「課題解決より、課題発見が大事」「良い問いが、良い答えを生む」この考え方に共感する、リアルな社会問題をいち早く知りたい方への連載「〇〇問題 – 日本NPOセンターが発見した今月の社会課題」。
著者の日本NPOセンターは、全国5万以上のNPOとのネットワークを生かし、現場の今の課題を常時収集しています。その課題に電通Bチームを中心としたコピーライターが、わかりやすく「〇〇問題」という形で名前をつけてリスト化してきた課題ラボの過去の活動のなかから、毎月ひとつにフォーカスしたコラムを掲載しています。
課題は現場にあり。解きたいと思った課題をみんなで解いていけば、きっと新しい社会が見えてくるはず。
不就学と不登校は違う 学校に通えない子どもって?
日本で暮らす在留外国人は412万人を超えました。筆者の出身地である島根県の人口は62万人、隣の鳥取県は51万人。いまや日本国内で「島根県民・鳥取県民と出会う確率」よりも、「外国籍住民と出会う確率」のほうがはるかに高くなっています。
多文化化する日本で、いま静かに深刻化しているのが子どもたちの「不就学」問題です。学校に通えていない子どもが、推定1万人以上存在します。
なぜ「不登校」ではなく「不就学」なのか。「不就学ゼロ」を掲げ、長年この問題の現場で活動と研究を続けてきた東京外国語大学の小島祥美教授に話を聞きました。
── そもそも「不就学」と「不登校」とは何が違うのでしょうか?
小島:「不登校」は、日本の学校に在籍がありながら、様々な理由で登校していない状態を指します。一方、「不就学」はそもそも在籍すらなく、学校に入学・就学すること自体がなされていません。実は、日本では外国籍の子どもには就学義務がないとされています。そのため、外国籍の小・中学生年代の子どもたちが不就学状態となってしまうケースがあります。
── 国が初めて全国調査を行ったのは2019年ですが、かなり最近のことですね。
小島:2019年、外国人労働者の受け入れに関して、大きく法律が変わりました。それを機に、家族帯同で来日するケースが増えることが見込まれました。この法改正によって、不就学となる子どもたちが多数発生するということが課題として挙げられ、全国調査が行われることとなりました。
全国調査を行った結果、約2万人の子どもたちが不就学状態であることが明らかになったのです。18.1%の子どもたち、約6人に1人が学校に行っていなかったのです。
当時、SDGsへの注目が高まっていた時期でしたが、そのなかでゴール4に「質の高い教育をみんなに」というものがあります。すべての子どもたちが教育を受けられることが目標になっています。教育へのアクセスが特に課題とされていたサハラ以南アフリカ地域では、18.8%の子どもたちが教育にアクセスできていませんでした。つまり世界の中で最も教育にアクセスできていないサハラ以南地域と、日本に住む外国籍の子どもたちが同水準だった訳ですね。この数字は、国にとっても衝撃的な結果だったのではないでしょうか。
その後は、毎年調査がおこなわれています。2025年度の調査では、約1万5000人の子どもたちが不就学状態となっています。8.4%、約12人に1人です。
── 学校に行っていない子どもたちは、どのように過ごしているのですか?
小島:私が2003~2004年に岐阜県可児市で、外国籍の子どもたちの就学状況を調査しました。そのときに分かったことなのですが、中学生年齢の子どもが工場で働いていた実態も確認されました。当時、外国籍の子どもの住民数に比べて、市内の小中学校の在籍者数が少なく、就学実態がわからなかったのです。そこで、実態を把握するために、私は対象となるすべての家庭を訪問したところ、全体の3割が不就学状態に置かれ、弟妹の世話や家事を行うなど、今でいうヤングケアラー状態になっていたことも明らかになりました。
一方で、日本の学校だけでなく、インターナショナルスクールなどの外国人学校に通う子どもが多いこともわかりました。外国人学校は、法的には学校でなく私塾扱いであるために、子どもたちの実態をつかむことはとても困難です。「見えない子ども」たちになってしまっているのです。



