債券は満期まで持てば元本が戻る。だが途中で金利が上がると、より高い利息が付く新しい債券に買い手が移り、手持ちの債券は値下がりする。この値下がりは、元本が戻るまでの年数が長い債券ほど大きい。20年先や30年先まで待つ長期国債なら、金利がわずかに動いただけで価格は大きく振れる。個別の債券は1銘柄あたりの取引単位が大きく、個人が何十銘柄も持つのは難しい。そのため多くの投資家は、多数の債券をまとめて持つファンドを通じて債券に投資する。
米国では、長期国債こそ安全資産の代表という理解が根強い。連邦政府が発行し、返済が滞る心配はほとんどないとみなされてきたためだ。値動きの荒い株式に対する備えとして、債券を組み入れる考え方も定着している。
ただし、ここでの安全とは、貸した相手が返済不能に陥らないという意味にすぎない。価格が動かないという保証ではない。金利が上がる局面では、返済が確実な国債だけを集めたファンドでも成績はマイナスに沈む。
2026年に入って、この違いが成績を分けた。返済不能に陥る危険が高いはずのジャンク債が利益を残し、最も安全とされる長期国債が最も大きく沈んでいる。
長期国債ETFが22年ぶり安値、30年債利回りは5.33%超
純資産454億ドル(約7兆2000億円)のiシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)は米国時間8月18日、22年ぶりの安値をつけた。価格は年初から6%下がっている。30年物の米国債利回りが2007年以来の高水準となる5.33%超まで上昇したことが背景にある。運用しているのは世界最大の資産運用会社ブラックロックで、6月30日時点の運用資産残高は15兆3000億ドル(約2433兆円)にのぼる。
編注:iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)とiシェアーズ 米国国債 0-3ヵ月 ETF(SGOV)は、どちらも米国市場に上場するドル建てファンドである。東京証券取引所には「iシェアーズ 米国債20年超 ETF」(証券コード2255)、「iシェアーズ 米国債0-3ヶ月 ETF」(同2012)という名称の近い円建てETFが別に上場しており、連動する指数も運用実績も異なる。
原油高と財政赤字に加え、AI向け借り入れが債券を圧迫
債券が売られているのはなぜか。まず、原油価格が90ドル(約1万4000円)を超え、インフレが高止まりするとの懸念が再燃した。さらに連邦政府は7月に4323億ドル(約68兆7000億円)の財政赤字を計上し、月間としては2021年3月以来の大きさとなった。この穴を埋めるため、政府は国債を売り続けなければならない。加えてテクノロジー企業は、AIインフラの構築資金として2026年だけで5000億ドル(約79兆5000億円)を借り入れるペースにあり、投資家が選べる債券はそれだけ増える。こうした要因がそろえば、金利は上がり、債券価格は下がる。
ここまでの要因は、TLTをはじめ多くの債券ファンドが値下がりしている理由の説明にはなる。だが、TLTだけがほかの債券ファンドより大きく値を下げている理由までは説明できない。



