正座などのように、脚を圧迫する姿勢でしばらく座っていると、身体に不思議な変化が起こる。まずは脚の感覚がなくなり、まるで他の誰かの脚のように感じ始める。続いて、体重を分散させようとして脚の位置を調整すると、突如として、ピリピリする静電気のような感覚が走る。痛みとも触覚とも違う、両者の中間のような感覚だ。
この現象は、医学用語で「知覚異常(異常感覚、paresthesia)」と呼ばれる。通常の神経信号がかく乱された結果として生じる、しびれやピリピリとした感覚の総称だ。
しびれは、打撲や痙攣とは違って、ほかの日常的な感覚とはかなり異なるので、戸惑いや不安を覚えることがある。しかししびれは、機能不全というわけではない。それは、特殊なストレス状況下に置かれた神経系が、進化的に形成されてきた機能をきっちりと果たした結果なのだ。
神経が持続的な圧迫を受けると、手足にしびれが生じる
しびれが生じる理由としては、古典的な仮説である力学的な説明が、いまなお主流だ。この仮説では神経を、脊髄から発して皮膚や筋肉に至る、長いケーブルのように捉える。どんなケーブルもそうだが、神経も、圧迫によって伝達が阻害されることがある。
長時間にわたって脚を組んで座ったり、腕を枕にして眠ったりすると、神経は、周囲の骨や、硬直した筋肉に押し付けられる。この圧迫によって、単に感覚が遮断されるだけでなく、神経細胞が電気信号を送信する手段そのものに異常が生じるのだ。
生物学的なメカニズムを説明しよう。神経細胞は、短い電気パルスを先端へと伝えていくことで、情報を伝達している。このプロセスは、ナトリウムやカリウムといったイオン(電気を帯びた粒子)が、精密な順序で細胞膜を出入りすることで成り立っている。持続的な圧迫は、こうしたイオンの流れを乱すことになる。
こうした乱れにより、機械受容器(mechanoreceptor)と呼ばれる、触覚センサーや位置センサーの機能をもつ神経細胞からの信号が、混線を起こしたり、遮断されたりする結果、麻痺したような感覚が生じる。このメカニズムは、1947年に学術誌『Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry』に掲載された論文で検討されている。
姿勢を変えて、圧力から解放されても、神経系は穏やかに通常機能に戻るわけではない。適切な信号を断たれていた神経線維は、再起動と同時に、不規則に活動し始める。その結果、末梢神経系の神経細胞が、発火すべきでないタイミングで発火する(このことは、ある神経免疫学者による神経の興奮性に関する研究から明らかになっている)。そして、こうした不規則な発火を、脳がしびれとして解釈するのだ。



