経済・社会

2026.08.24 10:06

世界的な出生率の崩壊が、成長とVCの投資仮説を揺るがす

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女性100人中26人が子どもを持たず、出生率は1.3へ低下

この数字の背後にある算術は容赦がない。子どもは1人、2人と整数でしか生まれないため、分布がわずかに動くだけで平均は大きく振れる。論文が挙げる例では、100人の女性のうち15人が子どもを持たず、大半が2人を産み、6人に1人が3人か4人を産むという集団でも、その全体としての出生率は1.8にとどまる。仮に子どもを持たない女性を26人に増やし、1人だけ産む女性を数人上乗せし、4人産む家庭をゼロにすると、同じ集団の出生率は1.3まで下がる。人口学で超低出生率(lowest-low fertility。合計特殊出生率が1.3を下回る状態)とされる境界線である。女性の4分の3はそれまでとまったく同じ行動をとっているのに、そうなる。

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近代社会では3人目が高くつき、子どもを持たない方が負担は軽い

著者らは、よく持ち出される犯人像を退ける。中国の一人っ子政策では大半を説明できない。出産を制限したことのない台湾のほうが、中国本土よりも出生率の落ち込みが激しいからだ。スマートフォンは低下を加速させてはいるが、原因ではないと論文はみる。両氏が原因として名指しするのは、近代社会そのものだ。学歴や資格による選抜、硬直的な昇進の階段、縮んでいく親族ネットワーク。これらが組み合わさって、3人目の子どもを持つ費用は高くつき、子どもを持たない選択の費用は安くなる。

世界人口は2056年に頂点、国連推計より数十年早い

論文は国連自身の出生率モデルにも異議を唱える。国連のベイズ統計に基づく推計は出生率が自然に回復することを前提にしているが、その前提を裏づける根拠はない、というのが著者らの主張だ。実際、コロンビアとエジプトの最新の国民登録では、2023年の出生数がそれぞれ最大36.7%、17.7%も過大に見積もられていた。これを踏まえて著者らは、世界人口のピークを2056年ごろと見積もる。国連の公式推計である2084年前後より、数十年早い。

日本と米国の成長率は、生産年齢人口で調整すると逆転

成長率の計算にも同じ理屈が効いてくる。日本経済は1991年から2023年まで年0.79%しか伸びず、米国の2.60%に大きく水をあけられた。だが、この間に日本の生産年齢人口は減り続け、米国は増え続けている。そこで生産年齢人口1人あたりに直すと、その差はほとんど消えてしまう。日本1.33%に対し、米国1.73%である。さらに両国の労働力の伸び率を入れ替えて計算すると、順位はそっくり逆転し、日本が米国を年1ポイント丸ごと上回る。

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成長を縛るのは生産性ではなく人口、前提を問われる投資家

事の重大さは、特定の業界やVCの流行を超えて広がる。人が減れば研究者も減り、イノベーションが牽引する成長は鈍る。細っていく科学者と技術者の層をAIが埋め合わせないかぎり、そうなると著者らは書いている。そう考えると、多くのゼネラルパートナー(GP。ベンチャーファンドの運用責任者)がすでに張っている自動化への賭けは、意味合いが変わってくる。人件費の節約を狙った投資というよりは、韓国・中国・イタリア、そしてラテンアメリカの多くで縮んでいく労働者・消費者・発明者の層に対する保険という色合いが濃くなる。10年単位のリターン想定で投資判断を下す者にとって、成長を縛る本当の制約は、生産性ではなく人口かもしれない。

(forbes.com 原文)

翻訳=酒匂寛

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