最初は気づかなかったかもしれないが、一度気づくともう見過ごせない。職場のいたるところにAIが浸透している。
それはAIの発展についての頻繁な議論や、利用義務化の広がりだけの話ではない。現在では約60%の企業が従業員にAI利用を義務づけている。問題は、チームが生み出すあらゆる成果物にAIの痕跡が見え隠れしていることだ。メールはどれも同じ構文で書かれ、成果物はどれも一様に無個性なトーンをまとい、LinkedInの投稿にすら、それとわかる兆候が随所に現れている。
これは役に立つどころか、むしろ逆効果だ。同僚が作成するものすべてに、本人の知性やスキルが欠けているように感じられる。しかし、どう対処すべきか分からずに悩んでいるのではないだろうか。
確かにAIは職場の一部業務を楽にしてくれる。オンライン会議の議事録を要約したり、詳細なメモをもとに洗練されたレポートの初稿を作成したり、反復作業を自動化することもできる。実際、AI活用は平均で少なくとも23%の生産性向上と結びついている。
しかし、AIは働く人が考える時間を増やすためのものであり、思考そのものを代替するためのものではないはずだ。
「AIスロップ(AI slop=AIによる粗悪なコンテンツ、駄作)」への認識は広まりつつある。私たちは誰もが、その明らかな特徴を知っている。ダッシュ(—)の多用(これを愛用する者にとっては悲劇だが)、予測可能な構成、反語的な質問などだ。LinkedInは「AIスロップを報告する」機能を追加し、AI生成と思われる投稿を通報できるようにするまでになった。それにもかかわらず、この駄作は依然として蔓延している。
5人に1人が「締め切りさえ守れば低品質なAI成果物は見過ごされる」と答え、66%が週に少なくとも6時間をワークスロップの修正に費やしている。
かつては人間だったロボットたちに囲まれていると感じたときの対処法を紹介する。
1. AI利用について話し合える環境をつくる
AI利用に関する意思決定は、通常、経営層で行われる。つまり、自分のチームでAIがどのように使われているかについて、十分に話し合われていない可能性がある。
仕事におけるAIの利用について話し合うためのミーティングを、率先して企画してみよう。これは誰もが、どのようにAIを使い、そこから何を学び、何を避けているかを共有し合う学習の機会であるという前提を、事前に共有しておくことが大切だ。そうすれば誰も追及されているとは感じず、オープンな対話が生まれる。
対話を始めるためのいくつかの質問例を挙げる。
- どのようなときにAIを使っているか?
- AIの使用が適切なのはどのような場合か?
- 決してAIで生成すべきではない業務は何か?
- AIの使用を公表すべきか? 公表する場合、軽微な使用例についてはどうするか?
チームで意見は分かれるかもしれないが、この対話を通じて共通点と相違点、そして実際にAIが担っている業務が明確になる。
2. チームのガイドラインを作成する
お互いの認識が一致したところで、次は明確な境界線を引く番だ。
全員が遵守すべきAIに関するポリシーや手順を策定することを目的に、別のミーティングを設定しよう。
多くの人は、意図的にAIを乱用しているわけではない。自らの業務を効率化するのではなく、AIに業務を丸投げしてしまっていることに気づいていないだけなのだ。また、周囲にその過剰な利用が見透かされていることにも気づいていないかもしれない。
しかし、チームとしての規範を設けることで、個人のAI利用を直接指摘することなく基準を確立できる。この方法であれば、個人攻撃のように受け取られるのを避け、あくまでチームの方針として捉えてもらいやすくなる。
AIガイドラインの例を示す。
- 人事評価や機微な会話のポイント作成にはAIを使わない。
- 成果物へのフィードバック作成にはAIを使わない。
- 文章量の多い成果物の校正にはAI利用可。ただしAI版をそのまま貼り付けず、各修正案を個別に確認すること。
- 会議の要約や通話後の次のステップ共有にはAI利用可。
AI利用がワークフローにさらに深く根付く前に方針を定めておけば、悪習慣が定着する前に食い止められる。
