経営・戦略

2026.08.22 17:19

あなたのITダッシュボードは「嘘」をついていないか?

Adobe Stock

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1984年に初めてコンピュータを買ったとき、私はただデータベースをいじり、アセンブリ言語でコードを書くことに夢中だった。1997年にソフトウェア会社を創業した頃も、デジタル従業員体験(DEX)などという言葉は口にしなかった。当時はコンピュータにログインするだけで5分もかかっていたからだ。

現在、DEXはいたるところに存在する。最近開催された展示会では、ブースの半数近くがDEXをアピールしているように見えた。しかし、これほど注目されているにもかかわらず、DEXをどのように測定すべきかについては、いまだに議論が続いている。

企業が組織全体でDEXの向上に取り組むなかで、私は2つのアプローチがあると考えている。

• アプローチ1:人事(HR)の観点。DEXは従業員のセンチメント(感情や意識)に焦点を当てる。具体的には、テクノロジーが生産性や従業員の満足度に定性的にどのような影響を与えるか、という点だ。これは重要な視点だが、センチメントは往々にして一時的なものだ。そのため、多くのBtoC企業が、信頼できる測定基準として顧客体験指標(CSATやNPSなど)を使用するのをやめつつある。

アプローチ2(私の意見では、こちらがより優れた方法だ):ITの観点。DEXはサービスレベル目標(SLO)によって定義されるべきである。これこそが、DEXの本来あるべき位置だと私は考える。これにより、IT部門はビジネス目標への影響を追跡できるようになる。従業員のセンチメントも関係はあるが、業務を可能にするテクノロジーを提供することこそがIT部門の仕事だからだ。

SLOが持つ力

サービスレベル目標(SLO)は本質的に成果と結びついている。つまり、組織に価値をもたらすものだ。

多くの契約を締結する必要がある企業の営業チームを例に考えてみよう。そのためには、顧客関係管理(CRM)システム、電子メール、ビデオ会議などのツールに安定してアクセスできる必要がある。そのアクセス性こそがSLOであり、その目的は、アクセス性が時間の経過とともにどのように変化するかを監視することだ。

では、そのSLOを支えるサービスレベル指標(SLI)が何であるかを考えてみよう。具体的には、IT部門が管理・改善できるものは何か。たとえば、高解像度のビデオ会議の稼働率99%という目標が、SLIになり得る。

SLIは、SLOの達成を左右する要因の遵守状況を測定する。この事例に当てはめると、以下のようになる。

• 成果(ビジネス目標):営業チームが契約を締結する

• SLO(ビジネス部門が必要とするもの):見込み客との会議のための、安定したビデオ会議環境

SLI(IT部門が管理できるもの):特定の帯域幅におけるビデオ会議の稼働率99%

これで、営業とITの関係が確立された。営業が顧客となり、ITが提供者となり、双方がビジネス成果を軸に足並みを揃える形になる。

従業員を「顧客」とみなす

自宅の照明がどれも点かないのに、電力会社から「送電は行われており、こちら側ではすべて正常です」と言われたらどうだろう。きっと不満に思うはずだ。

電気と同じように、ITは動いて当然のものであるべきだが、表面的な指標とエンドユーザーが実際に経験していることとの間のギャップは、重大な問題だ。多くの顧客から、従業員がネットワークにログインできなかったり、特定のアプリケーションを使用できなかったりする状況であっても、ITダッシュボードは「正常(グリーン)」を示していたという話を聞く。エンドユーザーが業務を行えないのであれば、IT部門のダッシュボードが何を示していようと、それは問題なのだ。電力会社の例と同様に、エンドユーザーは提供者側のダッシュボードなど気にしていない。彼らが気にしているのは、目の前にある現実なのだ。

これがDEXの問題であることを見抜くのに、従業員のセンチメント調査は必要ない。AIは、既存のプロセスに単に付け足すだけでなく、実際にワークフローに組み込まれたときに力を発揮する。しかし、本当に必要なのは、従業員が自分の業務を遂行する能力に焦点を当てたSLOである。

SLOとSLIの前では、ごまかしは通用しない

SLIは、インフラだけでなく、ワークフロー全体を通じた説明責任を課す。電力会社の例えを使うなら、道路から電気が来ているかどうかだけでなく、自宅の台所の照明が点いているかどうかを提供者側が確認できるようなものだ。

SLOとSLIを採用することで、信頼性、修復、そして従業員と彼らが業務で使用するツールとの間の摩擦の軽減に焦点が当てられる。ネットワークエンジニアだった頃の言葉を借りれば、これは「ラストワンマイル」にあたる。

SLOという枠組みのメリット

そのメリットは、ダッシュボードがすっきりと正常(グリーン)になることだけに留まらない。SLOと従業員を中心とした視点を検討すべき理由は、以下のとおりだ。

1. 明確性の確保。SLIは、経営陣(Cクラス)が求める成果を達成するための、明確で実現可能な指標を提供する。

2. DEX、IT、そしてビジネス成果の明確なつながりの把握。KPIは、ビジネスへの影響を考慮せず、稼働率などのIT指標に終始することが多い。また、DEXスコアは、従業員体験が企業にどのように直接貢献しているかを必ずしも明確に示さない(DEXスコアが素晴らしくても、組織の目標を達成できていなければ、それは成功と言えるだろうか?)。SLOとSLIは、チームの意識を極めて明確に集中させる。

3. IT問題の診断にかかる時間の短縮。最近のガートナーのニュースレターによると、標準的なL1(一次対応)チケットでは、透明性の欠如や複数回にわたる引き継ぎが原因で、IT部門が費やす時間の最大70%が問題の診断に費やされているという。SLIによってエンドポイントの可視性が高まるため、診断フェーズを大幅に短縮でき、いくつかのチケットを未然に排除できるようになる(特に一般的な課題を特定して解決するためにAIを導入した場合はなおさらだ)。

4. IT部門が得意分野に専念できる環境づくり。ITチームは、テクノロジーの課題を解決し、ダッシュボードをグリーン(正常)にしたいと考えている。肝心なのは、重要度の高い課題に彼らの注意を向けさせることであり、このアプローチこそがそれを実現する。

5. DEXスコア(および収益)の改善。DEXスコアを上げること自体を最終目標にすべきではないが、これらのSLOに焦点を当てれば、従業員が業務を円滑に行うために必要なものを提供することになるため、結果としてスコアも改善するはずだ。

SLOは各部門が、SLIはIT部門が管理する

最後に考慮すべき点は、その所有権(管理権限)だ。人事とITの間で主導権争いが繰り返されるDEXとは異なり、このアプローチでは役割分担が極めて明確である。

• 各部門が自らのSLOを所有・定義する。たとえば、ビデオ会議通話の安定性向上などである。

• IT部門は、それを支えるSLIを管理する。たとえば、アクティブセッションの95%が、上り・下りともに少なくとも5Mbpsの通信速度を維持することを保証するなどである。

完璧なDEX調査のスコアは取締役会で見栄えが良いかもしれないが、それが直接ビジネスの成果につながるわけではない。IT部門とビジネス部門の足並みをSLOとSLIに揃え、本当に重要な指標を測定すれば、明らかな効果を実感できるはずだ。

forbes.com 原文

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