長崎で「出島組織サミット」が2021年から開催されている。
この連載では2024年2月に発行した書籍『出島組織というやり方ーはみ出して新しい価値を生むー』に収録しきれなかった、日本各地の面白い出島組織の実践者たちに話を聞いていく。
今回の舞台は、ベトナム。三菱総研の現地法人、MRIV Internationalだ。
「行ったことないから」始まった、ベトナムへのバーチャル出張
先日、出張でベトナムへ行った。
といっても、特段最初から用があるわけじゃない。そんな出張もよく、する。
我々「企画業」は、紙と鉛筆さえ(もちろんPCやスマホも)あれば仕事は済むので一見安上がりに見えるが、まったくそんなことはない。インプットが生命線。情報という見えないモノに金がかかる。本も買わなければならないし、美術館にも行かなくてはいけない。そして旅もしなければならない。
つまり今回のベトナム出張の理由は「行ったことないから」、強いて説明するならば、みんなが口を揃えていう、「ベトナムは活気がある」は、どんなものなのか、その空気を見るためで、あとは偶然まかせ。それでどんなものを得たかというと……以下を読んでもらえたら。これは一緒に体験してもらうバーチャル出張記事である。
ホーチミンでまず見たのは、一日中流れていくバイクの流れだった。これはバイクの川、いや波だ。何万台とすれ違っただろう。こんな状況が毎日続いているのだとしたら、これ、身の回りで行われているささやかな地球温暖化対策が効くなんて、まったく思えない。さらにそのバイク、ほとんどが日本メーカー。みんなが活気と呼ぶその正体、これ?と、疑問符が点る。
バイクの流れのほとりで、リアルを見つめ、未来に想いを馳せる、それだけで来た甲斐はまずあっただろう。だが、この旅ではもう1つの収穫が、その後移動したハノイで用意されていた。
ハノイに行くのは活気の視察ではない。人に会いに行くためだ。僕がベトナム行くことを知った知人が、ベトナムに行くならどうしても紹介したい若手がいるというので、会うことになったのだ。
その若い人は、空港に迎えにきてくれた。「土曜日なのに、申し訳ない」というと、「平日も土日も関係なくないですか〜?」とあっけらかんと言いながら、社用車に案内してくれる。
緒方亮介氏。現在39歳にしてMRIV Internationalの代表。そして、徐々にわかるのだが、この会社は三菱総研が作ったハノイの出島組織、だったのだ。収穫というのは、この人との出会いだ。



