競合と比べて、この株価水準は妥当か
変化が本物かどうかを最後に判定するのは、株価の水準である。以下で比べる同業他社の予想株価水準は、いずれも2027年の調整後EPS(1株当たり利益)についての市場予想に基づいている。メルクの株価は152ドル、予想調整後利益は1株当たり9.56ドルで、予想利益のわずか16倍にとどまる。
同業と並べてみると、ファイザー(PFE)は9.6倍と低く、アッヴィ(ABBV)は16.4倍。一方、成長率の高い企業には大きなプレミアムがついている。ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)は予想利益の21.5倍、イーライ・リリー(LLY)は27倍である。この1年で73%超上昇した後でもなお16倍という水準は、メルク株が上位の競合に比べて依然として割安であることを示している。業績を維持できれば、さらに上値を追う余地があるということだ。
メルクはリプフェンドラを売り切れるか
薬の承認を取ることと、実際に広く処方されるようにすることは、まったく別の難題である。注射剤のPCSK9阻害薬は、これまで普及に時間がかかってきた。特にかかりつけ医の現場ではなかなか使われてこなかった。
アナリストが注視しているのは、発売直後にどれだけ早く患者が薬を使える体制が整うか、そして大規模なアウトカム試験(実際に心筋梗塞などの発症を減らせるかどうかを検証する試験)が販売の転機になるかどうかだ。メルクが強く賭けているのは、既存市場のシェアを奪うことではなく、市場そのものを広げることである。
販売戦略はもう裏づけられたのか
臨床開発のリスクはおおむね小さくなった。代わって前面に出てきたのは、世界規模で販売をやり遂げられるかという、より読みにくいリスクである。mRNAがんワクチンを支える基礎科学は、後期臨床試験の結果によって裏づけられた。パイプライン全体でも、規制当局の正式な承認をはじめとする前進が続いている。残るは、事業化の戦略を過不足なくやり遂げ、新しい株価水準を実績で裏づけられるかどうかである。
結論
投資家はメルクを、単なる特許切れが迫る企業として捉えるべきではない。パイプラインの中身が見通せる、リスクの落ちた事業のリーダーとして見るべきだ。私たちの見方では、2027年の調整後利益の16倍というメルクの評価は、同業他社と比べてなお本質的に割安である。事業の実行が進むにつれ、リスクとリターンの釣り合いは魅力的なものになるだろう。


