はるか昔の時代を例に取ろう。私たち人間の祖先が、草むらの中に、何か細長い物体を見つけたとしよう。棒をヘビと見間違えたとしても、大きな損害はない。しかし、ヘビを棒と見間違えたなら、場合によっては命を落とす危険がある。
最も安全な原則はシンプルだった──「疑いがあるなら、危険があるものとして行動せよ」というものだ。生存に重きを置くこうしたバイアスは、人間にとってプラスに作用してきた。しかし、このアプローチの問題点は、ひとたびこの警戒態勢が発動すると、たとえ心理面や仕事、人間関係における不確実性といったものであっても、すべてを、人命を脅かすような結果をもたらすリスクがあるかのように扱う点にある。
クラウドマインドは、上司がメールに返事をくれない、といったことだけでも、「何かがおかしい」とあなたに語りかけてくる。批判を受けると、自分という人間が拒否されたように感じられる。もっと待遇のいい求職案件に応募しようと考えただけで、自分にその資格がない理由を逐一リストアップしてしまう。転職や、副業の立ち上げ、あるいは昇給の要求をしようと考えると、突然、それらの行動が失敗に終わる10のルートが頭に浮かんでしまう。
クラウドマインドは元来、「この解釈は正確ですか?」といった問いかけはしてこない。むしろ、「これは私たちに害がありますか?」と尋ねてくる。この違いは大きい。クラウドマインドの警告には、必ずしも裏付けになるエビデンスがあるとは限らないのだ。
警告を発するクラウドマインド、評価を行なうスカイマインド
一方のスカイマインドも、「恐怖心に目をつぶり、リスクを軽視し、不確実な状況に向こう見ずに突進せよ」と促すわけではない。そうではなく、こちらは恐怖心を情報として捉え、「怖い」という感情を、自動的に真実として受け入れないようにする姿勢だ。
クラウドマインドは、「後悔するより安全な方がいい。何かうまくいかないことがあるかもしれない」と語りかけてくる。これに対して、スカイマインドはこう答える。「警告をくれてありがとう。では、本当に何が起きているのか確かめてみよう」
両方の意見のうちどちらを選ぶかが、キャリアの中で最も重大な決断になるかもしれない。クラウドマインドは警告する。スカイマインドは評価する。クラウドマインドは、今後起きるかもしれない危険を即座に察知する。スカイマインドは、文脈や視点、洞察力を加えてくれる。
面接に不安を感じることは、面接をキャンセルすべき、ということを意味しない。昇進の希望を伝えることに不安を感じたとしても、希望を伝えること自体が不適切というわけではない。不健全な職場を去ることに、先が見えない不安があったとしても、長期的に見て、職場に留まる方がより安全ということは意味しない。
恐怖という感情は、あなたの持つ生き残りのためのシステムが、何かを察知した、ということを示している。しかしこのシステムが、どう対処するかを教えてくれるとは限らない。


