精神科医のM・スコット・ペックは、有名な著書『愛と心理療法』(邦訳:創元社)の冒頭に、読者に対して厳しい現実を突きつける、3つの単語からなる警句を置いた。つまり、「Life is difficult(人生は難しい)」という言葉だ。
しかし、私たちが身をもって味わう人生とは、本質的に難しいものなのだろうか? それとも、私たちが人生を見る「レンズ」によって困難が生じる部分があるのだろうか?
もしあなたが自分のキャリアについて、「失敗する可能性があるものは失敗する」とするマーフィーの法則や、「後悔するよりも安全を(転ばぬ先の杖)」というアプローチをとるなら、不確実性は危険なもののように見えてくる可能性があり、新たなチャンスは、失敗を招くリスクになる。自らの意見を言うことは、恥をかく可能性につながり、いまの仕事に先が見えなくても、辞めることは、ジョブハギング(job hugging:現在の職にしがみつくこと)や、惨めな状態に甘んじることよりもリスクが高く感じられる。そのうちに、安全策は、あなたのキャリアを守ることをやめ、足かせになり始める。
成功よりも安定を重視する脳のメカニズム
ここで役に立つのが、筆者が提唱する「クラウドマインド(CloudMind:雲のマインド)」と「スカイマインド(SkyMind:空のマインド)」という概念だ。クラウドマインドとは、生き残りのための脳のシステムだ。クラウドマインドは、「この状況で自分はどう生き残るか?」と問いかける。
一方のスカイマインドは、「今、最も賢明な対応は何だろう?」と問いかける。スカイマインドは、クラウドマインドよりも視点が広いため、一歩下がって、本当に起きていることに気がつき、自動的な反応ではなく、考えた上での反応を選ぶことができる。
最近の職場は、レイオフや、AI(人工知能)がもたらした破壊的変革、経済状況の不透明感、そして、絶え間ない変化にさらされている。こうした状況において、クラウドマインドとスカイマインドの違いを知ることは、今のキャリアを単に守るだけなのか、それとも、今後も成長し続けるか、の分かれ道になる可能性がある。
クラウドマインドは、特定の種類の誤りを生じさせるかたちで進化してきた。それは、「真の脅威を見逃すくらいなら、のちに誤りと判明するとしても、警告しておく」というものだ。



