「モバイル広告がスタートしたのは7年ほど前だ」とInMobiの共同創業者兼CEOのNaveen Tewariは話す。「瞬く間に何百ものモバイル広告企業が現れた」
スマートフォンは新興市場で急速に広まったが、多くの企業は事業拡大に対応できずに姿を消した。グローバル規模で展開するトップ3社はグーグル、フェイスブック、そしてInMobiだ。
グーグルの提案を拒絶。独自路線を展開
今年初めには、グーグルがInMobiの買収交渉に入ったことが盛んに噂されたが、その後同社はその噂を否定した。InMobiはこれまでにも数多くの買収提案を受けているが、全て断ってきた。Tewariは「我々は自分たちの手で事業を大きくしたいんだ」と説明する。
「市場が飽和するのはまだ先だ。もっと事業を拡大できると考えている」
InMobiの広告プラットフォームは世界200ヶ国に展開し、月間アクティブユーザー数は10億人以上。1ヶ月の広告表示数は1380億インプレッションを上回るという。
Tewariは元マッキンゼーのコンサルタントで、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得した。彼は7月に新しくリリースしたMIIPテクノロジーが数年後には2500億ドル(約30兆円)の市場を生み出すと考えている。MIIPとはユーザーの嗜好を分析して広告を表示させるディスカバリープラットフォームだ。
調査会社のeMarketerは、モバイル広告の市場規模が来年1000億ドル(約12兆円)を突破し、世界のスマホ人口20億人のうち、中国のユーザーが25%を占めるようになると予測している。
中国でも5億人のユーザーを獲得
InMobiは既に中国で最大手のモバイル広告プラットフォームとなっている。9月には中国企業のAPUSと提携し、新たに5億人のスマホユーザーにアクセスできるようになる。APUSは、アンドロイド端末のホーム画面をカスタマイズできるランチャーアプリを提供しており、Google Playで上位10社に入るデベロッパーだ。
中国でのビジネスは困難かとの問いに対し、Tewariは「とても難しいが、その分見返りも大きい」と答える。
「中国で成功するには、バリアを乗り越える方法を学ばなければならない。我々は現地の環境に合わせて適応してきた」
Tewariは本国のインドも十分ホットな市場だと考える。
「しかし、我々はモバイル事業は本質的にグローバルなものだと考えており、我々の強みを最大限活かして世界展開を図っていきたい」
InMobiの売上の三分の二は、インドと中国で生み出されている。インドを拠点とすることの大きな利点は、優秀な人材が豊富にいることだ。「素晴らしい人材を多く雇用することができて、離職率も低い」とTewariは言う。「我々は社員たちに機会を提供し、彼らは人生と魂を掛けて応えてくれている」
InMobi社員には、自らが大きなビジネスを創出する、インド人がこれまで体験したことのないチャンスが与えられ、重要な意思決定も社員たちが行っている。社内ルールの多くは社員たち自身が決定しているが、そこには年次ボーナスを受け取らないという決定も含まれている。
「善良で有能な人は、仕事の可能性を信じて日々の業務を行うものだ」とTewariは言う。「社員は、会社から信頼されたいと願っている。我々は、自分自身が社員だったら会社からこう扱われたいという視点で考えている」
InMobiのオフィスはカラフルに彩られ、およそインドらしくない雰囲気だ。オープンなオフィスでは、社員たちが思い思いにパーテーションを飾り付けている。オフィス内にはラウンジやゲームルーム、カフェテリアなどがあり、グーグルのオフィスを彷彿とさせる。
InMobiの現在の評価額は約25億ドル(約3000億円)。日本のソフトバンクやSherpalo、KPCBなどから出資を受けている。