これより前の攻撃のひとつでは、ウクライナは昨年、ロシア占領下のクリミアで「RT-70」電波望遠鏡をドローン攻撃によって破壊している。RT-70は、かつて火星や金星へのミッションとの通信に使用されていた巨大な望遠鏡だ。
ロシアは2014年のクリミア占領時にこの電波望遠鏡を接収し、その後、自国のGLONASS(グロナス)衛星測位システムの精度向上のため改修した。米シンクタンク、セキュアワールド財団(SWF)で宇宙安全保障・安定性部門のチーフディレクターを務めるビクトリア・サムソンは「軍事通信に利用するためです」と解説する。
サムソンは、軌道上の平和維持に向けた解決策の提案を専門とする同シンクタンクで、将来起こり得る宇宙紛争について研究する世界的に著名な専門家だ。彼女は筆者のインタビューで、この宇宙戦争では現在、「攻撃目標にされる施設の種類が広がっています」と語った。
彼女によれば、ロシアはその戦車や将兵がウクライナ国境を越えて地上侵攻を開始したのと同じ日に、宇宙戦争も始めた。悪名高いロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が、米国の「Viasat(ビアサット)」衛星通信網の地上局に攻撃を仕掛けたのだ。
ウクライナの大統領や軍首脳はこの通信網を使って、攻撃に見舞われた国家の防衛を指揮していた。もし米スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が、冷戦時代のベルリン空輸を彷彿させるような迅速な緊急作戦を敢行し、「Starlink(スターリンク)」衛星通信網の端末を数千台ウクライナに急送してそのインターネット接続を復活させていなければ、ウクライナの防衛は甚大な打撃を受けていただろう。
サムソンによると、プログレス・ロケット宇宙センターが製造しているソユーズは、規模は限定的ながら「ロシア版スターリンク」とも言われる「ラスベト」衛星通信網の衛星打ち上げにも使用されている。
ウクライナ防衛軍はスターリンクの端末を装備しており、通信・航法面でロシア侵略軍に対して大きな軍事的優位性を得ている。そこでロシアは、自国の衛星通信システムを軌道上に展開しようとしている。とはいえ、「コンステレーションを十全に稼働できる状態にはほど遠い」(サムソン)のが現状だ。
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領はソーシャルメディアでこの宇宙センターに対する攻撃をたたえ、「この戦争についてロシアに長距離制裁を科すというわれわれの計画が実行に移されています。ロシアの戦争遂行能力を削っていくことが重要です」と述べている。
Today, there are new significant results from our deep strikes. In Russia’s Samara region, one of the key enterprises within Roscosmos – the Progress Center, which was involved, among other things, in electronics production – was hit. Flamingo missiles were used. A good… pic.twitter.com/1BlZpmvKRN
— Volodymyr Zelenskyy / Володимир Зеленський (@ZelenskyyUa) August 15, 2026
ゼレンスキーは今回の攻撃にウクライナ国産の「FP-5フラミンゴ」巡航ミサイルが使用されたことも明らかにし、国境から900km離れた地点を正確に攻撃したと高く評価した。


