この文書は、スミス氏の見解が大きく変化したのをうかがわせる。2015年1月にStarboardはメイヤー氏に対して、可能な限りの節税策をとることを前提に富裕層のアリババ株主がYahoo の株を保持できるような戦略を促していた。その後、1月下旬にYahooはアリババ株の15%を新会社設立に向けることを発表したが、国税局から税逃れを指摘される可能性がありこの1年で状況は一層複雑化していた。
スミス氏は、過去4度Yahooの経営会議への出席を要求したが、いずれも断られたことも明らかにした。文書の中でスミス氏は「残念ながら、Aabacoホールディングスの設立は我々の投資を間違った方向へと向かわせている」と主張している。
今回のスミス氏の主張は、自身が2014年に提案した内容と近い。当時Starboard社のYahoo 株の保有率は1%に満たなかったが、スミス氏はAOLを買収するよう提案していた。最終的に、2015年5月にVerizon がAOLを5,280億円で買収した。
2015年になってYahoo株が大量に売られているのは、アリババをめぐる動向の不透明さやビジネスの成長性に対する不安定さだけでなく、アジアのe-commerce であるアリババ自体の不振によるところが大きい。
2015年になって、アリババ株は24%下落し、Yahoo株が34%も下落した要因の一つになっている。そのうえ、アリババは模造品販売が行われているとして批判の的になっている。ただ、ジャック・マーはこの問題について対策を講じると誓っており、先週中国のSingles Dayだけで1兆7160億円もの売上げをあげたことからも、アリババのビジネスにおける絶対的な地位に疑いの余地はない。 しかしながら、Yahooの株価がアジア事業に大きく依存していることに、スミス氏をはじめ物申す投資家たちはいら立ちを強めている。
スミス氏は文書のなかで、「Yahoo は自社事業以外の要因によって完全に株価がきまってしまうシリコンバレーで唯一の会社である」と批判したうえで、Yahoo が優秀な人材を集められないのは、Yahooの株価がYahooの社員の成果を反映するどころかアリババグループの業績によって翻弄されているからだとした。
Yahooの経営陣は、Aabacoをめぐる一連の動きに関して、国税局の指摘は逃れられるとみている。しかしスミス氏は文書のなかで、市場がYahooの経営方針に懐疑心をいだいており、「たとえこの件での節税に成功したとしても市場は評価しないどころか、最悪の場合、この試みが失敗に終わることへの不安から経営陣がYahooの価値を下げ続けているととり、コアビジネスまでネガティブな評価を被る可能性がある」とした。Yahooが保持するアリババ株とYahoo Japan株の市場価値は時価総額で4兆5,600億円にものぼる。Yahoo の市場価値は3兆7,200億円だ。