変革に向けた取り組みが停滞したとき、ほとんどの経営陣は同じように対応する。研修を増やし、人員を補充する。そしてプレッシャーをかける。しかし6カ月後、その取り組みは依然として停滞したままであり、コストだけが膨らんでいる。
この対応は、誤った問題に対処している。リーダーは実行の遅れを目にすると、「能力の欠如(アビリティ・ギャップ)」と診断してしまう。筆者は業務の大半を、停滞した取り組みの救済に費やしているが、原因が能力不足であることはめったにない。常に浮き彫りになる制約は、「アライメント(整合性)」の欠如だ。
経営トップからは同じに見える2つの問題
「能力」と「アライメント」の問題は、ほぼ同じ症状を引き起こす。マイルストーンの未達、手戻り、そして忙しそうにしているが成果が上がらないチームなどだ。しかし、その解決策には共通点がほとんどない。
能力とは、実行する力である。それはスピード、品質、一貫性として現れる。能力が制約となっている場合、メンバーは何を達成しようとしているのかを正確に理解しているが、それをまだ十分にうまくこなせない状態にある。研修、ツール、コーチング、そして時間が能力の問題を解決する。新規採用も同様だ。
アライメントとは、方向性に対する共通の明確な理解とコミットメントのことだ。組織がどこに向かっているのか、そしてそこに到達するために何をあきらめる(トレードオフにする)のかについて、役職や部門を超えて一貫した認識を持つことを指す。アライメントが制約となっている場合、能力のある人材がそれぞれ異なる方向に向かって自信満々に実行を進めてしまう。すべての部門がそれぞれのマイルストーンを達成しているにもかかわらず、それらが全体の成果につながらないのだ。
どれほど能力が高くても、アライメントのギャップを補うことはできない。アライメントがとれていない組織にスキルを注入することは、空中分解を加速させるだけだ。
両方の問題が同時に存在する場合
最も困難なのは、両方の問題が同時に発生しているケースだ。筆者が支援したあるクライアントは、通常業務に上乗せする形で、片手間に大規模な変革を進めていた。チームにはその規模の変革を主導するキャパシティも経験も不足していた。これは紛れもない「能力」の問題だった。しかしその根底には、「アライメント」の問題が潜んでいた。スポンサー(支援者)である幹部たちが長年、口先だけで支援を表明し、実際には関与せず傍観し続けていたのだ。
両方の問題が存在する場合、どちらか一方だけを解決しても意味がない。アライメントがとれていない組織でキャパシティを増やせば乖離が加速し、アライメントがとれたスポンサーが過負荷のチームを見守っていても停滞は続く。診断では両方を特定しなければならず、その順序も極めて重要だ。まず、業務の方向性を定めるために十分なアライメントを確立し、次にそれを実行するためのキャパシティを構築する。そして、取り組みが進むなかで両方を視野に入れ続ける必要がある。
なぜリーダーは誤った診断を下すのか
この誤診は予測可能なものだ。能力の問題は最も目に見えやすいため、それに対処することがほぼ常に最初の手段となる。スキルのギャップはダッシュボードで確認できる。研修やコンサルタントは購入可能であり、調達部門にはそのためのプロセスが用意されている。しかし、アライメントのための予算項目は存在しない。
より本質的な理由は、直視しがたいものだ。能力の診断は現場のチームに向けられる。しかし、アライメントの診断は経営陣に向けられる。組織に方向性やトレードオフに関する共通の明確な理解が欠けているのであれば、それは経営陣がそもそもその明確さを作り出さなかったということだ。リーダーが自らその事実を認めることはめったにないため、診断は暗黙のうちに「能力不足」へとすり替わってしまう。
筆者はこれまでに、停滞している同じプログラムに対して、能力開発を3回連続で実施した組織を見てきた。回を重ねるごとに、より有能な人材が、互いに相容れない戦略の解釈に基づいて、より巧みに実行を進めるという結果に終わった。
真の制約を明らかにする3つの質問
研修やツールへの次の投資を承認する前に、以下の3つの質問を投げかけてみてほしい。
1. このチームのリソースとスキルを2倍にすれば、結果は変わるか。 そのシナリオでも状況が不透明なままであれば、能力は最初から制約ではなかったということだ。
2. 5人のリーダーが、成功を同じように説明できるか。 リーダーシップチームの各メンバーに、この取り組みが12カ月以内に何を達成すべきか、そしてそれを手に入れるために組織は何を犠牲にできるかを個別に尋ねてみる。もし個々の回答が異なる場合、現場のチームは多大な労力を費やして5つの異なる戦略を実行していることになる。
3. どの決定が何度も蒸し返されているか。 アライメントの失敗には明確な兆候がある。決定事項として発表されたにもかかわらず、その後うやむやになり、再び議論が持ち上がることだ。決定の蒸し返しは、最初の会議の場では一応の合意が得られたものの、一歩外に出ると迷いが生じていたことを示している。現場のチームは決定の蒸し返しを「待機してよい」という合意として正確に読み取る。
これらの質問のいずれかで不一致が明らかになった場合は、能力への投資を今すぐ止めるべきだ。抱えているのはアライメントの問題であり、アライメントの確立は経営陣の仕事である。それはトップから始まる。曖昧にされていたトレードオフを明確にし、誰もが見える形で解決することだ。しかし、それだけでは終わらない。経営陣の間で確保されたアライメントは、日常の意思決定が行われるその下のリーダー層へと引き継がれなければならない。そして、それを維持する必要がある。予算が変わり、優先事項が競合するなかで、状況の変化に応じてリーダーがアライメントを確認し続けなければ、それは静かに崩壊していく。
投資する前に診断する
重要な規律は「順序」だ。まずはアライメント、次に能力だ。能力を構築する前にアライメントを整えれば、投資したすべての資金が推進力へと変わる。アライメントがとれていない状態で能力を構築することは、組織の分裂に資金を投じているようなものだ。
経営陣が果たすべき役割がもう一つある。変革チームがアライメントの問題を提起するのを待ってはならない。なぜなら、彼らの多くはそれができないからだ。チームはアライメントのズレを言葉にするはるか前から感じ取っているが、「経営陣が問題だ」と直接告げる者はほとんどいない。主体的なスポンサーシップがそのギャップを埋める。早い段階から頻繁に、チームに具体的な質問を投げかけることだ。「どこで行き詰まっているのか、どの決定を待っているのか」「何がうまくいっていて、何がひそかに滞っているのか」。問いかけるスポンサーは停滞を未然に防ぐことができる。報告を待つだけのスポンサーは、結局また新たな研修に資金を投じることになるのだ。



