AIをめぐる議論の多くがテクノロジーに集中してきたのは、当然のことだ。しかし、組織が生成AIツールへの投資を続ける一方で、多くのリーダーはいまだに、それを有意義なビジネス成果につなげる形で導入することに苦戦している。この断絶は意外ではない。30年以上にわたり人材・組織変革を率いてきた経験から言えば、変革の取り組みが勢いを失う理由がテクノロジーにあることはまれだ。本当の問題は、組織が解決しようとしている課題について足並みをそろえる前に、実装へ進んでしまうことにある。
組織が変化に適応するのを支援するうえで、人事部門もこの傾向と無縁ではない。私たちは、はるかにシンプルな問いに答える前に、プロセス設計、導入計画、テクノロジーの意思決定へと自然に向かいがちだ。その問いとは、「人は実際にどのような仕事をすべきなのか」である。AIは、あらゆる組織と人事リーダーにこの問いと向き合うことを迫っている。
AI導入後も役割を従来のままにすることはできない
あまりに多くの組織が、根本的な仕事の内容にはほとんど手をつけず、既存の職務にAIを組み込んでいる。その仕事がそもそも現在の形で存在すべきなのかを問うことなく、従業員に対して「より優れたツールで同じタスクをこなすこと」を求めているのだ。だからこそ、AIの取り組みは変革的というより、段階的な改善にとどまっているように感じられることが多い。テクノロジーは確かに仕事を加速させることができる。しかし、加速は変革ではない。変革が起きるのは、組織が仕事によって価値が生まれる仕組みを再考したときだけである。
その変化は人事の役割を広げる。単に人々を変化に備えさせるだけではない。ビジネス成果を生み出す仕事そのものを、リーダーが見直すのを支援することが求められる。従来の人事マネジャーの役割を考えてみよう。長年、その仕事にはパフォーマンスの記録、フィードバックの収集、要約の作成、従業員へのコーチングが含まれていた。現在では、AIが文書化を担い、フィードバック全体からパターンを抽出し、対話の要約を作成できる場面が増えている。だが、それによってマネジャーの重要性が下がるわけではない。価値を生み出す場所が変わるだけだ。コーチング、判断の適用、意思決定、複雑性への対応が、中心的な責任になる。
これこそが、仕事を再設計するということの実際の姿である。そしてそこから、人事の役割も変わり始める。
今日における人材・組織変革の意味
何十年もの間、人事は組織が人々を変化に備えさせるのを支援してきた。しかし、AIは私たちに、異なる出発点から始めることを求めている。新たなスキル、新たな役割、新たなテクノロジーを考える前に、仕事そのものがどのように価値を生み出すのかを理解する必要があるのだ。
• どの責任が競争優位を生み出すのか。
• どの活動が主に管理業務なのか。
• どの意思決定に人間の判断が必要で、どの意思決定はAIによって改善または不要にできるのか。
• 人はどこにより多くの時間を使うべきなのか。どこで最大の価値を生み出すのか。
こうした組織設計上の意思決定は、常に人事の職掌の一部だった。しかし、現在は構成要素が変わったため、その重要性は高まっている。組織はこれまで、役割、報告ライン、職能上の専門性を中心に構築されていた。今後はますます、人、AI、そしてそれらをつなぐシステムの間で仕事がどのように流れるかを軸に設計されるようになる。
それは、人材・組織変革の実践の姿を変える。マネジャーの役割から定型的な管理業務を取り除き、従業員へのコーチングにより多くの時間を使えるようにすることを意味するかもしれない。人事ビジネスパートナーの責任を再設計し、レポート作成に費やす時間を減らし、リーダーへの助言により多くの時間を割くことを意味するかもしれない。そして、採用担当者の成功を再定義し、その価値が候補者をより速く見つけることではなく、より良い採用判断を下すことにあると位置付けることを意味するかもしれない。
変革がパフォーマンス管理に与える影響
AIによる変革は、組織がパフォーマンスを把握すべきスピードも変える。人、AI、システムを軸に仕事が再設計されるのであれば、パフォーマンスを数カ月後に評価するわけにはいかない。リーダーは、再設計された仕事が実際に価値を生み出しているかどうかを、リアルタイムに把握する必要がある。優先事項は明確か。マネジャーは適切なタイミングでコーチングしているか。従業員はAIを効果的に使っているか。必要なスキルは仕事の流れの中で発揮されているか。ここで、リアルタイムのパフォーマンス管理が極めて重要になる。
だからこそ私は、人事はあらゆるAI施策を「仕事はどのように価値を生み出すべきか」という問いから始めるべきだと考えている。その答えの下流に、投資するテクノロジー、育成する能力、再設計する役割、準備を整えるマネジャー、そして最終的な成功の測定方法のすべてが位置付けられる。組織が仕事を再設計すれば、その仕事を中心に構築されたあらゆる人材システムも、採用からリーダーシップ、学習、そして最終的にはパフォーマンスに至るまで、並行して進化しなければならない。
筆者の会社が公表した2026年版「パフォーマンス・イネーブルメントの現状」レポートによると、人事リーダーの90%が、AIによってすでに「高いパフォーマンス」の定義が変わったと考えている。私はこれを、単なるパフォーマンス管理に関する統計とは見ていない。多くの組織がまだその周辺システムを再設計していないとしても、仕事が根本的に変わったことを組織が認識している証左だと見ている。
パフォーマンス管理は、仕事が主に個人によって生み出される世界を前提に構築されてきた。だが、価値はますます人とAIの相互作用を通じて生み出されるようになっている。高い成果を上げる人は、もはや何を生み出すかだけで定義されるのではない。判断の質、下す意思決定、そしてビジネス成果を達成するためにAIをどれだけ効果的に活用できるかによって定義される。
意図的な設計こそがAI変革の鍵である
AI主導の変革における本当の仕事は、何に人間の注意を向けるべきか、どこでAIがレバレッジを生み出すのか、そしてより良いビジネス成果を生み出すために仕事をどう設計すべきかを、組織が決めるときに起こる。これは人事が主導する機会のある対話だ。AIの導入は、そもそも何を変えるべきかを組織が決めるうえで、人事の支援を求めている。テクノロジーは変革の口火を切るかもしれない。しかし、AIから最大の価値を実現する組織は、それを中心に仕事を意図的に再設計する組織である。そして、その問いにリーダーが答えられるよう支援することは、AI時代における人事の最も重要な貢献になるかもしれない。