3. ガイドラインを文書化し、全員の合意を得る
チームのAI利用ガイドラインについてアイデアを出し合ったら、次はそれを形にするときだ。
文書を印刷し、全員に署名してもらうことで、AI利用の規範を守る意思を示してもらう。これにより、単なる推奨事項ではなく、チーム内の合意事項となる。
全員が署名することは、単にポリシーを形式化する以上の意味を持つ。それによって真の当事者意識が生まれるのだ。実際、書面で同意するという行為は、より高いコミットメントと実行力につながる。
4. AIの過剰利用を報告する仕組みをつくる
書面上の合意は、自動的に順守を意味するわけではない。
AI利用について継続的に話し合える仕組みを設け、対話を続けよう。
まずは、行き過ぎたAI利用を報告できる匿名フォームを作成することから始めよう。
これはチームメンバーが他人を「告げ口」するための場ではない。AIスロップが繰り返し作成されているという正当な懸念を共有し、該当するメンバーがサポートを受けられるようにするための場所だ。もしかすると、そのメンバーは過度な業務を抱えており、ToDoリストを消化するためにAIに頼らざるを得ない状況なのかもしれない。あるいは、AIに仕事を丸投げするのではなく、AIを活用する方法を1対1で学ぶ必要があるのかもしれない。いずれにせよ、彼らには支援が必要であり、このフォームがその一助となる。
また、チームミーティングの中に、AIの活用が予想以上に役に立った事例や、逆に悪影響を及ぼした事例をケーススタディとして共有する時間を定期的に設けることも有効だ。何がうまくいき、何がうまくいかなかったのか、そして今後に向けて知っておくべきことは何かを話し合うことで、チーム全体がその経験から学ぶことができる。
5. 定期的に見直す
テクノロジーの変化は速い。
特にAIは能力と普及率を歴史的なスピードで拡大させているため、2年に一度、あるいは年に一度の見直しでは追いつかない。チームもテクノロジーに合わせて適応していく必要がある。
チームミーティングの議題に、四半期ごとにAIポリシーの見直しを加えよう。これはミーティングの大半を占めるような大げさなテーマである必要はない。以下の点について再評価するための、わずか15分程度の簡単な確認で十分だ。
- 社内で新たに導入されたAI関連の動き
- チームが現在、どのようにAIを利用しているか
- チームが考える、AIを使用すべき領域と使用すべきでない領域は何か
必要に応じてポリシーを更新し、全員に再度署名してもらうことで、コミットメントを新たにしよう。
上司が「AIによる駄作」を量産している場合は?
これは思っている以上によくあることだ。従業員の半数以上が、自分のマネージャーからAIによる駄作(ワークスロップ)を受け取った経験があり、その結果として85%がリーダーシップへの信頼を失ったと報告している。
このような状況への対処はデリケートだが、極めて重要だ。自身の成長を適切にサポートしてもらうためには、マネージャーが選んだAIモデルからのコピー&ペーストではなく、マネージャー本人の言葉を聞く必要がある。
ストレートに「AIを使うのをやめてもらえますか?」と言ってはいけない。代わりに次のように伝えてみよう。
- 「いつもいただく具体的なフィードバックをとても大切にしています。最近のフィードバックはやや一般的に感じられて、何を改善すべきか把握しづらくなっています」
- 「ご自身の視点や個人的な経験に基づいたアドバイスを、もっとお聞きしたいです」
- 「これについて、少し時間を取って対面でお話しできませんか?」
伝えるべきポイントは、AIが生成したありきたりな回答ではなく、相手の頭脳と経験によって自分の仕事をサポートしてほしいということだ。このように伝えることで、直接的な批判を避けつつ、本人が自ら成果物を確認するように、敬意をもって促すことができる。
AI時代を生き抜く職場は、何でもAIに放り込んで結果を期待するような場所ではない。AIが関与すべき領域と、そうでない領域の違いを見極められる職場である。



